新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセ


第5部



第91話 冬月の降格

サウジアラビアに派遣されたネルフの部隊は、悲惨な状態で帰ってきた。死者行方不明者 が35人、重軽傷者は120人を超えていた。また、テロ直後の混乱の中撤退を強行した ため、全員が疲労困憊しているような状況だった。 しかも、パイロットのエカテリーナとフェイが死亡し、他にも負傷者が出ている。また、 運良く負傷しなかった者も、程度の差こそれ精神的なショックを受けていた。 特に穏やかな性格のアニーとアールコート、フェイと仲良しだったクリスティン、エカテ リーナと仲の良かったサーシャ、エカテリーナに想いを寄せていたニールらの落ち込みは 特に激しかった。 彼らは、テロの後は放心状態になることが多くなった。これでは、仮にエヴァンゲリオン に被害が無かったとしても、満足に戦うことは難しかったかもしれない。 本部に到着した部隊の者は、負傷者は病院に運ばれ、健康な者は休息を命じられた。死者 行方不明者の家族に対しては、既に幹部が手分けをして自宅を訪問し、訃報を直接伝えて いた。もっとも、遺品の整理が終わり次第、速やかに届けることになっている。 本部の者はというと、最も忙しくなったのは技術部であろう。4体のボロボロになったエ ヴァを元通りにするため、24時間態勢で修理を行うことになったからだ。 次いで、作戦部が忙しくなった。いつイラクが攻勢に出るかもしれず、情報収集・国連や 各国との連絡調整で目も回るほどの忙しさになっていた。 広報部も、作戦部と連動しての敵の攪乱工作や世論操作などの工作などで大忙しとなって いた。 また、各部が忙しくなったため、瑣末な事務は総務部で行うことになり、総務部の者も大 幅な残業を余儀なくされていた。負傷者や死者行方不明者の遺族の対応なども総務部に役 割である。 アスカは、広報部の宣伝工作担当チーフであり、総務部の殉職者遺族の支援担当チーフで もあったため、目の回る忙しさであった。無論、今後の作戦立案の責任者でもあったため、 アスカの仕事量は想像を絶するものであった。 無論、アスカ一人では到底手に負えないため、サーシャ、マリア、ミリア、ミンメイらミ ラクル5のメンバーや、アールコートらサグのメンバー、それにファンクラブのアニー達、 それにケンスケを始めとするアスカの下僕達が総出で下請け孫請けをしていたのである。 その結果、アスカは今後の作戦立案に全力を注ぐことが出来るようになったのである。 *** 一方、ネルフの部隊が戻って間もなく、アスカとシンジは司令室へ赴いた。今後の方策を 協議するために、久々に4人だけの秘密会議を開くのだ。 「「失礼します。」」 アスカとシンジは声を揃えて部屋へと入った。そこには、ゲンドウと一緒に憔悴しきった 様子の冬月がいた。アスカを見るなり、冬月は頭を下げた。 「すまんな、アスカ君。若きパイロットを2人も死なせてしまった。こんなおいぼれが生 き残って、将来がある優秀な人材が死ぬなんて、なんて理不尽なんだろうな。」 唇をかみしめる冬月に対して、アスカは優しく言った。 「いえ、過ぎたことを言ってもしょうがありません。敵は周到な準備をして、今回のテロ を起こしたのです。ジャッジマンさんやレッドウルフがいても防げなかったのですから、 副司令が気に病む必要はありません。 ただ、テロでお亡くなりになった者のご遺族の方には十分な保障をお願いします。また、 それ以外にもできる限りのサポートをしてほしいのです。副司令は、ご遺族に対して責任 があります。今後、責任をまっとうしてください。」 だが、それを聞いたシンジは真っ赤になって怒った。 「ア、アスカ。そんな言い方は酷いよ。副司令だって一所懸命にやったんだ。もっと、他 に言いようはないの。」 これに対し、アスカが反論しようと口を開きかけたのだが、冬月がそれを押し止めた。 「シンジ君、君の気持ちは嬉しい。だがね、私は作戦を大失敗させた責任者だ。本来は、 辞任すべきなのだよ。だがね、アスカ君は今後もネルフにとどまって欲しいと言っている。 それはね、私にとってはありがたいことなんだよ。」 「あっ。」 シンジは、思わず声をあげた。自分の浅はかな考えに気付いたようだ。そんな姿を見て、 冬月はいっとき微笑んだが、直ぐにアスカの方を向いた。 「で、アスカ君。私の責任の取り方はどうすべきと思うかね。」 「そうですね、副司令から降格していただくのはどうでしょうか。後任は、ミサトに務め てもらいます。そして、産休と共に冬月副司令に再登板ということでどうでしょうか。」 「うむ、それでいいだろう。」 ゲンドウが承認し、冬月の副司令辞任が決まった。冬月の降格が決まると、次はジャッジ マンの話しになったが、アスカはジャッジマンを擁護した。 「急遽、ミサトとの代役として送り込まれたのですから、責任を取らせるのはどうかと思 います。それに、彼のような優秀な人材は、せいぜいこき使わないと。」 というアスカの意見が通り、ジャッジマンはお咎め無しと決まった。そして、本題の今後 の方策に話が移り、議論になった。殆どがアスカと冬月の発言であるが。 「現在、偽情報でイラク軍をロシア国境と中国国境に張りつかせることに成功しましたが、 こんな小細工は長くは続きません。いずれ、エヴァを再度送り込む必要があります。」 「うむ、そうだな。」 「ですが、このまま送ったら、再びテロに遭うでしょう。それは、なんとしても防がなく てはなりません。」 「そうだよね。」 「そのためには、真相を突き止めなければなりません。」 「アスカ君、それはどういうことかね。サダムフェダーインの自爆攻撃であることは明ら かではないか。」 「いえ、私は別の組織が実行したと見ています。それに、内通者がいると思われます。」 「それは、何か根拠があってのことかね。」 「いえ、私の勘に過ぎません。」 「気のせいではないのかね。イラク国営放送は、我々よりも早くパイロットの死亡者を知 っていたフシがある。イラクの仕業でなくて、どうして知ることが出来よう。」 「それは、私にも分かりません。ですが、もしイラクの仕業なら、ジャッジマンさんが食 い止められなかったはずが無いと思います。実際、本部を襲った敵は、正直言ってアマチ ュアでした。ですから、簡単に撃退できました。 それに、監視カメラの映像では、自爆テロを実行したのは8歳位のギリシャ系或いはスラ ブ系と見られる女の子でした。しかも、金髪で蒼い瞳の子です。絶対とは言い切れません が、イラク人では無いと思われます。 ですから、どうしてもイラクの仕業とは思えないのです。」 「ふうむ、そうか。だが、それが本当だとすると、うかつにエヴァは送れないな。またや られる恐れがあるぞ。」 「そうです。そこで、この第3の敵の正体を突き止める必要があります。ただ、不可解な 点があります。」 「本部を何で襲わないのか、そういうことだね。」 「そうです。まさにそこです。私にはその理由が分かりません。ですが、おそらくネルフ 自体には敵対するつもりはないのではないかと思います。」 「イラクには負けて欲しくはないが、ネルフとは正面切って戦いたくない、そういう相手 ということか。」 「はい。ですから、もし私の考えが正しいと、本部にいればパイロットは安全ということ になります。ですが…。」 「平和維持軍としては、役に立たないということか。ふむう、どうしたものか。」 「そこで、碇司令にお願いがあります。」 「なんだ。」 「とある死刑囚をここに連れてきて欲しいのです。今回のテロの再発を防ぐ鍵を握ってい る可能性がある者です。」 「誰だ?」 「それは…。」 このようにして、議論は長く続いた。 *** その後、ネルフ幹部による会議が開かれた。会議室には、碇司令、葛城副司令兼作戦部長、 冬月総務部長、赤木技術部長、マリス広報部長、真田保安部長、葛城諜報部長、日向作戦 部長代行、マヤの代理の大井、アスカらが集まっていた。 これに加えて、ジャッジマン、ウォルフ、ブルー、バレス、レッドウルフらの、傭兵部隊 の代表者、さらには、シンジ、トウジ、カヲル、ケンスケら、本部付けのパイロットも同 席していた。 「さて、今日の議題は2つだ。一つは、今回の作戦失敗の責任について。もう一つは今後 の方針についてだ。まずは、本人の弁明を聞こう。」 リョウジがジャッジマンに目で合図をすると、ジャッジマンは立ち上がった。 「パイロットを2名も死なせたのは、全て私の責任だ。パイロットの警備に穴があったと しか言いようがない。しかも、どこに穴があったのか、未だに分からない。弁解する言葉 もない。」  そこまで一気に言うと、ジャッジマンは座り込んだ。その後、意見を求められて最初に発 言したのはシンジだった。 「あの、ジャッジマンさんは、ゼーレの黒竜部隊が攻めてきた時、僕を守ってくれました。 とても頼もしい人です。ですから今回の件は、敵の方が上手だったということで、しょう がないと思います。なるべく寛大な処置をお願いします。」 この場のメンバーの多くは、シンジの言葉に頷いていたが、一人だけ反対者が出た。大井 サツキである。 「ちょっと!女の子を2人も死なせたのよ!しょうがないで済むわけっ!」 サツキは、エカテリーナと仲が良かったので、シンジのしょうがないという言葉に激怒し たようだった。 だが、アスカが事前に根回しをしていたため、サツキに同調する者はなく、結局ジャッジ マンはお咎めなしとなった。 次に、リョウジが平和維持軍を1カ月以内に再び送るよう提案したところ、大激論となっ た。テロ再発防止策が不十分というのがその理由だった。 だが、これもシンジの言葉によって流れが固まった。 「テロで死ぬのも、戦って死ぬのも、死ぬことに変わりありません。死ぬのが嫌な人は、 パイロットを辞めてもらえばいいと思います。」 こうして、1カ月以内に再度平和維持軍を送り込むことに決まったのである。 *** 会議のあった日の夜、シンジはアスカに泣き言を言った。 「ねえ、アスカ。サツキさんの目が怖かったよ。僕のこと、怒っているのかな。」 「まあ、そうじゃない。」 「そ、そんなあ。僕は、アスカの言う通りにしただけなのに。」 そう、シンジが自発的にあんなことを言うはずがない。だが、アスカの強い頼みに折れる 形で、シンジは言うことになったのある。シンジが言った方が摩擦が少ないというのが、 アスカの主張だった。 「ふうん、泣き言を言うと、ご褒美は取り消すわよ。それでもいいの?」 「や、やだっ!」 シンジはそう言うが早いか、アスカの胸を揉み始めた。そう、シンジはアスカの言う通り にする代わりに、エッチな条件を出したのだ。普通に考えるなら、最低の男である。 もっとも、シンジにしてみれば、駄目で元々と思っていたら、運良くアスカが首を縦に振 ったというところだった。 (しっかし、こいつったらエッチな条件を飲めば、何でもするのね。) だが、アスカはしっかり誤解をしていた。 (第91.5話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき   シンジ以外の、アスカを支えるメンバーです。 ミラクル5 −サーシャ、マリア、ミリア、ミンメイ サグ    −アリオス、アールコート、キャシー、マックス、メルフェイス、レイリィ ファンクラブ−ユキ、アニー、イライザ、 下僕    −ケンスケ、ザナド、テリー、ナスターシャ、ソフィー、ジャネット 2004.6.11  written by red-x



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