新世紀エヴァンゲリオン 外伝 超少女アスカ
第84話
「どうしたのよ、アスカ。遅かったじゃない。」
部屋に戻ったら、ヒカリが心配そうな顔をしていたわ。
「あら、ごめんね。待たせちゃったかしら。アタシ、温泉って初めてだから、ついつい長
くなっちゃったのよ。」
「そうなの。てっきり、碇君といちゃいちゃしていたのかと思っていたわ。」
「そ、そんなことないわよ。いやあね、ヒカリったら。」
げっ。いきなり何て事言うのよ、ヒカリったら。でも、冷や汗がタラーリよ。そしたら、
ヒカリがいきなり大声を出したのよ。
「あっ、アスカ。首にキスマークがついているわよ。」
へっ。何よ、ヒカリ。キスマークって、何なのよ。アタシがポカーンとしていたら、ヒカ
リはクスリと笑ったわ。
「ユキ。賭は私の負けだわ。アスカは変なことはしていなかったみたいよ。全然慌ててい
ないし。」
へっ。ヒカリったら、何を言ってるの?
「やっぱり、そうですよね。惣流さんが、お風呂で変なことをするわけないですよ。」
なんて言いながら、ユキがひょっこり顔を出してきたわ。そこで、やっとアタシは分かっ
たの。アタシがエッチなことをしてきたかどうか、カマをかけたって言う訳ね。でも、幸
いなことに、アタシが『キスマーク』の意味を知らなかったから、事なきを得たっていう
訳ね。それじゃあ、アタシは堂々としていないとね。
「当ったり前でしょ。何でアタシが公共の場で、エッチなことをするのよ。そんなこと、
考えたこともないわよ。」
「でしょ。洞木さん。」
とユキ。
「う〜ん、言われてみるとその通りね。分かったわ、後でアイスを奢るわよ。」
ヒカリはそう言って、がっくりと肩を落としたわ。
***
「わ〜い、メシや、メシ。」
夕食の時間になって、鈴原が一人で騒ぎだしたわ。そう、お風呂の後は夕食なのよ。
「ちょっと、鈴原。静かにしなさいよ。」
「ええやんか。今日は客は殆どいないんやし。」
と言うより、客はいないわね。ネルフの保安部の人間しかいないしね。
「そういう問題じゃないでしょ。」
「わあったわ、ヒカリ。だから、睨むのやめてほしいんや。」
「じゃあ、静かにする!」
「トホホ…。」
こうして、夫婦漫才が終わり、6人揃ってホテルのレストランへ入って行ったわ。
「おおっ、ぎょうさんあるで〜っ。」
と鈴原。
「うわあ、すごいや。」
とシンジ。
「こんなに凄い料理は初めて見るわ。」
とヒカリ。
「妹達にも食べさせたいわねえ。」
とユキ。
「豪勢だなあ。」
と相田。
そう、そこにはあらかじめ予約していた料理が、テーブルの上に所狭しと並べられていた
のよ。特にみんなの目を引いたのは、お刺身だったようね。シンジが刺身が好きだってい
うのを聞いたから、刺身をメインにしたのよ。
それもあって、夕食はどちらかというと和風っていう奴になったの。それも、海産物が中
心なのよ。でも、アタシはナマの食べ物は苦手だから、お鍋の中に刺身を入れて火を通す
つもり。だから、各自にお鍋をつけたの。
それにボイルしたカニやエビなんかはアタシも食べられるから、たくさん用意してもらっ
たの。でもそれだけじゃあ味気ないから、アタシだけお鍋を2つにしてもらって、すき焼
き鍋にしてもらったの。アタシの好きなお肉が、たくさん食べられるようにね。
でもね、シンジがチラチラこっちを見るのよ。
「どうしたの、シンジ?」
「ううん、なんでもないよ。」
でも、アタシはシンジとの最初の食事の時に、シンジがすき焼きを500グラムも食べた
ことを思い出したの。
「もしかして、シンジもすき焼きを食べたいの?」
「えっ。う、うん。まあ、そうかな。」
あら、シンジったら、さっきのことを気にしているのかしら。何か遠慮しているようだわ。
まあ、シンジも反省しているようだし、優しくしてあげようかしら。
「良かったら、シンジも食べなさいよ。お肉のお代わりはたくさん出来るし。」
「えっ、いいの?」
「もちろんよ。」
「じゃあ、頂こうかな。」
そう言いつつ、シンジはさっと箸を伸ばして、お肉を一杯持って行ったわ。が〜ん!アタ
シが食べようと思っていたお肉まで持って行っちゃったわ。トホホホホ…。まあ、いいわ。
お肉をお代わりしましょ。
アタシは空になったお肉の皿を持ち上げたわ。そしたら、直ぐにお店の人−と言っても多
分ネルフの人だろうけど−が代わりのお皿を持ってきてくれたの。よしよし、これでいく
ら食べても大丈夫ね。
少し落ち着いたら、アタシはみんなの様子を見てみたの。右斜め前の鈴原は、一心不乱に
食べ続けているわ。右のヒカリは、そんな鈴原をちらちら見ながら、刺身を中心に食べて
いたわ。
左のユキは、カニとエビをおいしそうに食べているわ。うっ、アタシと競合するじゃない。
あんまり食べないで欲しいわね。左斜め前の相田は、そんなユキをちらちら見ながら食べ
ているわ。相田は満遍なく食べていわ。まだ自分のおかずにしか手を出していないようね。
うん、こいつが一番マナーが良さそうね。
シンジはというと、刺身とすき焼きをメインに食べているようね。ううっ、こうして見る
とお鍋ってあんまり人気が無いのね。食べているのは、アタシと相田だけじゃない。でも、
まあいいわ。どうせ鈴原がヒカリの分まで食べるでしょ。おっと、アタシは言い忘れてい
たことがあるのに気付いたの。
「みんな聞いて。これを食べたらデザートがあるわ。追加注文はいくらしてもいいけど、
デザートのことを忘れないでね。」
アタシが言うと、みんな一斉に頷いたわ。鈴原だけが嬉しそうにしていたけど、他のみん
なはこれ以上頼む気配はなさそうね。そりゃあ、これでけの量を食べるなんて、普段じゃ
考えられないものね。でも、今日は物凄く運動したから、みんな結構食べているわ。
***
「おおっ、アイスにフルーツまであるんか。」
デザートタイムになったら、鈴原はさらににこやかな顔をしたわ。デザートはアタシの好
みで、フルーツポンチにアイスクリームよ。それに加えてコーヒーか紅茶が付くの。
しっかし、本当に鈴原は大食いね。本当に全部食べちゃったんだから。他のみんなもそう
だけど、あれだけあった料理を残さずに食べきったのよね。でも、お腹が満タンじゃあ、
あんまり長く出歩くのは難しそうね。
「さあて、みんな。これからどうするか決めるわよ。何か意見がある人はいるかしら。」
アタシが尋ねると、真っ先にヒカリが言ったわ。
「浜辺で花火をしましょうよ。」
ヒカリ、アンタやっぱり食べすぎたのね。
「私も賛成です。」
そして、ユキも賛成したの。アンタも、エビとカニを食べ過ぎよね。
「俺も賛成。」
ユキに見つめられて、相田も賛成に回ったわ。
「僕もそれでいいや。」
「ワイもや。」
こうして、みんなで花火をすることが決まったのよ
つづく(第85話へ)
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あとがき
女性陣は、食べ過ぎであまり動けないようです。そのため、浜辺で花火という、お約束
の展開になりそうです。
2003.9.1 written by red-x