新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセ


第66.5話 マナ・アタック2

さて、時間は少しさかのぼる。 「あっ、テリー君からのメールだ。」 練習が終わって、着替えようとしていた時に、テリーからのメールがシンジの携帯に入っ たのだ。 その内容は、こうだった。『襲われようとしているのは、霧島マナさん。場所は、体育用 具置場。碇君の名前で呼び出されたらしい。呼び出されたのは、5分前。急いで。』 (なっ、なんだって!マナが、僕の名前で呼び出されたって!) シンジは、血相を変えて速攻で着替え、ケンスケやトウジに一言も声をかけずにすっ飛ん で行った。 (マナ、どうか無事でいて。) シンジは、祈るような気持ちで懸命に走った。 (あっ、あそこかな。) シンジは、数分で目的の体育用具置場にたどり着いた。そして、鉄扉を勢い良く開けると、 顔に黒いマスクを被っている男二人が、マナの服を引き裂いているところだった。 「シンジ!助けてえ!」 マナの叫びに、シンジの血が逆流した。 「お前らっ!マナから離れろっ!」 シンジは中に飛び込んで、片方の男に殴り掛かった。 「うわあっ!」 その男は、シンジに殴られて床に転がった。 「なんで、マナを襲うんだよっ!僕が憎ければ、僕を襲えばいいじゃないかっ!」 シンジは、残る一人の男を睨みつけた。 「ごめんなさい、許してください。」 その男は、言うやいなや、急に土下座をした。 「なっ!」 あまりのあっけなさに、さすがにシンジも驚いたが、特訓の成果かなあ、などとちょっぴ り良い気分になった。その隙を衝いて、二人の男は逃げ出してしまった。 「あっ、待てっ!」 だが、追いかけるシンジの目の前で、鉄扉が閉じてしまった。 「ちくしょうっ!」 犯人達を取り逃がしたシンジは、真っ赤になって怒った。だが、その時後ろから声がした。 「嬉しいよ、シンジ。助けに来てくれたんだ。」 「マナ!そ、そ、その、無事だったかい?」 「うん、シンジのおかげで、危機一髪、助かっちゃった。ありがとう。でも、服が破れち ゃったの。シンジ、悪いけど、何か着るものないかなあ。」 「えっ、着るもの?ごめん、何も持ってないんだ。」 「もうっ、シンジったら。こういう時はねえ、男は自分の着ているものを脱いで、女の子 に着せてあげるんだよ。」 「あっ、そ、そうだよね。ちょっと待ってて。」 シンジは、何の疑いも無しにYシャツを脱いで、後ろ向きにマナの方へと渡した。 「こっ、これでいいかな。」 「うん、ありがとう。でも、下の方がスースーするけど。」 「あっ、じゃあ、どうしよう。」 「シンジのズボンを履きたいけど、駄目だよね。」 「ううん、いいよ。僕は、何か適当なものを見つけて羽織るから。」 優しいシンジは、ズボンを脱ごうとした。だが、その時、後ろから手が伸びてきて、全部 足元まで下ろされてしまった。 「なっ、何するんだよ、マナ!」 だが、マナは答えず、シンジのシャツまでも、手際良く脱がしてしまった。 「マ、マナ!止めてよっ!」 「シンジ、来てくれて嬉しい。」 マナは、後ろからシンジに抱きついた。 「マ、マナ、どうしてっ!」 「ごめん、シンジ。しばらくこうさせて。」 「だ、駄目だよっ!」 シンジはマナを振りほどこうとして体をねじったが、バランスを崩してしまい、マナに覆 いかぶさるようにして、倒れてしまった。 「あんっ!シンジったら、だいた〜ん!」 「そっ、そんなんじゃないよっ!」 慌てたシンジは、あろうことかマナの胸に手を置いてしまう。 「シンジ、嬉しいっ!」 シンジがその気になったと大いなる誤解をしたマナは、シンジを抱きしめた。 「ま、まずいよ、マナ!」 「ううん、良いの。シンジが望むなら、全てをあげる。ちょっと怖いけど、シンジだった ら良いよ。」 「そ、そんなあっ!やめてよっ!」 シンジは慌ててマナの胸から手をどけたが、二人の間を隔てていた手がなくなったためと、 床に着いた手が滑ったためとで、かえって体を密着させる結果となった。それが、さらに マナの誤解を大きくする。 「シンジ、大好き!」 マナは、シンジを思いっきり抱きしめた。 (ま、まずいよっ!こんなこと、アスカに知られたらっ!) シンジは、床に手を着いて顔を上げたが、ちょうどその時マナと目が合ってしまった。 (うんっ!) シンジは、後頭部をマナに押さえられ、マナとキスをする体勢になる。 (うううっ、は、離してよっ!) シンジがマナの手をつかんだその時、物凄い音がした。 「ドッカーンッ!」 大きな音がして鉄扉の鍵が壊れ、鉄扉自身も大きく歪んだ。 「シンジ!いるのっ!」 その時、シンジは見た。不安そうな顔をした美少女の顔が、みるみるうちに般若のような 恐ろしい顔に変化していくところを。 (第67話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき  マナは、シンジと二人で話す時間を作りたかったためシンジを呼び出し、シンジが逃げ ないようにとズボンとシャツを脱がしたのですが、シンジの抵抗と偶然によって、あれよ あれよという間に、シンジと抱き合ってキスをすることになりました。ところが、ちょう どその時にアスカが現れたのです。  果たして、シンジの運命はいかに? 2003.1.19 written by red-x



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