新世紀エヴァンゲリオン 外伝 超少女アスカ
第65話
「うおおおおおおっっっっっっ!」
シンジは、雄叫びを上げてヤクザ者に突っ込んで行ったわ。そして、電光石火の早業で、
一本背負いを決めたのよ。やるわね、シンジ。
「このヤローッ!」
「やっちまえっ!」
「ふざけやがって!」
ヤクザ達は、手にナイフを持ちだしたの。ふん、やっぱりこいつらは根っからの悪党ね。
きっと、アタシ達が油断したところを見計らって凶器で攻撃を仕掛けるつもりだったんだ
わ。先制攻撃して良かったわ。
でも、ナイフを見たシンジは怖くなっちゃったみたい。敵を睨み付けるだけで動かなくな
ったのよ。う〜ん、ちょっとまずいわね。しょうがない、アタシも加勢するしかなさそう
ね。
アタシは、隠し持っていた特殊警棒を取り出したの。もちろん、素手でも十分倒せる相手
なんだけど、アタシが物凄く強いって分かっちゃうじゃない。それは避けたいのよ。
「シンジ、受け取って。」
アタシは、シンジに特殊警棒を投げて渡したわ。
「アスカ、ありがとう!」
シンジは笑顔で受け取ると、直ぐに警棒を伸ばして身構えたわ。これで、シンジはナイフ
を怖がらずに戦えるわ。
「やあっ!」
シンジが手近にいる男の手を警棒で思いっきり打ち据えたの。
「うわあっ!」
そうしたら、その男は凄い叫び声をあげたわ。これって、結構痛いのね。
「よくも、やりやがったなっ!」
「こん、ガキャーッ!」
ますます、ヤクザ者は血走った目をしたわ。ふふふっ、アタシの思い通りになったわ。ア
タシは、もう一つ特殊警棒を取り出して伸ばし、音もなくヤクザ者の一人に近付くと、後
頭部を打ち据えたの。
「っ!」
その男は悲鳴すらあげられずに一瞬で気絶したのよ。そして、さらに近くの男にも襲いか
かって倒したの。シンジが敵の目を引きつけているおかげで、奇襲攻撃成功っていう訳ね。
「あっ、どうしたんだ。」
ふん、やっと気付いたようね。でも、もう遅いわよ。
「さあ、シンジ。思いっきりやっつけて!」
アタシの声を合図に、シンジは再び敵に突っ込んで行ったわ。
***
「ありがとう。また助けてもらってしまったね。」
おじさんは、深々と頭を下げてお礼を言ったわ。そう、ヤクザ者はあらかた叩きのめした
の。まだ、その辺でうめき声が聞こえるのはそのせい。
「いいんですよ。気にしないで下さい。」
アタシは笑顔でそう言ったわ。
「それで、これはこの間の仕返しなんですか?」
「ああ、そうかもしれない。」
そう言って、おじさんは少しうつむいたわ。
そう、やっぱりね。前回は少し甘かったわ。だから、仕返しをしようと思ったのね。それ
も、きっと不意打ちをしようとしていたのね。だって、アタシ達には興味無いっていう態
度だったじゃない。あれは、アタシ達を油断させるためだったのね。そして、近付いたア
タシ達にナイフをぶすりとやるつもりだったのね。
それが、シンジが急に突っ込んで行ったから、逆に向こうが慌てたのね。きっと、自分達
が手を出さなければ、アタシ達が手を出すわけがないと思っていたのね。ふん、甘いわね。
正義の味方は、悪党に先制攻撃出来る権利があるのよ、知らないの?
でも良かった。今回は、一人も逃がさなかったし。それと、6人全員の右腕の骨を叩き折
っておいたから、これで当分はナイフなんか持てないでしょう。念のため、片足の骨も折
っておいたわ。
悪党は、口でいくら言っても無駄なのよ。それは世界共通ね。だから、痛い思いをさせな
いと駄目なのよ。まあ、こうしておけばしばらくはおとなしくしてるでしょ。
そんなことを考えていたら、シンジがおじさんに話しかけたの。
「あの、おじさん。借金はまだ返すあてがないんですか。」
「う〜ん、なんとかなりそうなんだが、ちょっと問題があってね。」
「問題って?」
「融資をしてくれるっていう人が現れたんだけど、どうもその人は私の娘が目当てらしい。
だから、そんな融資は受けられないと断るつもりなんだよ。」
が〜ん、相田の名前をちらつかせたことが、大失敗だったのね。う〜ん、なんとかしない
とまずいわね。アタシは、話しに割り込んだわ。
「じゃあ、その融資の条件に、娘さんが関わっているって言われたんですね。」
「いや、そうじゃないが。」
「じゃあ、何で娘さんが目当てだなんて言えるんですか。」
「実は、融資を申し込んできた人が電話しているところを聞いてしまってね。その相手が、
なんと娘の同級生なんだ。」
「それだけじゃあ、娘さんが目当てだなんて言えないんじゃないですか。だって、もしそ
うなら娘さんの名前を出しているはずですよ。」
「う〜ん、そう言われるとそんな気もしてきたな。だが、融資を受けてから娘の話を持ち
出されても遅いしなあ。」
「だったら、聞いてみればいいじゃないですか。融資を受ける条件に娘さんのことが関わ
るのかどうか。聞きもしないで断るのはどうかと思います。もしかしたら、その人は余計
な気を遣わせないようにと思って、娘さんの話をしなかったかもしれないでしょう?」
「う〜ん、そうかなあ。」
「そうですよ。それに、相手がその気なら、最初から言ってますよ、絶対に。」
「そうだな、私も先走って考えすぎていたみたいだ。分かったよ、君の言う通りにしてみ
るよ。」
「そうですよ、そうしてくださいね。」
アタシは笑顔でそう言った。
つづく(第66話へ)
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あとがき
ユキのお父さんの誤解が解けたようです。これで、ユキのお父さんも首を吊らなくても
すむでしょう。アスカの予知夢によって、ユキのお父さんの命は助かりそうです。
2003.3.29 written by red-x