新世紀エヴァンゲリオン 外伝 超少女アスカ

第44話

「ええっ!こんなに高いのを買うの?」 「あら、まずいかしら。」 今日は、お客さんが来るから、フィレステーキにしようと思ったんだけど、値段の高さに、 ヒカリが驚いちゃったのよ。あっ、そうそう。今は、スーパーじゃなくて、デパートの地 下にある食品売場にいるの。だから、食材も結構高めなのよ。 「ううん、そうじゃないけど、アスカって、いつもこんなに高い食材を買っているの?」 「そういう訳じゃないけど、月曜日はすき焼きでしょ、火曜日はおでんでしょ、水曜日は 外食だし、昨日はホッケの開きだったわ。」 「じゃあ、私のためなの?こんなに高いのを買うなんて、悪いわよ。」 「ううん、違うのよ。実は、シンジがステーキを食べたいって言っていたの。でも、アタ シじゃ作れないから、ヒカリが来るなら作り方を教えてもらおうと思ったのよ。」 まあ、こう言っておけばいいかな。 「そうなの。だったら良いけど、それにしても高いんじゃないかしら。」 「良いのよ、気にしなくても。一緒に暮らしているミサトっていうのが、結構高級取りな のよ。この間も、外食したら、1人当たり10万円以上かかったのよ。そんな人に、1枚 千円以下の肉なんて、出せると思う?」 「じゅ、十万円…。」 ヒカリは絶句したわ。まあ、アタシが言ったことは、嘘じゃないからいいわよね。 「じゃあ、良いわよね。」 アタシは、その店で一番高いステーキ用の肉を買ったわ。もちろん、人数分×2枚+αを ね。そして、明日のお料理会用の食材を物色して、メインとなるものは予約したのよ。明 日の昼にはうちへ届けてくれるように手配もしたわ。 これには、訳があるのよ。明日、ヒカリと鈴原で、近所のスーパーに買い物に行ってもら うつもりなんだけど、スーパーで買うには量が多すぎて重いし、値段も結構張るから、鈴 原が何か言うと思うのよ。例えば、食べる分のお金は絶対払うとか。 そんなことで、お料理会の雰囲気を壊したくないし、かといって、美味しい食材を使いた いから、値段が知られるのは、極力避けたいのよ。 「じゃあ、シンジ。悪いけど、荷物持ちお願いね。」 「うん、良いよ。」 こうして、アタシ達はデパートを後にしたわ。 *** 「ふうっ、やっぱりここの方が落ち着くわね。」 「やあねえ。ヒカリったら。」 スーパーに来たら、ヒカリの第一声がこれなのよ。嫌になっちゃうわ。 「でも、アスカったら、良いわね。いつもあんなに高いのを食べているの?やっぱりお嬢 様なのかしら。」 「ううん、そんな事ないわよ。1週間、何も食べるものが無くて、草の根っこをかじった り、泥水をすすって生き延びたり…。そんなこと、何度もあったしね。」 「ど、泥水を…。ア、アスカが…。」 「まあ、人生山あり、谷ありっていうやつよ。あんまり言いたくないから、この話はやめ ましょう。」 「え、ええ…。アスカって、思ったよりも苦労してるのね。」 「そうね。多分、ヒカリの想像を遥かに絶する、凄まじい苦労をしていると思うわ。」 「そう…。昔は、大変だったのね。」 「う〜ん、過去形じゃないんだけどね。これからも、そういうことがあるかもしれないわ。 とりあえずは、生きていれば御の字って思わなきゃ。」 「そ、そうね…。」 あら、ヒカリったら、思いっきり引いちゃったわね。 「そんなことよりも、さっさと見ましょうよ。」 アタシは、話題を変えようと、ヒカリを引っ張って行ったわ。 「アスカ、お待たせ。」 そこにシンジが、カートを押してやって来たわ。 「さあて、それじゃあ回りましょうよ。」 最初は、野菜コーナーね。明日買えそうなものをチェックするの。ここには果物もあるわ。 次は、精肉コーナーね。もしかしたら、人数変更やメニュー変更があるかもしれないから、 ここも要チェックよ。 そして、惣菜コーナーや必要ないところはすっ飛ばして、飲料コーナーへ向かったわ。 「ねえ、ヒカリは何か好きな飲み物ある?」 「そうねえ、アップルジュースがいいかしら。」 「じゃあ、1.5リットルのを買いましょうよ。」 「でも、明日はそれだけじゃ、足りないでしょ?」 「でも、グレープジュースとオレンジジュース、それにウーロン茶は一杯あるわよ。炭酸 飲料はあまり無いけど、量的には十分あるわよ。」 「だったら、明日になってから、みんなに聞いてからの方が良さそうね。」 でも、念のため、何種類かの炭酸飲料を、明日の昼までに配送してもらうようにしておく ことにしたわ。 こうして、アタシとヒカリは、1時間くらい、スーパーの中を歩き回って、今日の料理の ために必要なものを買って、明日のために必要なものをしっかりメモしたわ。 「ごめん、シンジ。ちょっと重いかしら?」 「うん。ああ、良いよ、気にしないでよ。大丈夫だよ。」 今日必要じゃないものは、配送してもらうように手配したんだけど、それでも結構な量に なっちゃったの。アタシも半分持つって言ったんだけど、シンジは自分の方がたくさん持 つって言って、聞かないのよ。 しょうがないわねえ、なんて思いながらも、アタシも少し嬉しい気持ちなのよね。 「じゃあ、ヒカリ。6時半過ぎに来てね。人数に変更があったら、直ぐに知らせてね。」 「ええ、分かったわ。」 こうして、アタシ達は別れたの。 *** 「あれっ、アスカ。僕らの家はこっちだよ。」 「良いのよ、こっちで。さあ、入ってよ。」 アタシ達は、いつもの玄関の隣から家に入ったのよ。 「ああっ!これって、今日工事をしたの?」 シンジったら、やっぱり驚いているわ。実はね、ミサトの家が狭いから、隣の家とくっつ けちゃったのよ。一昨日と昨日のうちに、隣の家の中を改造して、今日になってから、家 の間の壁をぶち抜いたっていう訳なのよ。 まあ、これをみてちょうだいよ。 アタシの部屋は広くなって、シンジの部屋も、太陽が入るようにしたの。リビングも、大 勢入っても大丈夫なように広くして、キッチンも最新式のものに全て置き換えたのよ。 食器洗い乾燥機も、20人分用にしたし、コンロは倍にしたわ。シンクも2つにしたの。 これだと、4人位で使っても使いにくくないと思うわ。 冷蔵庫も、ビール専用のもの、冷凍専用のもの、飲料専用のものなど、6つも用意したの。 もちろん、ビール専用と飲料専用の冷蔵庫は、中はぎっしり詰まっているわ。これで、明 日の用意はバッチリね。 「さあ、シンジ。ヒカリが来る前に、荷物の整理をするのよっ!」 アタシは、驚くシンジを前にして、胸を張って言ったのよ。 つづく(第45話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき  17話で言っていた、例の件とは、ミサトの家の改造だったのです。やはり、住みよい 家は、重要ですから。なお、アスカの部屋とシンジの部屋が繋がっていますが、アスカの 方からしか開けられない扉で仕切られています。 2002.10.22  written by red-x



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