新世紀エヴァンゲリオン 外伝 超少女アスカ

第59話

「条件って、何なの?やっぱり、エヴァに乗って戦えっていうことなの?」 シンジの顔が、少し曇ったわ。あらやだ、シンジったらまだ戦うのが嫌なのかしら。 「それは当然よ。だって、シンジが戦わなかったら、アタシ一人で戦うことになるのよ。 一人よりも二人で戦った方が有利だってことは分かるでしょ?使徒に負けたら、あのおじ さんだけじゃなくて、クラスメートも全員死ぬのよ。むろん、アタシもね。」 そうよね、アタシが好きなら死ぬ気で戦えって言いたいわ。 「うん、確かにそうだけど…。」 シンジは、まだ釈然としないっていう表情をしているわ。 「でも、条件って言うのはそのことだけじゃないわ。シンジがあのおじさんを助けたこと を決して口外しないこと、それも守ってもらうわ。」 そうよ、これも絶対に必要な条件だわ。 「いいけど、どうしてさ。」 「シンジは、エヴァのパイロットなのよ。あんまり特定の人に肩入れするのは良くないし、 他人に知られるとまずいのよ。」 まあ、理由は色々あるけどね。 「うん、アスカがそう言うなら絶対に口外しないよ。」 シンジは、少し考えてから言ったわ。 「絶対よ。実はね、あのおじさんを助けるには、お金を貸すだけじゃ駄目なのよ。」 「どうしてさ。」 「お金を貸しても、根本的な解決にはならないからよ。お金を貸しても、次第に無くなっ ていくわ。その時はどうするの?また貸すの?何度も何度も貸すの?」 「そんな先のことは分からないよ。」 んもう、もう少し頭を使いなさいよね。 「それじゃあ駄目なのよ。お金を何度も貸していたら、あのおじさんでも、楽して金が手 に入ると思い込むわ。そして、いつしか働かないダメ人間になってしまうのよ。」 「じゃあ、どうすればいいんだよ。」 シンジったら、顔が少し青くなったわ。 「理屈は簡単よ。おのおじさんに適度な仕事が回るように仕向けるのよ。」 と言っても、簡単にはいかないけどね。 「どうやってやるの?」 やっぱりそうきたわね。 「あのおじさんの仕事が分からないから何とも言えないけど、多分ネルフの仕事を少し回 せば済むと思うわ。この第3新東京市内で、ネルフと全く関係の無い仕事をしているとは 思えないもの。」 なあんてね、希望的な観測だけどね。 「そうか、父さんに頼めばいいんだね。」 あのねえ、シンジったら、何考えてんのよ。 「それは難しいわね。司令という立場にある人は、何よりも公正でなければいけないわ。 だから、特定の業者を優遇するのは難しいと思うのよ。」 それくらい、分かれっちゅうの。 「じゃあ、どうしたらいいんだよ。」 「馬鹿ね。アタシ達には、ミサトと加持さんがいるじゃない。あの二人に頼めば、何とか なるわよ。ああ見えても、ミサトはネルフの作戦部長なのよ。それに、加持さんだって、 ネルフ内では結構顔が利くみたいだし。まあ、アタシから頼んでおくわよ。」 「うん、アスカ。お願いするよ。」 こうして、話はまとまったの。後は、あのおじさんを探し出して、色々と調査すればいい のよね。アタシは、シンジに分からないように、加持さんに電話をしたわ。 *** 「ねえ、アスカ。ちょっと話があるんだけど、いいかな。」 「ええ、良いわよ。なあに?」 休み時間に、珍しくシンジの方から話しかけてきたわ。そして、人目につかないところへ 二人してやってきたの。 「あのさあ、今度の土曜日にみんなで遊びに行きたいなあなんて思ったんだけど、どうか なあ。」 「で、誰から頼まれたの?」 「えっ、何で分かったの?」 「ふん、シンジがそんなことを考える訳がないでしょ。大方、相田君でしょ。」 「うわっ、すごいやアスカ。よく分かったね。」 うっ、シンジったら、何でこんなに鈍いのよ。 「あのねえ、いつものお昼のメンバーで、まだくっついていないのは相田君くらいでしょ。 だから、みんなで遊びに行こうなんて言い出すのは、相田君の可能性が高いに決まってる じゃない。」 「あっ、そうか。良く考えれば確かにそうだね。」 違うわよ。0.5秒考えれば、普通は思いつくでしょ。 「まあ、いいわ。シンジはどうしたいの。」 「そりゃあ、どこかに行きたいよ。アスカと二人きりっていうのもいいけど、みんなで遊 びに行くのも面白そうだし。あっ、それからトウジも参加したいって言ってた。」 「どこに行くのか、決まってるの?」 「う〜ん、それはこれからだ考えるんだと思うよ。」 「決まっていないのね。だったら、ヒカリ達と相談してみるわ。」 「えっ、アスカはOKなの?」 「まあね。シンジが乗り気なら、アタシも異存は無いわ。といっても、シンジと二人きり でデートしても良いけど、それはいつでも出来るもの。」 「そ、そうだね。」 あら、シンジったら少し赤くなったような気がするわ。気のせいかしら。 「じゃあ、アスカ。お願いね。」 「でも、あんまり期待しないでね。ヒカリ達に先約が入っていたりしたら、駄目なんだか らね。」 「うん、分かったよ。」 そう言って、シンジは去って行ったわ。しょうがない、シンジのために一肌脱ごうかしら。 *** 「ねえ、ヒカリ。今度の土曜日はおヒマ?」 アタシは、ヒカリの後ろから、急に話しかけたの。 「あっ、アスカ。びっくりさせないでよ。」 ヒカリは、少し驚いたようね。 「ごめん、ごめん。実はさあ、どこかに遊びに行こうかなあなんて思ったのよ。もちろん、 シンジ達と一緒にね。」 「えっ、どこに行くの?」 「そうねえ、安直にテニスなんていうのもいいけれど、泳ぎに行くのも良いわよね。」 「えっ、水着になるの?」 「何よお、嫌そうな顔しちゃって。男なんてね、水着姿で悩殺しちゃえばイチコロよ。鈴 原君だって、ヒカリの可愛い水着姿を見れば、メロメロになるわよ。そうしたら、二人の 仲は急接近間違いなしよ。」 「えへへっ。そうかしら。」 あら、ヒカリったら。急に締まりの無い顔しちゃってさ。あんなジャージ男のどこがいい のかしら。 「でさ、ユキも誘って行かない?相田君はユキが好きみたいだし、シンジはアタシでしょ。 シンジはアタシの言いなりだから、ヒカリと鈴原君がうまくいくように協力させるわよ。 どう、良い考えでしょ?」 「そうねえ、じゃあ、乗ったわ。」 「でも、ヒカリって、土日両方が潰れるのは駄目なのよね?」 「ええ、そうだけど、それが何かした?」 「ううん、1泊2日にしようかなあって思っただけ。でも、ちょっと厳しそうね。」 「私は何とかするけど、ユキは駄目よ。ユキのお父さんて、凄く厳しいらしいのよ。男の こと一緒に1泊2日で出かけるなんて言えないと思うわ。」 そう、やっぱりね。まあ、確かにそうよね。 「じゃあ、日帰りで海に行きましょうよ。」 こうして、アタシ達はユキを誘って海へ行くことにしたの。 えっ、エヴァの訓練はどうしたのかって?へへへっ、今度の土曜日は、レイが退院する日 なのよ。だから、シンジがレイに会わないように引き離したかったのよね。渡りに船って いう訳なのよ。 さあて、日本は暑いから、海辺で楽しく遊んでみたいわ。今度の土曜日が楽しみね。ユキ が快く承知してくれると嬉しいんだけどね。 つづく(第60話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき  さて、ユキは海に行ってくれるのでしょうか? 2003.2.11  written by red-x