新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセ


第4部 ネルフ再生



第78話 シンジの誕生会 前編

「ねえ、シンジ。アンタの誕生日のことなんだけどさあ、どうしようか。」 5月最後の土曜日、朝食タイムに、アスカはシンジに問いかけた。今日は珍しく全員揃っ ているため、シンジの誕生会のことを決める丁度いい機会だと思ったからだ。 そう、この場には、アスカ、シンジ、ミサト、リョウジ、リツコ、マコト、ユキ、ケンス ケ、カヲル、マリアの10人が揃っていた。朝食に全員が揃うのは珍しいのだ。 「どうしようって、例えば?」 アスカの意図が分からず、シンジは首を傾げた。 「誰を呼ぶとか、どこでやるかとか、そういうことよ。」 ちょっといらついたように、アスカは答えた。 「え〜っ、急にそんなことを言われても困るよ。」 シンジは困ったような顔をした。 「碇君は、あんまり大勢ではやりたくないんじゃないですか?」 見かねて、ユキが助け船を出す。 「そうなの、シンジ?」 「う〜ん、そうだね。あんまり大勢じゃない方がいいな。」 「そうねえ。ヒカリの誕生日の時は、確か20人位だったっけ。シンジはそれ位だったら いいの?それとも、もっと少ない方がいいのかしら。」 「う〜ん、それ位ならいいかなあ。」 「え〜と、ヒカリの誕生日には、誰を呼んだっけ。ヒカリとシンジ以外に、ノゾミちゃん、 コダマさん、ユキとその弟さんに妹さん、鈴原と妹さん、相田に渚、リツコとミサト、そ れにマリア、ミリア、キャシー、マックス、アリオス、アールコートの計20人よね。で、 後で加持さんと日向さんが加わったのよね。」 「そうだね。」 「で、今回は、この場のメンバーは確定だから、ちょっと呼ぶ人を変える必要があるわね。 今は10人いるし、ヒカリと鈴原も呼ぶから12人。あと8人をどうするかね。」 「どうする、シンジ君。シンジ君が、同年代の友達だけの方が良ければ、俺達大人は適当 に飲んで遅く帰るぞ。」 リョウジの言葉に、シンジは首を振った。 「いえ、そんなことはありません。でも…。」 「でも、本音はアスカと二人っきりがいいんだろ?」 そう言いながら、ニヤリと笑うリョウジ。 「えっ!いえ、あの、そのお…。」 シンジは、真っ赤になってしまった。どうやら図星だったらしい。 「何よ、アンタ。そんなことを考えていたわけえ。そんなの却下よ、却下。」 アスカは少し頬を染めて、プリプリしながら言う。 「あはははっ、やっぱりそうだよね。」 シンジも、笑ってごまかした。だが、ちょっと残念そうである。 「そんなのはね、大人になってからでいいのよ。今のうちはね、大勢でぱあっと賑やかに やらなくちゃ。」 だが、大人になってとしても、二人っきりで出来るとは限らないのだが。 「でも、アスカ。シンちゃんは、愛するアスカと二人だけで過ごしたいみたいよ。」 「うっさいわねえ、ミサトは。余計なこと、言わない。」 アスカは、思いっきり頬を膨らます。 「へいへい。分かりましたよっと。」 ミサトも、これ以上言うとまずいと思ったのか、早々に降参した。 「で、シンジ。どうすんのよ。アンタが言わないなら、アタシが決めるわよ。ミリアとマ ックス、アールコートとアリオス、サーシャとザナド、アニーとテリー、そんなとこかし ら。」 「そうだね、そんなとこかな。」 シンジも、妥当な線だと頷いた。 「でも、アスカ。ハウレーンやミンメイは呼ばないの?それに前回呼んだキャシーは?」 そこにマリアが口を出す。ミラクル5のメンバーが2人欠けているのが気になるらしい。 キャシーはそのおまけだろう。 「アタシの誕生会だったら呼ぶんだけど、今回はシンジのでしょ。一応、シンジが主役な んだから、女の子の方が多いっていうのも変でしょ。」 「う〜ん、言われてみるとその通りね。でも、ハウレーンやミンメイは同じパイロット仲 間だし、碇君と一緒に戦った仲間でしょ。だから、どうかなあって思っただけ。」 「う〜ん、それもそうね。シンジはどう思う?」 「そう言われると、確かにマリアさんの言う通りだね。アニーさんとテリー君の代わりに ハウレーンさんとミンメイさんを呼ぼうかなあ。」 シンジの呟きに、今度はユキが反応した。 「でも、テリー君はLASの会のアメリカ支部長ですし、アジア・アフリカ支部長のザナ ド君だけを呼ぶのはどうかと思いますけど。」 「そうだねえ。どうしようか。」 シンジは、う〜んと唸る。 「おい、シンジ君。そう悩むことないぞ。ゼーレとの戦いの時にいた子と、その『LAS の会』っていうのの関係者を呼べばいいだろう。男が少なければ、一緒に来る男を誘って もらえばいいだろう。」 たまりかねてリョウジが声をかけた、ように見えるが、実際はアスカから前もって言い含 められたことを言ったのである。もっとも、気付いた者はいなかったが。だが、シンジは 納得したようだった。 「それもそうですね。」 シンジがウンウンと頷くと、アスカが締める。 「それじゃあ、確認するわね。メンバーはシンジ、アタシ、ミサト、加持さん、リツコ、 日向さん、ヒカリ、鈴原、ユキ、相田、マリア、渚、ミリア、マックス、アールコート、 アリオス、ハウレーン、ミンメイ、サーシャ、ザナド、テリー、アニー、イライザ、ニー ル、そんなとこかしら。ハウレーンとミンメイは、誰か男の子の研修生と一緒に来るよう に言うわね。それでいい?」 「うん、それでいいよ。」 シンジが頷き、一番重要なメンバーが決まり、話は次に移った。そして、誕生会はシンジ の誕生日の直前の土曜日に開くことが決まった。それからはヒカリを呼んで、料理の内容、 準備の手順などを決めていった。 *** 「ねえ、シンジ。プレゼントは何がいいの?」 その日の夜、寝る前にアスカは尋ねた。明日、シンジのプレゼントを買うつもりだったか らなのだが、シンジの返答はアスカの予想外だった。 「言っても怒らない?」 シンジは、もじもじしながら言った。 「へっ?どういうことよ。」 アスカは、シンジの意図が分からず、首を傾げる。 「僕は、みんなの前でアスカにキスして欲しいんだけど、やっぱり駄目だよね…。」 シンジはそう言いながら、はははっと笑った。 「シンジ、それって本気なの?」 アスカの眉間に、少し皺が寄る。 「一緒にお風呂に入るとか、寝る時に何も着ないとか、そういうのも駄目だよね。」 アスカの目が少しつり上がる。 「シンジ。そんなに、アタシの愛情のこもったパンチが欲しいわけえ?」 アスカはこれみよがしに、拳を作る。 「あははっ、遠慮しとくよ。」 シンジは、慌てて引いた。 「アンタねえ、アタシは真面目に聞いているんだけど。」 「ごめん。でも、誕生日だから、もしかしたらアスカがウンって言ってくれるかなあなん て、ちょっとだけ期待していたんだけど…。」 シンジは少し暗い顔になり、がっくりと肩を落とした。 (まったく、もうっ!そんなに落ち込むなっていうのよっ!本当に、しょうがない奴ねえ。 仕方ない、ちょっとだけ気をもたせるか。) 「それについては、ちょっと考えさせて。それはそれ、これはこれよ。」 「えっ!考えてくれるのっ!」 シンジの顔は、パッと明るくなった。そして、はち切れんばかりの笑顔に。 (こっ、こいつは、一体何なのよっ!) あまりにも早いシンジの変わり身に、アスカは頭にくるというより、呆れてしまった。 「いいから、質問に答えなさいよっ!」 「う、うん。そうだねえ。アスカとおそろいの服なんかがいいなあ。服じゃなくても、 何でもいいんだけど。」 「だったら、寝間着なんかどう?」 「え〜っ、嫌だよ。寝る時しか使えないじゃないか。」 「でもさ、毎日着るのよ。」 「でもさ、誰にも見てもらえないじゃないか。」 「何よ〜っ。みんなに見せびらかしたいわけえ?」 「う、うん。そうかなあ。」 「もうっ、シンジったら、本当にお子ちゃまね。でも、まあいいわ。シンジの服のセンス は良くないから、アタシが良いのを選んであげるわね。」 「ほ、ほんと?頼むよ、アスカ。」 「じゃあ、そろそろ寝ましょうか。」 「あっ、もうちょっといいかな?」 「何よ。」 「実はね、他にも呼びたい人がいるんだけど、どうかなあって。」 「ぬあんですって!!!」 (こいつっ!マナを呼ぶなんてっ!!ふざけんじゃないわよっ!!!) アスカは、大激怒した。 「で、でも、何か可哀相でさあ。」 「いいのよっ!アンタがどうしても呼ぶっていうなら、アタシは出ないわよっ!それでい いのねっ!」 アスカは、ついにシンジの首を絞めた。 「く、苦しいよっ、アスカ。でも、マヤさんだって、十分反省しているみたいだし…。」 「へっ?マヤなの?」 「そ、そうだよ。マヤさんだよ。アスカは誰だと思ったの?」 「も、もちろん、マヤよ。」 そう言うアスカだが、冷や汗が垂れる。 「でもさあ、もう許してあげなよ。可哀相だよ。」 「ま、まあ、シンジがそこまで言うなら呼んでもいいわよ。でもね、許すかどうかは別問 題よ。」 「それでもいいよ。じゃあ、マヤさんを呼んでもいいんだね。」 「まあね。シンジの誕生会だし、勝手にすれば。」 アスカはそう言ってベッドに横になった。 「ありがとう、アスカ。」 シンジは、そんなアスカの背中に向かってお礼を言った。 ***  翌日、アスカはシンジを連れ回した。目的は、シンジにプレゼントする服を買うことで ある。本来、もらう時まで知らない方がいいのだが、アスカはシンジが気に入らないもの を贈ってもしょうがないと考えたのだ。 「さあ、シンジ。行きましょうよ。」 「うん、待ってよ、アスカ。」 「早くしなさいよね。まったく、もうっ。」 「分かったよ。」 ネルフの仕事をしていたシンジだったが、アスカに急かされて断念した。 「今日は、そうねえ。手を繋ごうか。」 「えっ、いいの?嬉しいなあ。」 シンジはニコニコである。 「まあね。良く考えたら、アタシ達、恋人同士だもんね。だから、これ位はね。」 「そっ、そうだよね。」 「それに、最近デートもあんまりしてないし。シンジも可哀相かなあって思ったのよ。」 「そ、そうだよね。」 「あのねえ、こういう時は、そんなことないよって言うのよ。まったく、シンジは気が利 かないわねえ。」 「ごめん…。」 「ま、いいわ。アンタの言うことをいちいち気にしていてもしょうがないものね。それよ りもシンジ。気に入らないものは気に入らないって正直に言うのよ。アンタが気に入らな いものを買ってもしょうがないんだからね。」 「うん、分かったよ。正直に言うよ。」 だが、分かっていないのは、アスカも同じだった。元々、服を選り好みしないシンジであ る。だから、アスカからもらった服ならば、何でも気に入るに決まっているのだ。 「じゃあ、早速あの店に入るわよっ!今日は、20以上のお店を回るつもりだから、その つもりでいてよねっ!」 「ええっ、ちょっと多いんじゃない。」 「何よ〜っ。一杯お店を回れば回るほど、アタシと一緒の時間が増えるのよ。それでも嫌 って言うの?」 「そっ、そんなこと、ないよっ!」 慌てて否定したシンジだったが、アスカの思うつぼである。 「ふふふっ、今日は長〜い一日になりそうね、シ・ン・ジ。」 「そ、そうだね。」 そう言いつつも、シンジは複雑な顔をしていた。 (第78.5話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき  久々のアスカとのデートですが、結局お店巡りになってしまい、素直に喜べないシンジ です。でも、アスカと二人っきりの時間が持てるのは嬉しいようで、複雑な心境のシンジ でした。 2003.7.21  written by red-x



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