新世紀エヴァンゲリオン 外伝 超少女アスカ
第85話
「うわあ、綺麗ねえ。これが花火っていうやつなの?」
夜の海に出たアタシ達は花火をすることにしたんだけど、アタシは花火なんて見るのは初
めてなのよ。だから、シンジに花火ってもんをやってもらったの。そしたらね、真っ暗な
中で鮮やかに火花が散っていって、とっても、と〜っても、綺麗だったのよ。
「ああ、そうだよ、アスカ。花火にも色々あってね…。」
シンジは珍しくアタシに教えることが出来て、ちょっぴり気分がいいみたいね。声が少し
弾んでいるわ。
「ふうん。じゃあさ、シンジ。試しに何かやってみてよ。」
「そうだね、アスカは派手なのと大人しいのとどっちがいい?」
「そりゃあもちろん、ド派手なのがいいに決まってるでしょ。」
ふん、あったりまえじゃない。シンジったら、まだアタシの好みが分からないなんて、ま
だまだ修行が足りないわね。
「あははっ、やっぱりそうだろうね。でもね、市販の花火にはそんな派手なものは無いん
だよ。」
なあんだ、がっかりね。
「それじゃあしょうがないわねえ。でも、出来るだけ派手なのがいいな。」
「じゃあさ、これから火を点けるから離れていてよ。」
シンジの言う通りに、アタシはその場から少し離れたわ。
「いいかい、火を点けるよ。」
シンジはチャッカマンていうライターみたいなものを使って、花火に火を点けたようね。
そして、直ぐにアタシの方に駆けて来たの。そしたらね、花火から次々と綺麗な火花が出
て来たのよ。
「ふうん、これもなかなかいいわねえ。」
「でしょ。じゃあ、次は別のにするね。」
なんて具合に、シンジは次々と花火を点けていったのよ。もちろん、アタシはもっぱら見
る役よね。そして、そうねえ、20分くらいそうやって花火を見ていたら、シンジが寄っ
てきたの。
「アスカ、大きい花火はもうおしまいなんだ。別のをやろうよ。」
「どういうやつ?」
「手に持つ花火がまだたくさん残っているんだ。ほら、今洞木さんがやってるよ。」
「ん、どれどれ。」
ヒカリの方を見たら、鈴原と並んで花火を手に持っていたわ。で、花火の先の方から火花
が出ていたのよ。う〜ん、ちょっと怖いかな。アタシは、少し悩んだの。そしたらね、シ
ンジがこう言ってくれたのよ。
「アスカは花火に慣れていないでしょ。僕が一緒にやってあげようか。」
こいつ、良いとこあるじゃない。ここは、素直に言う通りにしておこうかな。
「そうね、お願い。」
アタシが頼むと、シンジは花火を1本出してアタシに右手持たせたの。そして、シンジの
左手をアタシの右手に添えて火を点けたの。そしたら、少しして火花が散り出したの。
「きゃっ。」
アタシは少し驚いたわ。思ったよりも火の勢いが強かったんだもの。
「大丈夫だよ、アスカ。僕が付いているから。」
そしたらね、シンジがすぐに声をかけてくれたの。へへっ、ちょっとだけ嬉しかったな。
でもね、少ししたら消えちゃったのよ。
「じゃあさ、もう1回同じようにしてね。」
「うん、いいよ。」
ところがね、今度はシンジが後ろからアタシを抱きしめるような格好になったのよ。でも、
アタシはちっとも嫌じゃなかったし、なんだか安心しちゃったから何も言わなかったの。
それでシンジは、アタシが両手で花火を掴むようにして、その上からシンジの左手を添え
るようにしたの。
「シンジ、早く火を点けてよ。」
アタシはちょっとだけ恥ずかしくなって、シンジを急かしたの。
「うん、分かったよ。」
アタシの気持ちを知ってか知らずか、シンジはゆっくりと火を点けたわ。そしたら、今度
はさっきと違う色の火花が散ったの。これもとっても綺麗な色ね。
「うわあ、綺麗ねえ。」
「どう、アスカ。気に入った?」
シンジがアタシの耳元でささやく。いやん、ちょっとくすぐったいわね。
「うん、気に入ったわ。色んな花火があるし、色も綺麗だし、見ていて飽きないわね。ま
あ、強いて言えば長続きしないことかしら。」
「そうだね。ちょっと物足りないかもね。でもさ、まだまだ花火はあるから、もっとやろ
うよ。」
「うん、賛成。」
「じゃあ、次の花火に火を点けるよ。アスカ、じゃあ持ってよ。」
「うん、いいわよ。」
こうして、アタシとシンジは二人で仲良く花火を続けたわ。
***
「あら、アスカ。仲がよろしいようで。」
そろそろ残りの花火が少なくなってきた頃、ヒカリが声をかけてきたわ。
「何よ、そっちこそ。」
アタシは言い返したけど、はたと気付いたの。今のアタシはシンジに後ろから抱きしめら
れて、シンジの顎がアタシの肩に乗っかっているのよ。なんかねえ、ぴったりとくっつい
ているのよ。確かに何か言われてもしょうがない状態よねえ。
しかもね、シンジったらアタシの髪の匂いをくんくん嗅いでいたのよ。シンジ、人前でそ
ういうのはやめてよね。と言っても、二人っきりの時だったらいいってもんでもないんだ
けどね。
「アスカ、私達はそんなにくっついていなかったわよ。」
「ふん、本当は羨ましいくせに。鈴原君とこうやってみたいでしょ。」
「うっ…。」
アタシの反撃に、ヒカリは一瞬詰まったわ。その隙にアタシはシンジと少し距離をとった
の。ユキ達が来るのが見えたからよ。
「お〜い、みんな。最後に打ち上げ花火をしようぜ。」
「おう、賛成や。」
んっ?何よ、打ち上げ花火って。
「アスカ、見れば分かるよ。」
アタシが不思議そうな顔をしたのを見て、シンジが応えてくれたわ。まあ、いいわ。とに
かく見てみましょ。
「よ〜し、火を点けるから、みんな離れろよ。」
相田の声に従って、アタシ達は少し離れたわ。アタシはシンジに手を引っ張られて。ヒカ
リはもちろん鈴原に手を引かれて。
「いくぞ〜っ!」
声がしたと同時に相田が花火から離れたの。で、少しの間を置いて、ぼんっ、って音がし
て、光る玉が空に打ち上げられたの。そして、大きな音を立てて上空で爆発したのよ。
ううん、正確に言うと爆発じゃないかもね。空に大きなキラキラ光る花が広がったんです
もの。う〜ん、こりゃあいいわね。
「よ〜し、次行くぞ。」
えっ、まだあるの。ワクワクしちゃうわ。
「いくぞ〜っ!」
こうして、打ち上げ花火が5発打ち上げられたのよ。どれもとっても綺麗だったわ。
つづく(第86話へ)
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あとがき
夏と言えば、海に花火ですね。アスカは初めての花火がとっても気に入ったようです。
シンジとも自然に手をつないでいるようです。
2003.9.9 written by red-x