新世紀エヴァンゲリオン 外伝 超少女アスカ

第61話

「そ、惣流さんっ!うちの父が海に行って良いって言ってくれましたっ!」 水曜日の休み時間に、ユキがうちのクラスにニコニコしながらやって来て、口を開くなり そう言ったのよ。 「あら、本当なの。良かったわね。」 しめしめ、アタシの作戦が上手くいったようね。加持さん、上手くやってくれたようね。 「ええ、本当に珍しいわ。どうしちゃったのかしら。昨日はうちの父が凄く機嫌が良かっ たんです。だから、思い切って頼んでみたんですよ。そうしたら、誰と行くのか聞いてき たんです。」 「へえ、それで。」 「みんなの名前を言ったんですよ。そうしたら、どういう人なのかって聞いてきたんです。 だから、皆さんのことを思いっきり褒めて言ったんです。そうしたら、『分かった。気を つけて行けよ。』って言ってくれたんです。」 うっ、もしかすると、アタシとシンジのことも言ったのかしら。もしかしたら、そっちの 方が効果が大きかったかもしれないわね。良く考えれば、アタシの特徴って分かりやすい ものね。 「まあ、理由はともかく、OKしてもらえたんならいいじゃない。」 「ええ、本当に良かったです。諦めずに言って良かったです。」 「で、ちょっと気になるんだけど、アタシのことは何て言ったの?」 「えっ、ああ、その、秘密です。」 「なによお、冷たいこと言わないでよ。」 「まあ、それは後で言いますから。とにかく、今度の土日は大丈夫ですから。」 それを聞いて、ヒカリが少し慌てたように言ったわ。 「ええっ、本当なの、森川さん?泊まっても大丈夫なの?」 「は、はい。そうです。」 「分かったわ。それじゃあ、私もそのつもりでいるわね。うちは多分大丈夫だと思うわ。 でも、妹さん達はどうするの?」 「父が面倒を見てくれることになったんです。何でも、知り合いの方から遊園地のタダ券 とホテルの宿泊券をもらったらしいんですけど、3人分しか無かったらしいんです。」 うっ、それはきっと加持さんね。良く気がつくわね。 「そう、うちはどうしようかな。」 なんて話をしていると、チャイムが鳴っちゃったのよ。で、ユキは自分のクラスに飛んで 帰ったわ。 *** 「えっ、森川さんが行けるって、本当なの?」 次の休み時間にシンジに言ったら、すごく驚いていたわ。シンジにとっても意外だったみ たい。 「ええ、間違いないわ。さっき本人から直接聞いたもの。」 「そうか、ケンスケが喜ぶよ。良かった。ちょっと言ってくるね。」 シンジは言うが早いか、相田のところに行って、こそこそ話をしたの。そうしたら、相田 の顔がみるみるうちに明るくなっていったわ。そして、こっちにまっしぐらにやって来た のよ。 「そ、惣流さん。森川さんが海に行けるって、本当なのかい。」 「ええ、そうよ。ヒカリがまだはっきりしないけど、アタシ達女子とシンジは、1泊2日 の予定で海に行くわ。相田君や鈴原君が泊まれなかったら、残念ながら途中でお別れにな っちゃうけど、どうかしら。」 「も、もちろん大丈夫さ。必ず何とかするよ。もちろん、トウジも首に縄を付けても連れ て行くよ。」 「そうよねえ、鈴原君に協力してもらえば、ユキと仲良く出来るかもしれないものね。」 「なっ、何を言うんだよ。」 「あら、図星かしら。」 「ど、どうだっていいじゃないか。」 「ふうん、アタシが協力するのと邪魔するのとでは、かなり違いが出ると思うけど、良い のかしら。今までは、結構協力してきたつもりなのにねえ。」 そう言ってやったら、相田は真っ青になったのよ。 「ご、ごめん。そうだったよな。悪い、悪い。こうなったら、恥を忍んでお願いするよ。 何とか協力して欲しいんだ、頼むよ。」 「でも、ユキに変なこととか、いやらしいことをしないって誓える?」 「う、うん。誓うよ。絶対にそんなことはしないよ。」 ふん、嘘おっしゃい。男だったら必ずチャンスがあったらやるはずよ。でも、これだけ念 を押しておけば、無理やり何かするっていうことはないと思うから、言っておいたのよ。 「分かったわ、出来る範囲で協力してあげるわ。」 「そ、惣流、ありがとう。」 「その代わり、アタシにも協力してほしいのよ。」 「えっ、協力って?惣流が?」 「ヒカリは、鈴原君と例の事件以来付き合うようになったんだけど、なんかこうしっくり 来ないらしいのよ。だから、ヒカリと鈴原君の仲がもっと進展するように後押ししてあげ たいのよ。」 「なんだ、そんなことなら任しておけよ。トウジも洞木のことを好きだと思うから、きっ かけさえあれば何とかなるさ。でも、あいつは色気よりも食い気だからなあ。」 「う〜ん、それは難しいわね。もともと、恋愛には疎いのね、シンジみたいに。」 「ちょ、ちょっと。そりゃあないよ。酷いな、アスカは。」 「だって、本当のことでしょ。それが原因でアタシを泣かせたことがあるくせに。」 「そ、そりゃあそうかもしれないけど。」 「おい、シンジ。惣流を泣かせたことがあるって、本当かよ。」 ふん、シンジが余計なことを言うから、相田に聞かれちゃったじゃない。 「えっ、そっ、それは…。」 あら、シンジったら困った顔をしたわ。 「相田君、協力して欲しかったらシンジを困らせない方がいいんじゃないの?」 「おっと、そうだよな。シンジ、悪い。今のは忘れてくれ。それよりも、俺と森川さんの 仲を応援してくれよ。」 「ああ、良いよ。」 こうして、密約が成立したのよ。 つづく(第62話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき  さて、アスカの思惑通りに、ユキが海に行くことになりました。さて、これからどうな ることでしょう? 2003.2.25  written by red-x



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