新世紀エヴァンゲリオン 外伝 超少女アスカ

第23話

「アスカ、ありがとう。本当にありがとう…。」 シンジは急に涙を流し出したの。アタシは驚いたわ。こんなことで泣くなんて、余程母親 の愛情に飢えていたのね。アタシは少し罪悪感を覚えたけど、シンジが喜ぶならOKね。 *** 「じゃあ、シンジ。早く戻って特訓しましょう。」 アタシが言ったら、シンジは真っ青になったわ。 「えっ。レストランで食事するんじゃないの。」 「何言ってるのよ。まだ時間があるでしょ。休んだ分を取り返すつもりでやらないと。」 まったく、シンジったら、何甘いこと言ってんのかしら。ちゃんと訓練しなくちゃ、死ん じゃうかもしれないのよ。本当にしょうがないわね。 「で、でもさ、婚約記念日っていうことで、お休みにしない。」 「だ〜め。これは二人の今後の幸せがかかっているんだから、手抜きは出来ないの。」 「そ、そんなあ〜っ。」 嫌がるシンジを半ば引きずるようにして、アタシはマンションへ戻ったわ。 *** 「えっ、もうこんな時間なの。」 アタシは驚いたわ。もう4時半を回っているじゃない。食事は8時からにするとして、あ と3時間位しかないわ。 「じ、じゃあ、中途半端な時間になるから、また明日にしようよ。」 「駄目よっ!」 もうっ。シンジったら逃げ腰なんだから。 「でも、1日位休んだって罰は当たらないよ。」 「駄目って言ったら、駄目なのよっ!手を抜いたせいで、もしシンジが死んじゃったら、 アタシは一生悔やむのよっ!それだけは絶対に嫌よっ!」 そう言って、アタシは涙をポロポロ流したの。アタシは使徒との戦いが死と隣り合わせだ ってことは理解していたし、身近な人が死ぬのはとても悲しいことだということも知って いたわ。だから、本当に泣いてしまったの。やっぱり、シンジが死ぬなんて嫌じゃない。 一応、アタシの婚約者なんだし、絶対に生きていて欲しいのよ。 「ア、アスカ…。」 今度はシンジがびっくりして、目を丸くしたわ。 「ご、ごめんね。アスカの気持ちも考えないで。そうだよね。アスカは僕のことを思って 特訓してくれているんだよね。そんなことも分からないで、僕は最低だ。」 シンジはそう言って俯いたの。だから、アタシは優しくこう言ったわ。 「良いのよ、分かってくれれば。今は辛くても、きっといつかは良い思い出になるわ。そ ういえば、シンジには何も理由を言っていなかったものね。」 「えっ、理由ってなあに。」 アタシは不思議そうな顔をするシンジに簡単に説明したわ。使徒がアダムに接触すると、 サードインパクトが起きると言われていること、使徒がアダムを目指してこの第3新東京 市にやって来ると言われていること、アダムと使徒との接触を防ぐために戦っていること など、アタシがネルフから説明されたことを一通りと自分の予知夢で得た知識をね。 「でも、エヴァンゲリオンって、使徒のコピーって聞いたけど。」 「ええ、そうよ。」 「だったら、エヴァンゲリオンと使徒が接触しても、サードインパクトが起きるんじゃな いのかな。」 「そうねえ。アタシもそう思ったけど、リツコに言わせれば、構成物質が違うらしいのよ。 何でも、使徒を構成する物質は、我々には理解出来ない物質らしいのよ。」 「ふうん。そうかあ。」 シンジは納得したみたいだけど、確かに腑に落ちないわね。アタシの予知夢でも、第1使 徒のアダムと第2使徒のリリスのことは、良く分からなかったのよ。この間の使徒が第3 使徒で、地下にいるのがアダムなら、リリスは一体いつ現れたの? それから導かれる仮定は3つ。一.南極にアダムと共にリリスも現れた。二.地下にいる のはリリス。三.南極に現れた方がリリス。う〜ん、どれも決め手に欠けるわね。おっと、 こんなことを考えている場合じゃないわ。特訓しないと。 「シンジ!特訓の続きをやるわよ。覚悟しなさい。」 「ひい〜っ。」 こうして、シンジは特訓を続けたわ。 *** 「さあ、シンジ。思いっきり蹴っていいわよ。」 「う、うん。」 「さあ、来い!」 アタシは身構えたわ。 「えいっ!」 そこにシンジのへなちょこキックが来たの。 「何よっ!これじゃ全然駄目よっ!もっと真剣にやりなさいよっ!」 あまりのへろへろキックに、アタシは頭に来たわ。 「で、でも、アスカが痛い思いをすると悪いと思って。」 「あのねえ、これは訓練なのよ。戦っている時に相手がへなちょこキックを出してくると 思うの?本番に近い条件でやらないと駄目なのよ。シンジの気持ちは分かるけど、本気で やってくれないと、本番でアタシの命が危なくなるのよ。そこんとこをよ〜く考えてよ。」 「えっ、アスカの命が。」 「そうよ。訓練は楽でした。けれど本番の戦闘では強い蹴りが来て、一撃でやられました じゃ、シャレにならないでしょ。そういうのは思いやりとは言わないのよ。本当にアタシ のことを大切に思うのなら、全力でかかって来なさいよ。」 「そ、そうだね。分かったよ。僕の考えが甘かったんだね。じゃあ、思いっきり行くよ。 エイヤ〜ッ!」 今度はさっきよりもましな蹴りが来たわ。でも、アタシは左腕で簡単にかわしたの。 「トオ〜ッ!」 またしても気合の入った蹴りが来たわ。素人にしては上出来ね。まっ、素人にしてはまあ まあっていうレベルだけどね。えっ、何で蹴りの訓練をするのかって。それは、武器を持 たない人間の最大の武器は足だからよ。蹴りはパンチの何倍かの威力があるのよ。それに リーチの問題があるわ。だから、シンジには足技を覚えさせたいのよ。 やられた時のダメージを小さくするために受け身を覚えることは重要だけれど、それと同 じ位攻撃も重要なのよ。だから、この2つの訓練は最重要っていう訳よ。 その後、シンジは50回もアタシに蹴りを入れてきたんだけど、全部簡単にかわしたわ。 「さあて、次はアタシの番ね。」 「よ、良し来いっ!」 あらあら、シンジったら震えているわ。 「はっ!」 アタシは一直線にシンジの耳辺りに蹴りを突き出したの。でも、シンジは動けなかったわ。 それどころか、体を震わせだしたの。 「ア、アスカ。すごく怖いんだけど。」 「何よっ。男の子でしょ。しっかりしなさいよ。」 「で、でも…。」 「分かったわよ。軽くやるわよ。それでいいわね。」 「う、うん。ありがとう。」 しょうがなく、アタシはシンジ並の軽い蹴りにしたわ。でも、そうしたらシンジは受け止 めることが出来て、一応訓練らしくはなったわ。でもね、アタシは両手両足に重さ10kg のリストバンドを付けているのよ。だから、物凄く動きにくい訳。何たって、自分の体重 と同じ位重い物を身につけているんですもの。 えっ、アタシの体重はどれくらいかって。そんなことはトップシークレットよ。決まって いるでしょ。でも、ヒントはあげるわね。2001年度の14歳女子の平均身長は 156.8 cmで平均体重は50.9kgなんだけど、アタシの身長はそれ以上で体重はそれ以下よ。 ちなみに14歳男子の平均身長は 165.5cmで平均体重は55.5kgよ。シンジはおそらく身長 は平均並、体重は少ないわね。 話はそれたけど、こうしてアタシとシンジは訓練を続けたの。もちろん、戦いに勝つため にね。 つづく(第24話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき  今回もシリアスっぽくなってしまいました。ギャグをやろうと思っていたのに、いつの 間にかギャグが減ってますね。まあ、そのうち復活するでしょう。 2002.6.4  written by red-x