新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセ


第4部 ネルフ再生



第66話 マナ・アタック

「ねえ、マナ。碇君のことは、もうあきらめなよ。」 「何よお、ケイタ。私が誰を好きになったって良いでしょ。それに、シンジはまだ私に脈 があるよ。アスカだって、シンジが世界を救った英雄だから、自分の男にしたいだけなん だから。それじゃあ、シンジが可哀相そう。」 そう言いながら、マナはオレンジジュースを飲み干した。ここは、マナの家のリビングで、 今はケイタとマナの二人きりである。先程からマナとケイタは、シンジとアスカのことで、 口論を交わしていた。 「何でそう思うのさ。」 「だって、私がシンジと最初に会った頃は、シンジとアスカの仲は悪かったよ。アスカは、 シンジのことを下僕扱いしていたし、シンジには冷たかった。そうじゃなきゃ、シンジが デートの誘いに簡単に来るわけないよ。」 「確かにそうかもしれないけど、それは昔の話でしょ?それに、惣流さんだって、その頃 はたまたま機嫌が悪い時期だったかもしれないよ。」 「そんなことないよ。絶対にアスカはシンジのことを好きじゃなかったし、シンジのこと を男として認めてもいなかったもん。それくらい、付き合いの短い私でも分かったもん。」 「でもさ、僕やムサシやマナも、最初に出会った頃は、結構ギスギスしていたよね。それ がさ、今みたいに仲良くなるのに、時間がかかったよ。碇君と惣流さんも、同じじゃない かな。」 「あれっ?でも、シンジはエヴァのパイロットでしょ?でも、アスカは広報部のチーフに 過ぎない訳でしょ。何で、シンジと対等なんだろう?」 「マナが監視していたのは、サードチルドレンの碇君だったっけ。それで、ファーストチ ルドレンの綾波さんとセカンドチルドレンを監視する人間がいたはずだよね。でも、セカ ンドチルドレンって、一体誰?」 「う〜ん、それがさあ、思い出せないの。確か、同じクラスにいたはずだし、資料とかも 見たはずなのに、思い出せないの。サードインパクトの影響かなあ。」 「惣流さんじゃあないんだよね。」 「う〜ん、自信は無いけど、多分違うと思う。」 「じゃあ、何で一緒に暮らしていたのさ。パイロット同士だったら分かるけど、そうじゃ なかったら、一緒に暮らす理由は一つしか考えられないよ。」 「むうっ、何よっ。」 「二人が親の決めた許嫁だったとか。」 「スパーン!」 哀れ、ケイタは、マナに思いっきり頬を引っぱたかれてしまった。だが、二人が愛し合っ ているからなどと言えば、もっと凄いことになっていただろう。 *** 「くうっ、ケイタったら。」 マナは、一人頬を膨らませていた。マナは、ケイタに協力してもらって、シンジと会う時 間を作りたかった。だが、そのケイタに反対されては、マナに打つ手は無い。 シンジとアスカは、一緒に暮らしているのも同然だから、朝から学校に来るまでは、付け 入る隙がない。学校の中でも同じクラスのうえ、シンジとアスカは一緒にいることが多く、 クラスが離れているマナには、アスカの目を盗んでシンジに声をかけられない。 部活にしても、テニス部に入部を申し込んだのだが、きっぱりと断られてしまった。女子 の部長は、最初ははっきりと断らず、考えますと言っていたのだが、副部長の森川さんが キツイ目をしながら断ってきたのだ。 もちろん、ネルフの中には入れないから、シンジがネルフに行く日は全く打つ手が無い。 いつ帰るか分からないうえに、おそらく帰る時はアスカも一緒だろうからだ。 休日はもっと悲惨で、仲良しグループで楽しく出かけるのを指をくわえて見ているしかな い。 そうなると、下校時を狙うか、トイレに行く時を狙うしかないのだが、これまたアスカか アスカの下僕と言われている相田が一緒のことが多く、なかなかシンジに声を掛けられな いのだ。 「しょうがない、アイツ達の手を借りるしかないか。」 マナは、先日出会った二人組のことを思い出した。 *** 「君が、霧島マナさんだね。」 その声にマナが振り向くと、二人の少年が立っていた。 「驚かせてごめん。僕達は、怪しい者じゃないよ。ネルフの研修生なんだ。僕の名前は、 テリー。こいつは、ニールっていうんだ。」 テリーは、ちょっと髪の長い、野性的な感じのするハンサムな少年だった。ニールは、さ っぱりとした髪をしてテリーと好対照だったが、上品な感じのする、これまたハンサムな 少年だった。 「それで、私に何の用ですか。」 「悪いけど、君が碇君に話しかけているところを、偶然見かけてしまってね。もし霧島さ んが良ければ、力になりたいと思ったんだよ。」 「ふうん、お生憎さま。私は、知らない人の手は借りないわ。」 「ごめん、いきなりで警戒させちゃったようだね。正直に言うとね、僕達はアスカちゃん のファンなんだ。だから、君が碇君と上手くいくことは、僕達にとっても喜ばしいことな んだよ。」 「あっそ!良かったわね。」 「はははっ。手厳しいね。でもね、僕達は男だし、ネルフの中にも入れるから、味方に付 けると色々と便利だと思うよ。そうだねえ、例えば、アスカちゃんはネルフの中では、リ ツコ先生と一緒にいることが多くて、碇君とは別行動のことが多いんだよ。そんなこと、 知っていたかい?」 「えっ!それって、本当なの?」 マナは驚きの声をあげた。マナは、学校での様子から見て、当然ネルフの中でも二人が一 緒だと思っていたのだ。 「だって、考えてもみてごらん。アスカちゃんは広報部のチーフなのに対して、碇君はパ イロットのチーフだよ。全然役割が違うし、やることも違うんだよ。一緒にいる訳がない じゃないか。」 「そりゃあ、そうかもしれないけど。」 「でも、君はそのことに気付かなかった。それに、情報を収集しようとする努力を怠った。 違うかい?」 「そんなことない。私だって、色々と調べたけど、ネルフ内でのことは秘密だって言って、 誰も教えてくれなかったもん。」 「そうかい。それじゃあ、僕達が提供する情報は、結構貴重なんだね。それとも、碇君の ことは、そこまでするほど好きじゃないとか。」 「そ、そんなことないもん。私だって、惣流さん以上に、シンジのことが好きだもん。」 「じゃあ、情報提供だけでもいいから、協力させてもらえないかな。もちろん、それ以上 のことでも構わない。例えば、ネルフに中で碇君に手紙を渡すとか、アスカちゃんを碇君 から一時的に離すようにしる手伝いをするとか、色々手伝えることはあると思うよ。」 「ううん。」 マナが迷っていると、テリーは紙切れを1枚マナに手渡した。 「これが、僕の携帯の番号と、メルアドだよ。気が変わったら連絡して欲しい。まあ、気 長に待っているよ。」 テリーはそう言うと、二人でマナにじゃあねと言って、去って行った。 ***  翌日、4月14日の木曜日の出来事だった。 「あれっ、シンジは一体、どこへ行ったのよ?」 今日は、2回目のテニス部の日だった。練習が終わって、アスカ達は校門へと向かったの だが、トウジ、ケンスケ、カヲルの3人がいて、なぜかシンジだけがいなかったのだ。 「あれっ、おかしいな。シンジだったら真っ先に着替えて、出て行ったぞ。てっきり、惣 流と会うのかと思っていたんだけどな。」 「うるさい、相田っ!一言多いっ!」 アスカが睨むと、ケンスケは小さくなってしまった。 「でも、アスカと会うためじゃないとしたら、一体何の用かしら。」 ヒカリが首を捻る。 (う〜ん、待てよ。これと同じようなことが、前にあったわよね。あっ、まずいっ!) 「ねえ、みんな。手分けして、シンジを探そうよ。多分、学校からは出ていないと思うか ら。」 「なんや、惣流。血相変えおって。」 「アンタ達、覚えているでしょ。以前、シンジは不良高校生に、袋叩きに合っているのよ。 何か、いやあな予感がするのよ。」 「そっ、そうやなっ。じゃあ、手分けして探そうやないか。」 学校生活の長いトウジの指図によって、各自が携帯片手に校内を探すことになった。そし て、シンジを見つけたら、直ぐに位置を全員に知らせることにしたのだ。 「みんなっ!悪いけど、急いで探してねっ!」 アスカの声を合図に、7人が校内に散らばった。 *** 「はあっ、はあっ。一体、シンジの奴、どこに行ったのよ。」 10分ほど探しても、シンジの影も形も見えない。携帯で連絡しても、電源が切っている らしく、全く応答も無い。 (まさかと思うけど、また変な奴らに襲われているんじゃないでしょうね。) アスカの脳裏に、2カ月前の忌まわしい事件が甦る。命に別状がなかったから良かったも のの、シンジは大怪我をしたし、下手をすると命に関わる可能性もあったのだ。 (嫌だ、もうあんな嫌な思いをするのは嫌だ。シンジ、無事でいて。) アスカの目には、光るものがあった。本人は絶対に否定するだろうが、それはまさしく涙 だった。 (お願い、シンジ。無事でいて。) そこに、ちょうど同じクラスの女子が通りかかった。 「あっ、惣流さんまで、一体どうしたんですか。そんなに急いで。」 (惣流さんまで?) 無視してやり過ごそうとしたアスカだったが、ちょっと引っかかることがあった。 「何よ、惣流さんまでって?」 「ええ、さっきも碇君が急いで走って行ったので、どうしたのかなあって思って。」 「えっ、シンジ?シンジはどこへ行ったの?」 「えっ、ええ。あっちの方で見たんですけど。」 「ありがとねっ!」 アスカは、その女子生徒が指す方向へと、走って行った。 *** (うん、何なのよ?) アスカは、走っている最中に、研修生二人とすれ違ったのだが、何か挙動がおかしかった のだ。 (ちっ、何か怪しいわね。でも、今はシンジのを見つけるのが先ね。) アスカが向かう先には、物置小屋があった。体育用具置場として使われているものだ。 (うん?何か声がするような。) アスカは、入り口を確かめたが、鍵がかかっていた。 (どうしよう、ここじゃあないのかな。でも、念のため。) 「ねえ、シンジ!そこにいるの?いたら返事してよっ!」 だが、返事はなかった。アスカは、諦めて立ち去ろうとしたが、その時に僅かな物音がし たのを聞き逃さなかった。 (まさかっ!無事でいてっ、シンジ!) アスカは、スポーツバッグからカイザーナックルを取り出すと、右手に装着した。そして、 渾身の力を込めて入口の鉄扉を殴りつけた。 「ドッカーンッ!」 大きな音がして鉄扉の鍵が壊れ、鉄扉自身も大きく歪んだ。 「シンジ!いるのっ!」 アスカが中を覗き込むと、マットの上で1組の男女が全裸で抱き合い、キスをしていた。 「なっ!」 アスカは、先程までのシンジを心配する気持ちが、急速に冷え込んでいた。そう、マット の上で全裸で抱き合ってキスをしていたのは、シンジとマナだったのだ。 (ゆ、許せないっ!) アスカは、強く拳を握りしめていた。 (第66.5話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき  またもや、簡単に引っかかってしまうシンジでした。以前、痛い目に遭ったのに、まっ たく懲りていません。さて、これからどのような修羅場が待っているのでしょうか。それ とも…。 2003.1.14  written by red-x



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