新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセ


第5部 仕組まれた戦争



第96話 シンジ、自爆

ネルフのアスカルームに駆け込んだアスカは、最初にパイロットの招集状況を確認した。 通信機に映ったジャッジマンに、アスカは早口で問いかけた。 「ジャッジマンさん、あとどれ位で全員が集まるの?」 だが、ジャッジマンの答えはアスカの予想外だった。 「そ、それが…。ロストしたパイロットがいるんだ。」 「な、何ですって!ジャッジマンさん、今は冗談を言ってる場合じゃないのよ。分かるわ よね?」 アスカの顔は真っ青になり、声はうわずっていった。そんなアスカを見て、ジャッジマン は本当にすまなさそうな声になった。 「ああ、分かっている。しかし、本当なんだ。エジプト支部のイリスをロストしている。」 「一体どこで?」 (ちくしょうっ!) 「自宅だ。」 「拉致されたの?それとも逃げ出したの?」 (やられたのっ?) 「それが、分からないんだ。誰もイリスが家を出たところを見ていないし、誰かが入って いったところも見ていない。もちろん、記録も残っていない。」 「ちっ、やられたのかしら。最悪の事態もあり得るわね。まあ、いいわ。警察に協力を依 頼して、何か手がかりがないかどうか至急探してもらって。」 本来ならネルフが調査すべきだが、多分そんな余裕は無いとアスカは判断した。 「ああ、分かった。」 ジャッジマンも、力なく答えた。サウジアラビアに続いての大失態である。これで自分へ の評価が大きく下がることは間違いないからだった。 「で、招集までの時間は?」 「あ、ああっ。あと20分でイリスを除く全員が集合予定だ。」 「全員が集まったら、作戦を説明して。エヴァも出撃させるわ。パイロットは、そうね、 ハウレーンとアリオスにしようかしら。」 「了解した。」 「それから、イリスのことはワイルドウルフに任せて、綺麗さっぱり忘れてちょうだい。」 言外に、ジャッジマンの責任は問わないと言っている。 「ああ、ありがとう。」 ジャッジマンの顔が少し明るくなった。 *** アスカは、通信が終わるとシンジに体を向けた。 「えっと、シンジに大事な話があるんだけど。」 「な、なあに。」 シンジは身構えた。責められると思ったからだ。 「アタシが何を言うのか、もう分かってるでしょ。まあ、一方的にアタシから言うのもな んだし、シンジに反論があれば聞こうと思ってね。」 『反論』という単語を聞いたシンジは、早とちりしてしまった。 「ご、ごめんね、アスカ。もう、あんなことはしないから。どうか許してよ。」 「はあっ?」 (一体、何言ってんの、こいつは?) アスカは、少し間の抜けた顔をした。だが、シンジは気付かずしゃべり続けた。 「隠すつもりはなかったんだ。でも、アスカの下着をティッシュと間違えて使っちゃって。 べっとり汚いモノが付いて、返すに返せなくなっちゃったんだ。」 もちろん、絶対に間違えるわけがない。だが、使用目的をアスカに知られることは絶対に 避けたいシンジが、無い知恵を振り絞ってついた嘘だった。 (へっ?な、何を言ったのよ、こいつは?) アスカは一瞬惚けていたが、シンジの言った意味が分かると−といっても真実とは少し違 うが−真っ赤になって怒った。 「なっ、アンタ、そんなことにアタシの下着を使ったってえのっ!」 アスカが真っ赤になって怒鳴ると、シンジの目に涙が浮かんだ。もちろん、嘘涙である。 シンジも、アスカに嫌われまいと必死である。 「ううっ、ごめんなさい。ごめんなさい。もうしませんから、許してよおっ。」 そこに、リツコが入ってきた。タイミング良く入って来たのは、おそらく立ち聞きしてい たからなのだろう。 「話は聞いたわ。でもね、アスカ。それくらい許してあげなさいよ。」 リツコはシンジをかばった。そのため、シンジの表情が少しだけ明るくなった。 「冗談じゃないわよ。アタシの下着を変なことに使うなんて。許せる訳ないじゃない。」 アスカは眉を吊り上げた。それを見て、リツコはアスカの耳に口を寄せて囁いた。 「あら、だったら私の下着ならいいわけ。それならシンジ君にあげるけど。」 「そんなの、絶対にダメッ!」 「あれも駄目、これも駄目じゃ、シンジ君が可哀相でしょ。蛇の生殺しはやめなさい。」 「て、ゆうか。そういう話じゃなかったんだけど。」 「だったら、この話しに早くケリをつけなさい。それに、こういうことが起きるのはシン ジ君だけが悪いわけじゃないのよ。前にも言ったでしょ。」 それは、アスカも分かっていた。だから、最大限の譲歩をすることにした。 「ううっ、しょうがない。シンジ!アンタ、他の女の下着を使ったら死刑!分かったわね。」 「じゃあ、アスカのを使ったらどうなるの?」 だが、止せばいいのにシンジはバカなことを聞いてしまい、リツコは頭を抱えた。 「そんなこと、言える訳ないでしょ。」 (このっ、大バカヤロー!) 「ええっ、そんなあ。」 で、しょうがなくリツコが助け船を出した。 「アスカの下着を変なことに使った分は、新しいのと交換しなさい。それならまあ、許し てもいいかもってことよ。でもね、アスカの口からはそんな恥ずかしいことは言えないの。 それくらいは察してあげなさい。」 「は、はい。分かりました、リツコさん。」 シンジの顔は、急に明るくなった。だが、また余計な事を言ってしまった。 「20枚も買うのか。参ったなあ、どうやって買おうかなあ。」 これには、リツコの頬も引きつった。もちろんアスカの頬も。シンジは、何度自爆すれば 気がすむのだろうか。 「で、話を元に戻すわよ。」 しばらくして落ち着いたアスカは、シンジとリツコに向かって話し始めた。 「う、うん。」 「シンジにはね、エヴァで中東に行って欲しいのよ。」 「ええっ、どんなあ。アスカは前に言ってたよね。『行っちゃ駄目なの。アンタは、ここ で本部を守らなくちゃ。』って。」 「あの時とは状況が変わったわ。それにね、戦えって言う訳じゃないの。シンジの役割は、 他のエヴァの運搬と回収の手助けなのよ。」 「どういうこと?」 「今、中東にはネルフのスタッフはいないから、S2機関を動かせないエヴァは独力では 戻って来れないのよ。それに、運んでいる最中に撃ち落とされる心配もあるの。だから、 シンジに出てもらうしかないのよ。」 「じゃあ、敵が現れたらどうするの?」 「ひたすら逃げるのよ。多分、あえてシンジに戦いを挑むような敵はいないとは思うけど ね。とにかく、シンジは戦いに参加しないこと。いいわね。」 「うん、それならいいかな。」 シンジはほっとした。 「そう、じゃあアタシの言う通りにするのよ。いいわね。」 アスカはそれからシンジに作戦内容を説明し、シンジをケージへと向かわせた。そして、 シンジと入れ替わりにマリア達ミラクル5のメンバーがやって来たため、アスカはイリス の捜索などを頼んだ。 *** アスカとリツコはアスカルームをマリア達に任せると、連れ立って発令所へと向かった。 そこでリョウジを見つけたアスカは、声をかけた。 「さあて、加持さん。何か情報は入ったの?」 「いや、まだだ。何の情報も入って来ない。」 リョウジは首を振った。 「そうなの。で、本部のメンバーはどれくらい集まっているの。」 「主要メンバーは全員招集した。なあ、アスカ。これで何もありませんってことは無いよ な。こんな夜中に招集して何も無いと、いくらなんでもな。」 「そん時は、訓練だって言えばいいのよ。まあ、加持さんのことだから、言い訳の十や二 十は考えているでしょ。」 「まあ、そうだけどな。」 お見通しだなと、リョウジは苦笑いした。と、その時、アスカは携帯電話が振動するのを 感じた。 「残念ながら、加持さん。中東のニュースが入ったらしいわ。」 アスカが言い終わるとほぼ同時に、発令所の正面スクリーンに1組の男女の映像が現れた。 「…我がトルコ政府は、先程イラクに宣戦布告しました。近隣諸国を侵略して残虐の限り を尽くし、テロによって多くの我が国民を死に至らしめたイラク帝国は、絶対に許せませ ん。国連軍やネルフが中東から撤退した今、悪魔の帝国を自由にさせるしかないのでしょ うか。いや、決してそんなことはありません。正義は、卑劣なテロには屈しません。さあ みなさん、悪魔の帝国に鉄槌を下すため立ち上がりましょう。既にギリシャとマケドニア が我々に賛同して、過去のいきさつを水に流して共にイラクを攻撃しようとしています。 民族が違えど、宗教が違えど、正義は一つになれるはずです。さあ、みなさん共に戦いま しょう…。」 その男女は、交代しながら同じような言葉を何度も何度も繰り返していた。 「こりゃあ、驚いたな。まさか、トルコがイラクに攻め入るとはな。」 リョウジは、本気で驚いていた。 「それにしても、ギリシャとマケドニアも一緒なんて考えられないわ。ギリシャはトルコ やマケドニアとは犬猿の仲だったはずよ。一体、何が起きたのかしら。」 リツコも、目を丸くしていた。 「そうね、きっと何かあるわね。」 アスカが呟いた時、マヤが走ってきた。 「葛城部長。トルコ政府から通信が入っています。」 「ん、なんだって?」 「サウジアラビアにおけるイラク軍の情報が欲しいそうです。どういたしましょうか。」 マヤは、リョウジが直ぐに承諾すると思ったようだったが、リョウジはアスカの意見を聞 いた。 「そうだな、アスカ。どうする?」 アスカは、苦々しげに答えた。 「ふん、詰めの甘い奴らね。マヤ、こう答えなさい。『今からイカリシンジがサウジアラ ビアに出撃するから、サウジアラビア半島のイラク軍はネルフに任せなさい。』とね。」 これにはマヤも驚いた。 「ええっ、アスカちゃん。そんなこと言っていいの?せっかくトルコ軍がサウジアラビア のイラク軍と戦ってくれるかもしれないのに。」 「いいのよ。それに、こう付け加えて。サウジアラビアのトルコ軍を2時間以内に撤退さ せること。それを守らなければ、国連軍とネルフはトルコの敵になるってね。」 「そ、そんなあ。そんなこと、言えません。」 マヤの顔は蒼白になった。さすがにリョウジも心配になったようだ。 「アスカ、そんなこと言って大丈夫か。」 「ええ、今言わないと駄目なのよ。もしトルコ軍がサウジアラビアを占領したら、大変な ことになるわ。それを止められるのは、今をおいてないのよ。」 「ああ、分かった。マヤちゃん、アスカの言う通りにしてくれ。」 「ええっ、でもっ…。」 そこにリツコが口を出した。 「マヤ、言うことを聞いて。」 「セ、センパイまでそんなことを言うんですか。分かりました。言う通りにします。」 マヤは、リツコの言うことには逆らわない。頷くなり、再び走って行った。 マヤが居なくなると、アスカはリョウジの方を向いた。 「加持さん。イギリス支部のレインボースターとフランス支部のヴァンテアンをエジプト 支部に急行させて。何だか嫌な予感がするのよ。」 「ああ、分かった。だが、理由を教えてくれ。」 「もちろん、女の勘よ。」 「あのなあ、ミサトじゃあるまいし。本当か?」 「ええ、本当よ。でも、ちょっとこれを見て。」 アスカは、近くの液晶パネルに中東付近の地図を映し出した。
「これが、オスマントルコの最盛期の支配地域よ。いいかしら。」 「ああ、これがどうしたんだ。」 「次に、カールおじさまの話を覚えているかしら。ゼウスがアレクサンドロス大王の側近 の予言を信じているっていう話しだったわよね。」 「ええ、そうね。」 「で、これを見て。アレクサンドロス大王の最盛期の支配地域よ。」 アスカは、別の液晶パネルに似たような中東付近の地図を映し出した。
「そうか、そういうことか。」 リョウジは、アスカの考えが分かったようだ。 「ふうん、なるほどね。」 リツコも頷いた。 「アタシの勘が当たっていれば、ゼウスは想像以上に手ごわい組織だわ。打てる手は打っ ておかないとね。実際、イリスをロストしちゃったし。どうやら、アタシ達は敵さんに大 きく遅れをとっているかもしれないのよ。」 「だが、五分五分だな。俺なら様子を見るけどな。」 「私もそうよ。アスカの考えは、推論でしかないわ。」 「でもね、アタシの考えが当たっていれば、これでも手遅れなのよ。50万人規模の軍隊 とエヴァがあと最低10機は無いと、敵の妨害は出来ないわ。まあ、打てる手は全て打つ つもりだけどね。」 「で、サウジアラビアはどうするんだ。」 「おそらく、近いうちにイラク本国が落ちるわ。そうなると、イラク軍は自然に崩壊する わ。だから、何ら問題は無いわ。」 「もし、アスカの勘が外れたらどうするんだ?」 「ハウレーンとアリオスに叩いてもらうわよ。サウジアラビアのイラク軍だけだったら、 それで何とかなるでしょ。」 「ああ、そうだな。」 「それじゃあ、リツコ。シンジ達とその支援部隊の出撃、よろしくね。」 「ええ、任せて。」 こうして、戦況は動き始めた。シンジ達も間もなく出撃した。だがアスカ達はまだ知らな い。既にゼウスのエヴァが出撃していることを。 (第96.5話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき  イラクにトルコが攻め入ります。普通に考えると良いことなのですが、トルコがイラク のみならずサウジアラビアも占領してしまったら、トルコが中東の石油を独占してしまい ます。でも、アメリカやヨーロッパ諸国が黙っていません。おそらくトルコに攻め入るで しょう。そうなると、世界大戦が始まってしまいます。アスカはそれを防ごうとしている のです。  一方のシンジは大バカです。自爆してしまいます。アスカは中東へ出撃するように頼む つもりだったのに、余計なことを言ってしまい、悪事がばれてしまいました。でも、運良 くリツコのとりなしで事なきを得たようです。 2004.9.8  written by red-x



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