新世紀エヴァンゲリオン 外伝 超少女アスカ

第43話

「お願いしま〜す。」 そう言って、ヒカリはコートの中に入って、部長の打ち出したボールを3回続けて打った のよ。右、左、右と、ヒカリは見事に打ち分けたのよ。それも、綺麗なフォームだったわ。 ヒカリったら、最近はやっていないって言っていたけど、怪しいものね。 「はい、次。」 あっ、アタシの順番ね。 「お願いしま〜す。」 アタシは急いでコートに入ったわ。そして、1球目を軽く打ち返したの。 「バシーン!」 で、構え直したんだけど、2球目が来ないのよ。 「あの、どうしたんですか?」 「あっ、ああ。ごめんなさい。」 部長は、続けて2球目を打ち出したわ。 「バッシーン!」 今度は、さっきよりも少しだけ強く打ったの。今度も、相手側のコートに、上手く入った わ。さっきは大口を叩いちゃったけど、自信はイマイチだったから、安心したわ。でも、 3球目が来ないのよ。何よ、アタシは何か変なことをしたのかしら。 「あの、部長。どうしたんですか?」 「あっ、ごめんなさい。」 部長は、そう言うと、第3球を打ち出したわ。 「バッシーンッ!」 今度も見事に相手コート内に入ったわ。だから、アタシは良い気分でコートから出たのよ。 でも、何か様子が変なのよね。アタシ、何かまずい事でもしたのかしら。 「ちょっと、球出しを代わって。」 部長は近くの部員にそう言うと、アタシの側に近寄って来たの。 「あの、惣流さん。私は、あなたが今日初めてラケットを握ったって聞いていたんだけど、 何かの間違いよね?」 へっ?変なことを言うわね。 「あの、間違いなく、今日初めてテニスラケットを握ったんですが、何か変なことをした んですか?一応、自分なりに本を読んだりして、勉強したんですけど。」 そう言ったら、部長は驚いたような顔をしたわ。 「う、嘘でしょ?初めてなのに、あんなことが出来たって言うの?」 「あの、何か変なことをしましたか?左右に打ち分けて、フラット、トップスピン、スラ イスを打ち分けただけなんですけど。」 「へ、変じゃないわ。でも、あんなに上手く打てて、しかも強力な球を打てる人は、3年 生にもいないのよ。惣流さんて、本当にテニスをやったことがないの?」 「ええ、本当です。でも、強いて言えば、バドミントンはやったことがあります。」 「ちょ、ちょっと、それは本当なの?」 「ええ、そうですか。それが何か。」 「じゃあ、2〜3本、サーブを打ってくれないかしら。」 あら、急に変なことを言うわね。でも、いいわ。アタシは、隣のコートに移って、昨日即 席で覚えたサーブのフォームで打ってみたの。最初は、スライスと言って、回転をかけた ボールを打ったの。次はフラットと言って、回転をかけないボールを打ったの。2本とも、 きっちり相手のコートに入ったわ。 「そ、惣流さん。凄いわ。」 「あの、何が凄いんですか。普通に入りましたよね。」 今、アタシが打ったボールは、一応アウトじゃないけれど、ライン上ギリギリだとか、物 凄い回転がかかるという類のものではなかったのよ。だから、アタシは何が凄いのかよく 分からなかったわ。 「実はね、最初からサーブを打てる人って、滅多にいないのよ。ただ、バドミントンの経 験者は、上手くサーブを打てる人が多いの。だから、もしやと思ったけど、スライスサー ブまで打てるなんて、本当に凄いわ。惣流さん、あなたは今日からレギュラーよ。」 「ええ、分かりました。」 まあ、当然よね。 「あっ、あの、惣流さん。あまり驚いていないようだけど。」 「ああ、アタシって、スポーツ万能なんです。どのスポーツでも、直ぐにかなり高いレベ ルまでいくんで、こういうことは慣れっこなんですよ。」 「はああっ。あなたが言うと、嫌味に聞こえないから不思議よね。」 「へへへっ。そうですかあ?」 そうよね、アタシみたいな天才美少女は、何を言って嫌味に聞こえないのよ。こうして、 初日からアタシはテニス部のレギュラーとして、3年生に混じって練習することになった のよ。 *** 「アスカったら、凄いわね。あんなに上手いなんて、思わなかったわ。」 「何よ、ヒカリ。だから言ったじゃないの。テニス部最強だって。信じてなかったの?」 今、アタシ達は、1時間の練習を終えて、着替えているのよ。今日が練習初日ということ で、短い時間であがろうっていうことになったのよ。 「ええ、ごめんなさい。でも、アスカは凄いわよね。美人で、スポーツが得意で、羨まし いわ。」 「でも、料理や掃除洗濯は得意じゃないわよ。誰でも得手不得手はあるものよ。」 「そうかしら?」 そうよ、ヒカリ。それに、美人じゃなくなって、スポーツが不得意になったとしても、ア タシは血のつながった両親や家族が欲しい。でも、それは叶わぬ夢なのよ。ヒカリは、少 なくともお父さんと姉妹がいるじゃない。 ヒカリは、アタシが、どんなにあがいても、手に入らないものを持っているのよ。隣の芝 生は青いと言うけれど、本当よね。でも、こんなことを言うと、湿っぽくなるから、アタ シは決して口には出さないけどね。 「大丈夫よ。今のままでも、鈴原君の心はゲット出来るから。」 アタシがそう囁くと、ヒカリは真っ赤になっちゃったわ。そこで、アタシは急に良い考え が浮かんだわ。 「ねえ、ヒカリ。突然だけど、今日はうちで食事しない?妹さんも一緒でいいわよ。」 「えっ、ええ、良いわよ。でも、急にどうしたの?」 「明日、いきなり料理するんじゃ辛いかなって思ったのよ。練習も必要でしょ?だから、 今日は一緒に作りましょうよ。」 「ええ、そうね。その方が、確かに安心だわ。」 「じゃあ、決まりね。でも、今日は6時前には家に入れないの。だから、6時半位に来て ほしいのよ。妹さんも、もちろん来るでしょ。」 「ええ、そうさせてもらうわ。実は、今日はお父さんもお姉ちゃんも帰りが遅いし、妹と 2人だけで食べるのは少し寂しいなって思っていたの。」 「でも、悪いけど、鈴原君達には声はかけないわよ。お楽しみは、明日っていうことで。」 「もう、アスカったら、何て事言うのよ。」 「まあまあ、怒らないでよ。お料理会だって、半分はヒカリのためなんだから。だって、 シンジ以外の男は、はっきり言って邪魔だもの。」 「あっ。そ、そうなの。ごめんなさい。」 「良いのよ。気にしないで。じゃあ、スーパーにシンジと3人で行きましょうよ。」 こうして、アタシ達は買い物に行くことにしたの。 つづく(第44話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき  アスカのテニスの腕は、超高校生レベルのようです。普通の中学生では敵わないでしょ う。 2002.10.15  written by red-x



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