新世紀エヴァンゲリオン 外伝 超少女アスカ
第58話
「はあっ、疲れたあっ。もう、体が動かないよ。」
訓練が終わって家に着いたら、シンジは疲れて倒れるように横になったの。
「何よ〜っ。元気ないわねえ。しっかりしなさいよっ。」
「でも、疲れ果てて、動けないよ〜っ。」
でも、訓練は今日で７日目よね。シンジも良く続いているわね。間違いなく、アタシの超
能力、エナジー・チャージのおかげだけどね。
えっ、エナジー・チャージって何かって？大気中のエネルギーを一旦体に集めて、それを
口移しで相手の体内に直接注入する超能力よ。これは、特定の男性にしか使えないけど、
かなり威力があるのよ。そう、疲れた体に元気をみなぎらせることが出来るのよ。
そのエナジー・チャージを何度もしたから、シンジはどんなに疲れても元気一杯になるっ
ていう訳なのよ。
「はいはい、待っててね。すぐに朝食の用意をするから。でもね、今日はちょっと手抜き
したけど、良いわよね。」
アタシは、昨日のうちに大量に作っておいた焼きそばとチャーハンを温めて、テーブルの
上に置いたわ。もちろん、コーンスープと一緒にね。
「じゃあ、先に食べててね。アタシは、シャワーを浴びるから。」
アタシは、そう言ってさっさとシャワーを浴びたの。だって、汗がべとついて、気持ち悪
かったんだもん。もちろんシンジはお腹が空いているから、アタシの言葉と同時に食べ始
めたわ。
＊＊＊
「シンジ、お待たせ〜っ。どう、お腹一杯になった？」
「うん、もう腹一杯だよ。」
アタシのシャワーの時間が長いから、シンジはとっくに食べ終わっていたの。ありゃ〜っ、
殆ど無くなっているわね。こりゃあ、ミサトの分も危ないわね。でも、お弁当を作るから、
一緒にミサトの朝食も作れば良いわよね。
「じゃあ、シンジもシャワーを浴びて来なさいよ。」
「うん、分かったよ。」
シンジがシャワーを浴びている時間は短いけど、頑張ってお弁当を作らなくちゃね。アタ
シは、腕まくりをして、気合を入れたわ。
そのかいがあってか、シンジがシャワーを浴びているうちにお弁当は大体出来ちゃったの
よ。冷凍食品が多いからだけど、それでも味は並以上だと思うわ。でも、アタシ、シンジ、
ミサト、リツコにマヤの５人分を作るから、結構大変なのよ。
えっ、何で５人分も作っているのかって。それはねえ、シンジが最初にリツコの検査を受
けた時に、シンジがリツコやマヤと打ち解けるようにって思って、４人分のお弁当を作っ
て行ったのよ。一応狙いは成功して、お弁当を話題にしてシンジはリツコやマヤと割合打
ち解けて離すことが出来たの。
でね、アタシったらおいしかったって言われて良い気分になっちゃって、また作るってい
う約束をしちゃったのよ。そうなると、ミサトの分も作るはめになるのよねえ。だから、
その日以来５人分作っているわけよ。
今日は火曜日だから、メインのおかずは海老フライなの。それ以外に３段重ねののりご飯、
カニコロッケ、ポテトフライ、サラダ、マカロニ、キウイがあるわ。
先週と比べると少し種類が減ったけど、毎日ちゃんと作るのはキツイから、しょうがない
わよね。お弁当を作るのは思った以上に大変なのよ。もっともアタシ達にはデザートのア
イスクリームがついているけどね。
「アスカ、出たよ。」
おっと、シンジが出てきたわ。
「ああ、シンジ。ちょうど良かったわ。お弁当も出来あがったところよ。」
「アスカ、ごめんね。本当は僕が料理当番なのに、アスカばかりにやらせちゃって。」
シンジはそう言って、本当にすまなさそうな顔をしたわ。そう、アタシは外食にしようか
って提案したのに、シンジは自分から料理当番をやるって言い出したのよね。でも、結局
アタシが作っているから、責任を感じているみたいね。
「良いのよ、シンジには訓練を頑張って欲しいし。それに、シンジがおいしいって言って
くれと、アタシも嬉しいのよね。」
アタシがにっこり笑うと、シンジも笑ってくれたわ。うん、いい感じね。シンジはやっぱ
り暗くないほうがいいのよね。でも、今はそんなことを言っている場合じゃないわね。
「シンジ、そろそろ急がないと遅刻するわよ。」
「あっ、もうこんな時間なんだね。」
「そうよ、急ぎましょ。」
アタシは、シンジと連れ立って家を出たわ。そして、今日は特に何事もなく過ぎていった
わ。
＊＊＊
「ねえ、アスカ。ちょっと話があるんだけど。」
テニスの練習が終わった後、珍しくシンジが声をかけてきたわ。
「どうしたの？」
アタシは、ちょっと不思議に思ったけど、一応シンジの話を聞くことにしたわ。シンジは、
人目につかないところまで行ってから、アタシに話しかけてきたの。
「ねえ、アスカ。今朝のおじさんのことなんだけど、何とか力になってあげられないかな
あ。」
「何とかって、どうするの？」
「例えば、お金を貸してあげるとか。」
「誰のお金を貸すのよ？」
「前にアスカは、エヴァのパイロットは給料が出るって言ってたよね。だから、もしアス
カの給料が残っていれば、貸してあげてほしいんだ。」
「嫌よ。」
「どっ、どうしてさ。あのおじさんは、すごく困っていたじゃないか。」
「あのねえ、シンジ。困っている人は、星の数ほどいるのよ。そんな人達にお金を貸して
いたら、幾らお金があっても足りないわよ。」
「それも分かるけど、あのおじさんは、何とかしてあげたいんだ。」
「でもね、シンジ。仮にお金があって、貸してあげたとするじゃない。でも、使徒と戦っ
て負けちゃったら、あのおじさんは間違いなく死ぬのよ。それに、アタシ達が下手な戦闘
をしても同じなのよ。戦闘に巻き込まれて死ぬかもしれないわ。そこんとこ、分かってる
の？」
「そっ、そうなんだ。」
シンジは、意外そうな顔をしているわ。やっぱり深くは考えていないみたいね。
「だから、あのおじさんを助けたいと思ったら、一所懸命訓練して使徒を完璧に倒すのよ。
その方が先よ。」
「でも、でも、あのおじさんは、父さんが僕のことを嫌いじゃないって言ってくれたんだ
よ。だから、だから…。」
げっ。シンジはうつむいて、涙を流し始めたわ。シンジったら、なんて泣き虫なのかしら。
思った以上にヤワなのかしら。それとも…。
アタシは少し考えたけど、シンジが悩んで訓練に身が入らないと困るから、シンジの願い
を聞いてあげることにしたわ。それでシンジが訓練に力を入れるのなら、その方が良いと
思ったのよ。でも、単純にお金を貸してもしょうがないと思ったから、ちょっとシンジの
願いとは違うことをするけどね。
「それほど言うなら、考えてあげてもいいわ。」
「えっ、本当なのアスカ？」
その瞬間、シンジの顔がパッと明るくなったわ。
「でも、条件があるの。聞いてくれるわね。」
アタシはにっこりと笑ってそう言ったわ。
つづく（第59話へ）
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あとがき
さて、アスカはシンジに対して、どんな条件を出すのでしょうか？
2003.2.4 written by red-x