新世紀エヴァンゲリオン 外伝 超少女アスカ

第77話

「アスカ…。僕は、今はっきり分かったよ。僕は、アスカのことを心から愛しているって。 アスカ…。好きだ、愛してる…。」 きゃあっ、シンジったら歯の浮くようなセリフなんか言っちゃって、一体全体どうしちゃ ったのよ。おかげで、笑いを堪えるのが大変じゃないのよ。でも、笑ったらこの雰囲気が ぶち壊しよねえ。ええい、世界の平和のためだから我慢よ、うん、そうよ。 「アタシも、シンジが好き…。」 ぷぷっ、おっかしいの。笑いを堪えるのがこんなに辛いなんて、思いもよらなかったわ。 ひいっ、もう駄目っ。吹き出しそうだわ。どうしましょう。あっ、そうだ。いいこと考え たっと。 「シンジ…。」 そう言いながら、アタシは両手を広げたの。そうしたらね、シンジも手を広げて近寄って 来たのよ。 「アスカ…。」 そうして、アタシ達は再び抱き合ったの。良かったわあ。あともう少しで吹き出すところ だったもの。抱き合っていればお互いの顔が見えないから、アタシは安心して顔の筋肉を ほぐしたの。まあ、要は笑ったのよ。 でも、かすかな足音を聞いて、アタシは目を瞑ったわ。あれっ、誰なのかしら。 「ねえ、アスカ。どこにいるの?」 少し遠くでヒカリの声がしたわ。そうしたら、シンジははっとしてアタシから離れたの。 アタシは、少し顔を赤くして、さっと水着を拾って身に付けたわ。 「ねえ、アスカ?」 声が近付いてきたから、アタシは怪しまれたらまずいと思って返事をしたの。 「ヒカリなの?アタシはここよ。シンジも一緒よ。」 「あっ、アスカなの?心配しちゃったわ。どうしたのよ、こんな岩場で。」 ヒカリは岩場の陰から現れた途端、ちょっとアタシ達を責めるような目をして言ったの。 だから、アタシは努めておちゃらけて言ったのよ。 「なあに、野暮なこと言ってるのよ。恋人同士、愛の語らいってやつよ。」 「えっ!そっ、そうなの。そうよね、二人は恋人同士ですものね。」 ヒカリはそう言いながらも、少し頬を赤く染めたのよ。うううっ、アタシったら何でこん な恥ずかしいことを言わなきゃいけないわけえ。それもこれもシンジのせいよね、もうっ。 何か、頭に来ちゃうわね。でも、それを顔に出せないのは辛いわね。アタシは内心とは全 く逆に、にこやかな笑顔でヒカリにこう言ったのよ。 「良く分かってるじゃない。だから、アタシからシンジを取ろうなんて思わないでよね。 ねっ、シンジ?」 「う、うん。」 あら、やっぱりいつも以上にシンジの反応が鈍いわね。まだ落ち込んでいるのかしら。そ れに、なぜか変な姿勢になっているわ。何となく前かがみになっているような…。でも、 ヒカリは気付かなかったようで、続けて話してきたのよ。 「いいなあ、二人とも仲が良くて。羨ましいわ。」 アタシはその言葉を聞いて、ピンときたの。 「どうしたの、ヒカリ。鈴原君とケンカでもしたの?」 「ううん、そうじゃないけど。ちょっとね。鈴原ったら、疲れた〜って言って、ぐうぐう 寝ちゃってるのよ。」 ヒカリは肩を落としながら言ったけど、しょうがないかもね。だって、海で遊ぶのってと っても疲れるじゃない。アタシだって、正直言ってくたくただもの。水上スキーって、思 った以上に疲れるのよねえ。 ただ、ヒカリの気持ちも分かるから、アタシの心は複雑だったわ。ヒカリからすれば、せ っかく二人っきりになったんだから、もうちょっと甘〜い雰囲気を期待してたのよね、き っと。 「ふうん、だからつまらなくなってこっちに来たのね。でもね、それは大間違いよ。鈴原 君のことが好きなら、ずっと側にいなくちゃ。」 「そ、そうかしら。」 「そうよ。男の子はねえ、起きたときに、側に女の子がいると嬉しいものよ。ねえ、シン ジもそうでしょ?」 「う、うん。そうだね。」 「ほら、シンジもそう言ってることだし。ヒカリも早く鈴原君のところに戻った方がいい わよ。鈴原君が起きたときに、ヒカリがにっこり笑えば、鈴原君だってヒカリのことをも っと好きになるわよ、きっと。」 「そ、そうかしら。じゃ、じゃあ、そうさせてもらうわ。」 「うん、頑張んなさいよ。」 アタシが言い終わらないうちに、ヒカリは鈴原のところへとすっ飛んで行ったわ。まあっ たく、恋する乙女は、悩みがつきないのね。でも、二人がケンカでもしたのかと心配しち ゃったけど、そんなことはなさそうね。ちょっとほっとしたわ。 「あ、あのお、アスカ。」 「何よ、シンジ。」 「えっと、何て言うか、続きがしたいなあ、なんて思ったりして。」 ぬ、ぬあんですって!こいつったら調子に乗りやがって!アタシは猛烈に頭に来たわ。 「あはははっ…。やっぱり駄目だよね…。」 アタシの怒りがシンジにも分かったのか、シンジの声は段々小さくなって、元気が無くな っていったわ。う〜ん、続きはしたくないけど、シンジが元気をなくすのはもっと嫌だわ。 あ〜あっ、もうっ、しょうがないわねえ。 「もちろん駄目よ。はっきりと言わないとね。」 「えっ。」 「もうっ、鈍感ねえ。はっきり何をしたいのか言えばOKだって言ってるのよ。」 「そ、それじゃあ、アスカを抱きしめたいっ!」 「い、いいわよ。」 「うわっ、やった〜っ!」 シンジはそう言うなりアタシを抱きしめたわ。もちろん、アタシもシンジの背中に手を回 したの。 「アスカって、とっても柔らかいや。」 「ふふふっ、ありがと。」 「アスカ、さっきはごめんね。やっぱり僕は駄目な奴だって、よく分かったよ。でもね、 アスカのことが大好きだってことは本当だから。それだけは、絶対に信じてほしい。」 もうっ、シンジったら、面と向かって言えないんだから。でも、言うだけましになったの かな。 「じゃあ、シンジ。アタシのことを信じて欲しいって言った気持ち、分かってくれたの? シンジがアタシのことを疑っているなんて知って、アタシがどれだけ傷ついたのか、分か ったの?それに、自分が信じてほしかったら、まず自分が信じなきゃ。」 「うん、何となく分かったよ。信じてもらえないって、とっても嫌な気持ちになるんだね。 僕は何て言ってアスカに謝ったらいいんだろう。」 「謝ったってしょうがないわよ。アタシは口先だけの男は嫌だから、行動で示して欲しい わ。さっきも言ったけど、アタシの言うことを何でも信じること、何でもアタシの言う通 りにすること。この二つは絶対に守ってちょうだいね。」 「うん、分かったよ。」 「当然、浮気はしないこと。他の女の子に色目を使わないこと。分かってるわよね。」 アタシがそう言ったら、シンジはアタシから少し体を離して、にっこり笑って言ったの。 「あっ、それなら大丈夫だよ。僕はアスカのことが大好きだもん。他の女の子を見るくら いなら、アスカを見るもの。」 あっ、シンジ。アンタ、反則よ。いきなりそんな素敵な笑顔を見せられたら、さすがのア タシだって、ちょっとクラッと来ちゃうわ。ま、まずい。心臓がドキドキするわ。え〜い、 こうなったら…。 「じゃあ、行動で示してね。」 アタシは、ゆっくりと目を瞑ったの。そうしたら、シンジはアタシを抱きしめて、優しく キスしてきたのよ。ふうっ、良かった。シンジは完全復活したようね。アタシも、危うく 赤い顔を見られるところだったけど、大丈夫だったようね。 こうして、アタシ達はしばらく抱き合ってキスをしていたの。 つづく(第78話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき  どうやら完全復活したシンジです。それとも単にアスカの操り人形と化したのか。一方、 アスカもシンジの笑顔には弱いようです。 2003.7.2  written by red-x