新世紀エヴァンゲリオン 外伝 超少女アスカ

第63話

「シンジ、そろそろ行きましょうよ。」 アタシはシンジに声をかけたの。そう、今日はネルフに行く日なのよ。訓練をしなきゃい けないと思うとちょっと、憂鬱だけど、しょうがないわよねえ。 「うん、ちょっと待っててよ。今行くから。」 そう言ってしばらくすると、シンジが走ってやって来たわ。まあ、わざとらしいけど、そ の姿勢だけは買ってあげるわね。 「さあ、早く行きましょ。」 「うん、アスカ。でも、ちょっと話したいことがあるんだけど。もちろん、行きながらで いいんだけどさ。」 「ふうん、なあに。」 アタシは、シンジの言う通り歩き出した。シンジも付いてきて、並んで一緒に歩く。 「あのさ、さっきはごめんね。」 「えっ、いきなりどうしたの。」 「だってさ、アスカは水上スキーがしたいって言うのに、僕が反対しちゃってさ。アスカ に悪いかなあ、なんて思って。」 何よ、謝るくらいなら反対しないでよね。 「まあ、気にしていないって言えば嘘になるけどね。」 「でも、嫌なのには理由があるんだ。」 「ふうん、なあに。」 「実は、僕は泳げないんだ。だから、落っこちたら怖いなあって思って。」 「でも、それならボートだって同じじゃない?」 「ううん、違うよ。ボートだったら滅多に水の中には落ちないじゃないか。でも、水上ス キーだったら何かの拍子に落ちるかもしれないよね。」 ふうん、だったら溺れなければいいのよね。 「じゃあさ、シンジ。落ちても溺れないように、ライフジャケットを着ていればいいじゃ ない。そうよ、そうしましょうよ。」 「でも、何かカッコ悪いじゃないか。」 もう、『何がカッコ悪いじゃないか。』よ。シンジったら、自分がカッコ良いなんて思っ ているのかしら。アタシはちょっと頭に来たけど、怒りが顔に現れないように注意して言 ったの。 「シンジ、水上スキーをやる時は、みんなライフジャケトを着用するのよ。事故に遭った 時の生存確率が全然違うし、カッコよりも命が大切だもの。」 「えっ、そうなの。」 「そうよ。仮に鈴原君や相田君が嫌がっても、無理やりにでも着てもらうから。だから、 シンジだけが着ないなんてことはないのよ。安心なさい。」 「なんだあ、そうだったんだ。」 そう言いながら、シンジはほっとしたような表情になったわ。 「じゃあ、シンジも水上スキーはOKってことで良いわね?」 「うん、そういうことなら良いよ。」 へへへっ、良かったあ。アタシは少しだけ嬉しくなったわ。 ***  ネルフに着いたアタシとシンジは、まっすぐにリツコのところへ向かったわ。今日は、 ハーモニクステストがある日なのよ。 「あら、アスカ。なんだか今日は嬉しそうね。」 ハーモニクステストが始まる前に、リツコから声をかけてきたわ。ふん、リツコったら何 で分かるのかしら。いいえ、分かるわけがないわ。きっと、ミサトから情報を仕入れたの ね。そうに違いないわ。 「ふ〜ん、ミサトに聞いたのね。」 「あら、やっぱり分かったのね。そうよ、ミサトに聞いたのよ。今度、シンジ君と一緒に 海に行くんですってね。」 シンジと一緒じゃなくって、シンジを含めたみんなと一緒になんだけど、アタシはあえて 気付かないフリをしたわ。リツコが話題を変えようとしているのが見え見えだったから。 「ふん、どうせ、ミサトもこっそりと後を尾けて来るんでしょ。」 「ふふふっ、そうでしょうね。あの、ミサトのことだから。アスカは、その辺はお見通し でしょ。」 「そりゃそうよ。ミサトほど分かりやすい人も珍しいけどね。きっと、加持さんと一緒に 来て、夜は酔っぱらって暴れて、加持さんに介抱されるんだわ。」 「あら、アスカ。何で知ってるの?」 「加持さんが良くこぼしてるもの。ミサトって、結構酒癖が悪いらしいしね。」 「そうよ、3人で飲みに行く時なんか、いつもミサトはへべれけに酔っぱらって、加持君 が背負って帰るのよ。」 「ええ、聞いてるわよ。よお〜っくね。ミサトったら、本当にしょうがないわよねえ。」 そう、アタシは知っているわ。そのうち何回かは、まっすぐに帰らずに寄り道しているっ ていうこともね。でも、アタシが知っているっていうことは内緒だけどね。 「まあ、アスカも楽しんでいらっしゃい。出来れば、ミサトの面倒もお願いしたいわね。」 「あのねえ、ミサトは子供じゃないのよ。冗談じゃないわよ。」 アタシが呆れた顔をすると、リツコはにやっと笑ったわ。う〜ん、何か嫌な予感がするわ ね。当たらないといいけど。 ***  その後、ハーモニクステストは無事終わって、それが済んだらアタシはシンジを格技場 に連れて行ったの。そこでアタシとシンジの二人だけで特訓するのよ。 もちろん、シンジは嫌そうな顔をしたけどね。疲れたから嫌だなんて言ってね。 「しょうがないわねえ。じゃあ、アタシの元気を少し分けてあげるわよ。」 アタシはそう言いながら大気中のエネルギーを一旦体に集めて、目を瞑って口を少しだけ 尖らして、シンジの方を向いたのよ。 「ア、アスカ。」 それだけ言うと、シンジはアタシの肩を掴んだわ。そうして、数秒後にアタシの唇に何か が当たる感触が。その瞬間、アタシは超能力を発動させたの。そう、エナジー・チャージ よ。 アタシが今さっき集めたエネルギーを、シンジの体内に注入したのよ。これで、シンジの 疲れた体にも、元気がみなぎるようになったはずよ。 アタシが目を開くと、シンジは少し赤い顔をして言ったわ。 「ありがとう、アスカ。おかげで元気になったよ。じゃあ、始めようか。」 あら、シンジから特訓を始めようなんて言うなんて。夢じゃないかしら。アタシはほっぺた をつねってみたけれど、やっぱり痛かったわ。 さすがにアタシの超能力ね。物凄い効果だったわ。 つづく(第64話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき  水上スキーが出来ることになって、アスカは大喜びです。 2003.3.15  written by red-x



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