新世紀エヴァンゲリオン 外伝 超少女アスカ
第68話
「ふわあ、眠いわねえ。」
「どうしたの、アスカ?昨日は早く寝たんじゃないの?」
「あのねえ、女の子が3人集まってんのよ。早く寝るわけないでしょう。」
まったく、シンジったら、何でこんな簡単なことが分からないのかしら。だから、お子ち
ゃまって言われるのよね。
「そっ、そうなんだ。」
アタシが少し怒ったのを感じたのか、シンジは少し腰が引けちゃったみたいね。
「眠いから、もう少し寝かせてもらうわね。」
アタシはそう言うと、シンジの膝に頭を乗せたわ。そうそう、今は海へ向かうタクシーの
中なのよ。それも、当初の予定を変更して、タクシーを3台にしたの。だから、こうやっ
てシンジの膝枕で眠れるって言う訳なのよ。
でも、ヒカリやユキがどうしているのか、ちょっと気になるけどね。アタシとシンジみた
いに、相手の目の前で平気で眠れるほどの間柄でも無いし、一体どうやって眠気を抑えて
いるのかしら。それとも、アタシの狙いどおりに相手の肩を借りて、うつらうつらやって
いるかしら。後で聞いてみようっと。
そんなことを考えていると、急速に睡魔がアタシを襲ったのよ。お休みね、シンジ。そう
心の中で言うと、アタシの意識は薄れていったわ。
***
「ねえねえ、アスカ。起きてよ。」
「う〜ん、シンジ。もうちょっとだけ。」
うるさいわねえ。もう少し寝かせてよね。
「アスカったら、碇君が困っているでしょ。早く起きなさいよ。」
えっ、今のはヒカリの声だわ。ちょっとまずいかも。
「えっ、ヒカリ?」
アタシは跳ねる様に飛び起きたわ。
「お嬢さん、お休みのとこと、申し訳ないですね。もう、着きましたよ。」
げっ。タクシーの運転手さんが笑っているわ。恥ずかしい。
「は、はいっ。すみません。」
アタシはペコリと頭を下げたわ。そして、急いでタクシーから降りたの。みっともないっ
たらありゃしないわ。シンジはタクシー料金を払っているようね。じゃあ、荷物を確認し
たら、直ぐにここを離れなきゃと。
「良かったわ、アスカが起きなかったらどうしようかって思っていたのよ。」
「大丈夫よ。今はちょっとしくじったけどね。」
アタシがペロリと舌を出したら、ヒカリは笑っていたわ。
「ふふふっ、アスカも失敗することがあるのね。」
「そりゃあ、アタシだって人間だもの。失敗の一つや二つあるわよ。でも、アタシってど
れくらい寝ていたの?」
「大したことないわ。着いてから荷物を降ろしたら、アスカがタクシーから降りて来ない
じゃない。それで心配になって来てみたら、アスカが寝ていたのよ。だから声をかけたん
だけど、直ぐに起きたから。」
「ふうっ、そうなの。良かったあ。そんなに待たせなかったのね。」
「ええ、そうよ。」
「あっ、惣流さん。おはようございます。」
ユキがホテルから出てきたわ。
「おはよう、ユキ。ちょっと眠っちゃったみたい。お待たせしちゃって、ごめんね。」
「いいえ、いいんですよ。大して待ってませんから。今、相田君がチェックインの手続き
をしていますから、部屋にはまだ入れないんですよ。」
「ふうん、時間がかかるのね。」
「でも、直ぐに済むみたいですよ。」
ユキが言っている間に、相田がホテルから出て来て、アタシ達に来いって言う合図をした
わ。
「惣流さん、じゃあ行きましょうよ。」
「ええ、そうね。」
アタシ達は、ホテルの中に入って行ったわ。
***
「うわあ、広いですね。」
「ねえ、アスカ。ここって高いんじゃないの。ホテル代、払えるかしら。」
「大丈夫よ。支払はネルフ持ちだから。ホテルでの支払いは、お土産代も含めて全てネル
フ持ち。ボート代と水上スキー代もね。だから、安心しなさいよ。」
「でも、いいのかしら。」
「いいのよ。シンジもアタシも、気晴らしが必要だし。といって、アタシとシンジの2人
だけでは、1泊2日の小旅行は認められないし。かといって、大人と一緒なんて御免だし
ね。ヒカリ達はタダで旅行が出来るし、アタシ達は気楽に旅行が出来るし、お互いに得に
なるからいいじゃない。」
「まあ、それもそうね。」
「でも、ちょっと気が引けます。」
「ユキ、気が引けるんなら、アタシの頼みを聞いてくれるかしら。」
「えっ、何ですか。」
「実はねえ、部屋を3つ取りたいのよ。意味は分かるわね。ユキがウンって言ってくれれ
ば、実現するんだけど。」
「そ、それって…。」
「そう、ユキは相田君と同じ部屋になるのよ。いいかしら。」
ユキは少し考えて、こう応えたの。
「そ、惣流さんがどうしても碇君と同じ部屋になりたいって言うのなら、わ、私は我慢し
ます。あ、相田君と一緒の部屋でも良いです。」
でもね、何か今にでも泣きそうなのよね。無理しちゃって。
「ごめん、冗談よ。」
アタシが笑って言ったら、ユキったらほっとした様子だったわ。でも、ヒカリは残念そう
な顔をしているわ。これは、うまくすれば、今回の旅行でヒカリと鈴原は完全にくっつく
わね。
「何よ、ヒカリ残念そうね。」
「そ、そんなことないわよ。やあねえ、アスカったら。自分が残念だからって。」
「アタシが残念って、どういうことよ。」
「アスカこそ、碇君と一緒の部屋で寝たいんでしょう?」
「そ、そんなことないわよ。」
「嘘。だって、こんなチャンスなんて滅多にないんでしょ。」
「そんなことないわよ!だって、アタシとシンジはいつも一緒に寝てるもの。」
あれっ。ヒカリとユキが固まっちゃったわ。どうしたのかしら。
あっ、ヤバイ!アタシったら、なんてことを言っちゃったのかしら。
つづく(第69話へ)
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あとがき
ついつい、アスカは自分達の秘密をばらしてしまいます。さて、どうやって切り抜ける
のでしょうか。それとも、開き直るのか。
2003.5.5 written by red-x