新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセ


第5部



第88話 アデン奪回 

「…という訳だ、アスカ。どうやら敵は再びネルフ本部を攻撃するらしい。」 アスカは、アスカルームでリョウジからネルフ本部攻撃計画の情報を聞いていた。敵は、 本部襲撃の『成功』に味をしめたらしく、再度攻撃を仕掛けてくるというのだ。 「ふん、しゃらくさい!また返り討ちにしてやるわ。」 アスカはうっすらと笑みを浮かべた。 「で、どうする?また、ラブリーエンジェルに頼むとするか。」 リョウジの問いかけに、アスカは少し間を置いて答えた。 「そうね、そうしましょう。でも、ちょっと気がかりなことがあるのよ。」 アスカは、僅かに眉間に皺を寄せた。 「なんだい、アスカ。言ってみろよ。」 リョウジも、急に真剣な顔つきになる。 「奴らは、本当にトルコにテロリストを送り込んだのかしら。狙いがいま一つ分からない のよ。」 すると、リョウジはそんなことも分からないのかと驚いた。 「おいおい、アスカ。決まってるじゃないか。他国を脅すネタにするためさ。実際、脅し のネタに使っているという情報も入っているぜ。」 「そう…。アタシの考えすぎかしら。あまりにも愚かな行為だから、謀略の匂いがするの よね。」 「ほう、一体誰が、何の目的で、そんなことをするのかな。」 「それが分かれば苦労しないわよ。アタシ達の想像を絶する出来事の前触れかもしれない かもと思って、ちょっぴり不安なのよ。」 アスカの直感は、何か危険な匂いを嗅ぎ取っていた。だが、理性は直感を否定していた。 こういう時は、どちらが正しいかは五分五分であるが、リョウジもアスカと同じような考 えだった。 「確かに、やりそうな連中は多いがな。一応、親イラクの連中にも、反イラクの連中にも、 十分動機がある。セカンドインパクト前だったら、アメリカがイラク侵攻の口実を作るた めの謀略で決まりだったが、今のアメリカにはそんなつもりも能力もなさそうだ。後は、 トルコの反体制派がイラクの名前を使ったっていうのが可能性としては一番高いかもな。」 「う〜ん、どっちもピンと来ないわよね。それより加持さん。パイロット達のガードをも っと厚くして。もちろん、サウジアラビアに派遣しているパイロットもよ。」 「それは、既にやってるさ。こないだ、アスカに言われたじゃないか。」 言わなかったっけとリョウジはいぶかしげな顔をしたが、アスカは首を振った。 「うん、ガードの数を倍にしたのは分かってるわ。でもね、それでも不安なのよ。だから、 さらに数を3倍にして、より徹底的にガードしてほしいのよ。特に、サウジアラビアのパ イロットは念入りにしてほしいの。敵はイラクだけだと決まっている訳じゃないのよ。世 界中のあらゆる国から狙われているという前提で、警備計画を練り直してほしいのよ。」 「心配性だな、アスカは。だが、まあいいさ。言われた通りにするよ。」 「ええ、お願いよ、加持さん。」 アスカはいつになく真剣な顔でリョウジに頼むのだった。 *** 一方、サウジアラビアでは、ようやくアスカの開発した超高性能電池が届いていた。その 取付作業を指揮しているマヤのところに、サーシャがとことことやって来た。 「マヤさん、これが例の電池なんですか。」 サーシャは、マヤの仕事の邪魔にならないようにと少し控えめに聞いた。マヤはサーシャ の遠慮に気付いたのか、気にしないでいいわよといいながら答えてくれた。 「ええ、そうよ。理論的にはケーブル無しでの稼働時間が6倍になるわ。」 「凄いですね。本当に助かります。」 「やっぱり、なんだかんだ言ってもアスカちゃんは天才だから。お礼はアスカちゃんに言 ってあげて。」 マヤは少しだけ寂しそうな顔をした。自分にはどうしても出来なかったことを、アスカが 割合簡単になし遂げたからかもしれない。だが、サーシャは気付かなかったようで、素直 に答えた。 「ええ、そうします。」 「でもね、最初はデータ取りのために使うから、あんまり無理はしないでね。」 「ええ、分かっています。大切に扱いますよ。」 なんて言っているが、もちろんそんな気は微塵もない。目一杯乱暴に使わないと、耐久性 が分からないからだ。パイロットからすると、どこまで酷使すれば大丈夫なのかを一番知 りたい。だから、心の中でマヤに謝っていたりするが、マヤはそんなことは露知らず、続 けて話す。 「それに、数はまだ少ないの。全部で10個なのよ。耐久性が分からないから、ちょっと 不安よね。」 耐久性と聞いて、サーシャは一瞬ビクリとするが、マヤには気付かれなかったようだ。こ のため、何事もなかったかのように会話が続く。 「それなら大丈夫でしょう。なんたって、アスカがやったことですから。もしかすると、 稼働時間が6倍というのは理論値ではなくて、平均値のような気もします。」 「それは、いくらなんでも期待しすぎよ。いくらなんでもねえ。」 そう言いつつも、マヤはもしかしたらという思いを抱いていた。マヤから見ても、アスカ は恐るべき才能を持った天才であることは分かる。アスカは、与えられた仕事は何でも予 想を遥かに上回るスピードでこなしているし、マヤの知らないところで色々なことをして いるらしい。 先輩も、重要なことで行き詰まったら自分ではなくて必ずアスカと相談しているし、青葉 君や日向さんもアスカに色々と相談を持ちかけているようだし。悔しいけれど、周りの人 間が技術的な難関にぶつかった時に相談するのは、自分ではなくてアスカなのだ。 しかも、みんな決まったように、アスカと相談した後はすっきりとした晴れやかな顔をし ている。そう、アスカは誰から相談を受けてもちゃんと答えを返しているのだ。答えをも らえないのは、訳の分からない質問や相談ばかりするシンジくらいなものだろう。 これは、アスカが多くの分野において人並み外れた知識を有していること、短時間の相談 で問題点を解決する答えを用意出来るだけの分析能力を有していることを示している。こ れは本当に、本当に物凄いことなのだが、マヤ以外の人間は誰も気付いていないらしい。 これだけの才能を14歳にして発揮しているアスカが、エヴァの訓練をした時間を研究に 費やしていたら、エヴァの技術はもっと進んでいたに違いないのだ。マヤの目から見ても アスカの才能は先輩に劣らない。下手をすると、ユイやキョウコ、ナオコを足したものを すら凌ぐかもしれないのだ。 そんなことを考えていると、ついつい思ったことが口に出てしまった。 「…でも、天才アスカちゃんのことだから、もしかするかもね。」 「うん、うん、きっとそうですよ。」 マヤの呟きに、サーシャは笑顔で何度も頷いた。 *** 翌日のお昼時、いつものように食堂でネルフ関係者だけが集まって食事をした後、ミサト がイラクの最新情報を説明した。ミサトが説明役で、リツコはその補助である。アスカと シンジ以外のメンバーは、マリア、ミンメイ、ミリア、キャシー、アリオス、マックスで あった。 「…という訳で、状況はますますヤバクなってきたわ。敵の兵力は既に100万近いし、 さらに増強する気配が見えるわ。」 そう、最初の奇襲成功以降、敵はエヴァから離れたところから進撃しているため、ケーブ ルを付けたエヴァでは効果的な攻撃が出来ないため、刻々と状況は悪化していたのだ。 既に紅海の出入り口付近はイラク軍に占領されてしまったため、アジア方面からの国連軍 がメッカやリヤドに到着するのは困難になっているし、エジプトのシナイ半島近辺までイ ラク軍が侵攻しているため、ヨーロッパ方面からの国連軍の動きを止められるのも、そう 遠い日ではないだろう。このため、ミサトの説明は歯切れの悪いものであった。 「それじゃあ、そろそろ第二陣を出さなくてはならないんですね。」 ミサトの言おうとしたことを先取りしたミンメイは、真剣な顔をして聞いた。 「ええ、そうよ。このままじゃあジリ貧だもの。ミンメイ、キャシー、アリオスの3人は、 近々行ってもらうわ。マリア、ミリア、マックスの3人は、こっちの守りをお願いね。」 ミサトの言葉に、その場の全員が頷いた。そしてそれから数日後、第二陣はひっそりと日 本を出発することになる。第二陣のメンバーは、当初の予定通りだった。 中国支部からは、リン・ミンメイとフェイ インド支部からは、ラシッドとカリシュマ アメリカ支部からは、アリオスとアールコート アメリカ第3支部からは、キャシー、テリーとニール 以上の9人である。 *** 第二陣が出発した後、それに合わせて紅海に面した都市、アデンの奪回作戦が実行された。 これに成功すれば、アジア方面からの国連軍の援軍が紅海沿岸からリヤドへと安全に行く ことができるが、失敗すれば多大な犠牲を払ったうえに、最悪部隊が全滅する恐れがある という、とても重要な作戦だった。 「いいか、サーシャ。ダンマームの時と同じだ。お前が援護して、私が突っ込むという役 割分担だ。いいな。」 ハウレーンの命令に、サーシャは元気よく答えた。 「はい、隊長。分かりました。」 「よし、行くぞっ!」 ハウレーンの合図で、低空飛行をしていた輸送機から、2体のエヴァンゲリオンが大地に 降り立った。着地するやいなや、ダンマームのジャッジマンから指令が入る。 「細かいことは言わん。派手にやれっ!」 「「了解しましたっ!」」 ハウレーンは、スマッシュ・ホークを手にして敵陣へ猛然と突き進んだ。今回は、ダンマ ームを攻めた時と違ってケーブルのことを気にする必要はない。ATフィールドを張りな がら敵の戦車や装甲車などを蹴散らしていく。 このためハウレーンに攻撃が集中するが、敵の兵器が集中しているところを狙ってサーシ ャがパレットガンを撃ち込んでいく。そうして、30分を少し経過した頃になって電池が 切れて内部電源に切り替わった。 「いったん後退する。サーシャは、電池を確保しろ。」 「了解しましたっ!」 元気よく返事をすると、サーシャは一目散に後退して電池の投下場所へと向かった。 「よし、これに交換すればいいのね。」 サーシャは使用済み電池を外して、新しい電池を背中に付けた。そこにハウレーンがやっ てくる。 「サーシャ、敵陣に突っ込むんだ。」 「へへへっ、待ってましたっ!」 サーシャは、ハウレーンからスマッシュ・ホークを受け取ると、敵陣へと果敢に突っ込ん で行った。その間に、ハウレーンは電池を素早く取り替えた。そして今度はサーシャの援 護射撃を行った。こうして、繰り返しエヴァで攻撃し続けたのである。 そうして2時間後、敵の組織的な攻撃は殆ど無くなり、敵兵士も殆どが投降した。そこを 狙い済ましたように国連軍の輸送船が続々とアデンの港に入って行った。アジア各国から かき集められた兵士達5万人が輸送船から次々に降り立っていく。 「ふうっ、うまくいったわね。でも、すっごく疲れたわね。」 サーシャは、そんな兵士達の列を見ながら呟いた。戦い疲れて今にもベッドで横になりた い気分だが、そんなところを敵に襲われたら味方が全滅しかねない。よって、あと数時間 はエヴァに乗って敵襲に備えなければならないのだ。 「あ〜あ、誰か代わってくれないかな。」 疲れからか、グチを言いたい心境である。だがそこにタイミング良くザナドからの通信が 入った。 「だったら俺が代わるよ、サーシャ。君は日本でゆっくりと休みなよ。」 だが、そんなことをすれば、せっかく掴んだ正パイロットの座が永遠に失われる可能性が 高い。 「じょ、冗談よ。や〜ねえ、ザナドったら。」 「ちぇっ、残念だなあ。でも、気が変わったらよろしくっ!」 そう言いつつ、ザナドはニコニコしながら通信を切った。 「ふんっ!冗談じゃないわよっ!せっかく掴んだ正パイロットの座なんだから、絶対に誰 にも渡さないわよっ!」 サーシャは、いつの間にか疲れなどすっかり忘れていた。 (第88.5話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき  ようやく国連平和維持軍の部隊がサウジアラビアに上陸しました。でも、首都のリヤド や冬月らのいるダンマームに到着するには、まだまだ時間がかかりそうです。 2004.3.15  written by red-x



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