新世紀エヴァンゲリオン 外伝 超少女アスカ

第86話

「うわあ、面白かったわねえ。またやりたいわ。」 アタシは、すっかり花火が気に入っちゃったわ。でもね、シンジがまだやろうって言うの よ。あれ、これで終わりじゃないの?花火が置いてあったところには、紐みたいなものし か残されていないんだけど。 「あのね、アスカ。線香花火っていうのがあるんだよ。僕は結構好きなんだけど、アスカ もやろうよ。」 「ええ、まあいいわよ。」 シンジが勧めるもんだから、結局やることにしたんだけれど、やってみたらかなり地味な 花火だったのよ。ちょっと拍子抜けしちゃったわ。でも、地味なシンジが好きだって言う のは理解できたわ。けどねえ、なんかくら〜い感じね。 「なんかさ、こうやって線香花火を見ていると、人生の儚さを感じるんだよね。」 な〜んて言いながらシンジは神妙な顔をしてんのよ。やめてよね、そういう暗いのはアタ シには似合わないんだから。アタシはちょっぴり嫌な気分になって、気を紛らわそうとし て、他の4人が何をしてるのか見てみたの。 そうしたらね、ヒカリもユキも、静かに線香花火をやっていたのよ。もちろんヒカリは鈴 原と、ユキは相田とよ。しかもね、結構いい雰囲気なのよ。う〜ん、そうなると、シンジ がおかしい訳じゃないのね。日本人って、こういう暗いのが好きっていうことなのかしら。 それじゃあしょうがないわね。もう少し、シンジに付き合ってあげることにしようかしら。 アタシは考え直して、線香花火に付き合ったんだけど、やっぱり面白くないのよね。一体、 これのどこがいいのかしら。やっぱり、アタシには打ち上げ花火みたいな、派手な奴の方 がいいのよね。 あ〜あ、つまんない、つまんない、つまんないよ〜っ。シンジのバカ。早く気付きなさい よね。女の子がつまらなそうな顔をしているってのに、何で気付かないのよね、この鈍感 男は。 アタシは、シンジに文句を言おうと思ったけど、昼の出来事を思い出して言うのをやめた わ。しばらくは、あまりシンジを刺激しないほうが良さそうだもの。でも、つまらないも のはつまらないから、アタシも少しアタマを働かせて、このつまらない花火からの脱出を 試みたの。 「ねえ、シンジ。あっちの岩場に行こうよ。二人っきりになりたくない?」 「う、うん、いいよ。」 案の定、シンジは二つ返事だったわ。 「じゃあ、行きましょ。」 こうして、アタシとシンジは少し離れた場所にある岩場へと歩いて行ったの。 *** 「あっ、アスカ。どこに行ってたのよ。」 30分ほどで戻ったアタシ達に、ヒカリは心配そうに聞いてきたわ。 「あ、うん。ちょっとね。波の音が聞きたくなっちゃって。」 な〜んてね。波の音よりも、シンジの心臓の音を聞いている時間の方が長かったような気 もするけど、まあ、これくらいの嘘はいいわよね。 えっ、一体何をしていたのかって。別にエッチなことじゃないわよ。シンジの心臓の鼓動 を聞きたいって言って、しばらくシンジの胸に顔をうずめていたの。ただそれだけよ。で もね、シンジは結構喜んでいたみたい。 えっ、何か話をしていたのかって?まあ、それは内緒よ。ちょっとした会話を交わしたの は事実だけどね。 「ねえ、アスカ。これからどうする?ホテルに戻ろうか?それとも出歩く?」 ヒカリの問いかけに、アタシは少し迷ったけど、こう答えたの。 「う〜ん、そうねえ。ホテルに戻りましょ。」 最初は夜の街を歩こうと思ったんだけど、あんまり面白そうな施設は無さそうだったから、 ネルフの力で、ホテルにゲームコーナーを作っておいたのよ。 *** 「ガシャーン!」 「ようしっ!また、アタシの勝ちねっ!」 ゲームコーナーでは、エアホッケーで白熱したわ。もちろん、アタシの圧勝だったのよ。 勝ち抜き戦だったから、ずうっとアタシがやっていたっていうわけよ。 「強いわね、アスカは。」 「さすがは、惣流さんです。テニスだけじゃなくって、エアホッケーも上手なんですね。」 えへん、それほどでもないけどね。 「ほんまに惣流は強いんやな。ワシ、参ったわ。」 「俺も、少しはゲームに自信があったんだけどな。」 みんなは誉めてくれたけど、アタシばっかり勝っていたらつまらないわよね。 「じゃあさ、他のゲームしない?」 アタシの指の先には、レーシングゲームがあったわ。と言っても、車じゃなくってバイク なの。 「でも、私はバイクなんて乗れません。」 「私もよ。」 ユキとヒカリがしり込みしたんだけど、アタシはニヤリと笑って言ったわ。 「大丈夫よ。これはね、ペアで乗るのよ。だから、ペアの呼吸をいかに合わせるのかが重 要なのよ。ねえ、やってみましょうよ。」 もちろん、男共は大賛成よね。ヒカリも賛成だから、ユキも観念してOKしたの。アタシ はシンジの後ろね。もし、シンジが後ろだったら、アタシがぶっちぎりで勝つのは分かっ ていたから、しょうがないわよね。 「じゃあ、始めるわよ。用意はいい?」 アタシの言葉に、みんなが頷いたわ。 「じゃあ、スタートボタンを押すわよ。10秒後にゲームがスタートするわっ。」 アタシは、スタートボタンを押すと、シンジの後ろに飛び乗ったの。それから5秒後に ゲームがスタートしたわ。 「おりゃあっ!」 「いくぞっ!」 「えいっ!」 鈴原、相田、シンジ、それぞれが違う掛け声をかけて、アクセルを踏み込んだわ。こう して、激しいバトルが始まったの。 最初は、8の字コースを5周するという簡単なものだったわ。でもね、どのペアも結構 大変だっのよ。 ヒカリ達は、ヒカリが結構ブレーキになっていたみたい。鈴原にくっつくのが恥ずかし かったようで、少し体を離していたのよ。だから、鈴原もやりにくかったみたい。カー ブを何度も曲がり損ねていたわ。 ユキ達も、状況は同じだったわ。って言うか、もっと状況は悪かったわ。ユキは相田か ら、これでもかっていうくらい体を離していたもの。だから、アタシはたまりかねて言 っちゃったの。 「ユキ!それじゃあ、あんまりじゃない。こうやるのよ、こうっ!」 アタシはそう言いながら、シンジに体を密着させたわ。 「ええっ、恥ずかしいです。」 「なによおっ、アタシが恥ずかしいことをしているって言いたいわけえ?」 アタシは、ちょっとムッとしたの。そうしたらね、ユキは少しビクリとして、慌てて相 田にくっついたの。 「なんだ、やればできるじゃないの。」 でもね、アタシ見ちゃったんだ。その時に浮かんだ、相田の極上の微笑みを。相田っ、 アタシに感謝しなさいよね。 *** 「ケンスケ、参ったわ。」 「すごいじゃないか、ケンスケ。」 結果は、10戦して相田が6勝、鈴原が3勝、シンジが1勝だったの。てっきり運動神 経のいい鈴原が勝つと思っていたんだけど、意外だったわ。もっとも、相田が勝ったの も、半分以上はアタシのおかげよね、きっと。 「ふうっ、疲れたわ。アスカ、部屋に戻りましょうか。」 ヒカリは少し疲れたような顔をしていたわ。でもねヒカリ、まだ早いわよ。 「最後にあそこのゲームをやらない?」 そこには、世界に1台しかないゲームが置いてあったのよ。 つづく(第87話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき  花火と言えば、最後は線香花火ですね。でも、アスカはお気に召さなかったみたいです。 それと、エアホッケー。運動神経抜群のアスカに、敵はいなかったようです。最後のバイ クレースについては、1勝したのは、アスカが前に乗ったからでしょう、きっと。 2003.9.23  written by red-x



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