新世紀エヴァンゲリオン 外伝 超少女アスカ

第24話

話はそれたけど、こうしてアタシとシンジは訓練を続けたの。もちろん、戦いに勝つため にね。 *** 「駄目だよ、アスカ。もう、限界だよ。」 シンジはそう言って果てた。もう、シンジったら、だらしないんだから。でも、本当に疲 れたような様子だから、ここらで息抜きでもしようかしら。そこで、アタシは良い考えが 閃いた。 「ねえ、シンジ。ちょっとこのビデオを見てよ。」 アタシはシンジをテレビの前に連れてくると、リモコンでビデオを再生した。すると英語 が聞こえてきたの。 「Oh! I'm coming! I'm coming…。」 げっ。裸の男女が運動している姿が映っちゃった。アタシは即座に停止ボタンを押した。 「へへへへへっ。間違えちゃったみたい。」 アタシは照れ隠しに笑ったが、シンジには刺激が強かったみたい。固まっちゃったわ。で も、何でこんなビデオが紛れているんだろう。 「シンジ。今度はちゃんとした奴よ。」 アタシはそう言って、今度こそお目当てのビデオを再生した。 「あっ、これは…。」 シンジは真面目な内容のビデオなのに、今度も驚いたわ。それもそのはず。人工呼吸の実 演ビデオだったからよ。女性二人が出演して、ナレーションの説明に沿って、ゆっくりと 人工呼吸をしているのよ。 「どう、シンジ。やり方は覚えた?」 「えっ、ううん。一度見ただけじゃ、覚えられないよ。」 まあ、それじゃあ困るんだけど。 「まあ、いいわ。休憩を兼ねてこれから人工呼吸の練習をするわ。良いわね。」 「でも、誰がやるの。」 むっ。こいつはバカか。今ここにアタシ達以外に誰がいるっていうのよ。アタシとシンジ がやるに決まっているでしょうに。 「もちろん、今日婚約したばかりの恋人同士がやるのよ。」 「えっ、そんな。恥ずかしいよ。」 シンジは急に赤くなったわ。もう、何で嫌がるのよ。こいつったら、女の子とキスをした くないのかしら。いや、違うわね。単に恥ずかしがっているだけね。 「あのねえ。もしアタシの呼吸が止まった時、シンジがやらなきゃ、他の男がアタシの唇 を奪うのよ。それでも良いの?」 「い、嫌だ。」 「じゃあ、恥ずかしがっていないで、うまくやるのよ。」 「でも、本当に分からなかったんだ。」 ん、もう。しょうがないわねえ。 「じゃあ、アタシが最初に見本を見せるわ。シンジは仰向けになって。」 「うん。」 シンジは横になって、顔を上に向けたわ。 「じゃあ、始めるわよ。」 アタシは、頭部後屈とあご先拳上でシンジの気道確保をして、人工呼吸を始めたの。やり 方は、概ね次の通りよ。 最初は、気道を確保したまま、額においた手の親指と人差し指でシンジの鼻をつまむの。 次に、深く息を吸ってから、自分の口を大きく開けてシンジの口を覆うのよ。 そして、胸のふくらみを見ながら、静かに大きく連続して2回吹き込むの。 で、口を離して自然に呼気をさせるの。自分の頬、耳をシンジの口に近づけて呼気を確か めて、胸の動きを見て、人工呼吸が効果的に行われていることを確かめるの。 そして、脈拍の有無を確認するわ。 脈があれば以後、5秒に1回の吹き込みと呼気の確認を繰り返すのよ。 つまり、1分で大体12回キスをするのよね。アタシはそれを3分間続けたわ。 「どう、シンジ。分かってきたかしら。」 「う、うん。でも、もう少し続けて欲しいな。」 「もう、しょうがないわね。」 アタシは今度は2分間人工呼吸を続けたわ。 人工呼吸のやり方を教えるのは、意味があるのよ。アタシ達パイロットは、仮に敵を倒し たとしても、様々な理由で心臓が停止したり、呼吸が止まったりする可能性があるのよ。 そんな時、直ぐに助けが来れば良いけれど、戦場ではそこまでは望めないわ。そうなると、 パイロット同士でカバーし合うしか無い訳よ。 息が止まると、そままではおよそ4分で脳が死ぬか或いは損害をうけてしまう為、幸運に 命が長らえたとしても、大きな障害が残り日常生活の上で著しい不便に甘んじなければな らなくなるらしいのよ。 だから、冗談抜きにこれはアタシ達の生死に関わる重要なことなの。だから、シンジにも きっちりと覚えて欲しいのよ。だって、いつ何どき、何が起きるのか分からないじゃない。 それに、海に遊びに行った時なんかも、万一の事を考えると覚えておいた方が良いしね。 でも、本当の目的とは別の狙いもあるのよ。もちろん、シンジとキスをしまくれば、二人 の仲は急速に近寄るっていうもんよ。それに、アタシの方からキスをしたくなった時も、 『人工呼吸の練習しようよ。』って言えば良いしね。 「どう、アスカ。うまく出来たかな?」 結局、シンジは1分間の人工呼吸の練習を、計3回したわ。まあまあいい線いっていたわ。 「そうね、初めてにしては上出来ね。アタシに万一のことがあっても、アタシの唇は守っ てよね。お・ね・が・い・ね、シンジ。」 「うん。」 シンジはにこやかに言ったわ。 つづく(第25話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき  さて、またもや妖しい雰囲気になってきました。でも、シンジ君は役得ですね。 2002.6.11  written by red-x



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