新世紀エヴァンゲリオン 外伝 超少女アスカ
第127話
「「「「「「お誕生日、おめでと〜う!」」」」」
シンジがネルフから帰って来て、リビングに入ってくると、みんなで一斉にシンジにおめ
でとうを言って、クラッカーを盛大に鳴らしたの。
「ど、ど、ど、どうしちゃったの、これ?」
シンジは、何が起きているのかわからないようで、戸惑っているわ。まあ、そりゃそうよ
ね。少人数でお祝いするとしか言っていないのに、いきなりこんな大勢の友達に囲まれた
ら、シンジでなくても驚くわよね。
だからアタシは、すぐに種明かしをしたのよ。テニス部とクラスの有志で、シンジの誕生
日を祝うことにしたってね。そしたらね、シンジったらいきなり泣き出したのよ。アタシ、
本当に驚いちゃったわ。
「なによ、シンジ。どうしていきなり泣くわけえ?」
アタシが呆れて聞くと、シンジは途切れ途切れに言うのよ。こんな盛大な誕生会を開いて
もらえるなんて、夢みたいだとか、凄く嬉しいとか、感激したとか。でもね、こんなこと
で男の子が泣くなんて、とっても恥ずかしいんだけど。それじゃあ、今までどうだったん
だって話にもなるじゃない。まあ、シンジがここに来る前の話だから、アタシにとっては
どうでもいいんだけどね。
それでも、無性にシンジの背中を叩いてやりたくなったわ。周りに誰もいなければ、間違
いなくアタシはやっていたわ。シンジ、あんたは運がいいわね。それはそうと、周りが騒
がしくなったから、アタシは仕方なくシンジをなだめてお誕生日席に座らせたわ。
***
「「「「「「シンジく〜ん、お誕生日、おめでと〜う!」」」」」
シンジが指定席に座ると、鈴原が音頭をとって乾杯をしたの。もちろん、大人じゃないん
だから、『かんぱーい』なんて言わなかったわ。みんな、シンジの誕生日を心の底から祝
って、おめでとうを言ったのよ。その証拠に、みんな笑顔だったわ。
えっ、誰よ。ご馳走が目の前にあるからだなんて言う奴は。そんな意地汚い奴は、ここに
はいないわよ。それに、そんなことをシンジの前で言う奴がいたら、アタシがぶっ飛ばす
わ。みんなにもしっかりと伝えたから、そんなことを思う奴はいないはずよ。
えっ、だあれ?アタシがみんなを脅しつけたなんて言うのは。アタシは、そんな野蛮なこ
とはしないわよ。それにね、部屋の隅っこに折れたバットがあるのも偶然よ、偶然。決し
て、みんなを脅すために使ったわけじゃないわ。本当よ、シンジてね。
***
「シンジ、ワイの気持ちや。受け取ってくれや。」
乾杯が終わって少ししたら、鈴原がやって来て、シンジのプレゼントの包みを渡したの。
中身は何かしら?つまらないものだったら、鈴原は天罰を受けるでしょうね。間違いなく。
その辺はしっかり教えておいたから、きっと大丈夫だわ。うん、そうに違いないわ。
「トウジ、ありがとう。何かな、楽しみだよ。」
シンジは、にこにこしながらプレゼントを受け取ったわ。でもね、包みは開けなかったの
よ。どうしたのかしら。アタシは、聞きたかったけど、どういうわけか聞けなかったのよ
ね。
「どうしたんだよ、シンジ?中は見ないのか?」
その時、相田がナイスな質問をしたんだけど、シンジは首を横に振ったのよ。
「うん、あとでゆっくり見たいんだ。それじゃあ、駄目かな?」
シンジは、少し申し訳なさそうな顔をして、相田を見たの。もちろん、相田は考えるフリ
をして、アタシの合図を待ったわ。そこでアタシは、すぐにOKのサインを送ったのよ。
だって、今日の主役はシンジなんだし、シンジが少しくらいわがままを言ったっていいじ
ゃない。
「あ、いや。シンジの好きにしろよ。確かに、ここでいちいち開けていたら、シンジは何
も食べられなくなっちゃうからな。まあ、あとでゆっくりと開けてみろよ。じゃあ、次は
俺からだ。」
相田は、ナイスなフォローをしつつ、シンジにプレゼントを渡したわ。
***
「うわあ、このステーキ美味しいね。さっきの海老やロブスターも美味しかったな。こん
なご馳走を食べられるなんて、夢みたいだよ。」
みんなのプレゼントを受け取ってから、シンジは本格的に食べ始めたんだけど、ずっとに
こにこしながら『美味しい』を連発していたわ。料理を作った女の子達は、それを聞いて
とっても喜んでいたわ。
「ステーキはね、アタシが焼いたのよ。ちゃんと焼けていたかしら?」
アタシは、ちょっぴり心配して聞いたんだけど、シンジは飛び切りの笑顔で『いい具合に
焼けているよ』って言ってくれたのよ。アタシは、嬉しくて思わず涙が出そうになったわ。
「そやな、愛情が篭っているからのう。」
鈴原が笑って言うと、シンジはますますにこにこしだしたの。まあ、シンジが笑ったから
いいけど、そんな恥ずかしいことを言うなんて、普段だったら只じゃおかないんだからね。
「シンジは、本当に惣流のことが好きなんだなあ。」
今度は、相田が笑って言う。あのねえ、いくら本当のことでも、言っていいことと悪いこ
とがあるってわからないのかしら。まあ、シンジが本当に嬉しそうな顔をしているからい
いけどね。普段こんなことを言ったら、絶対にコロスからね
しかし、こいつ。心の底から楽しいっていうか、本当に嬉しそうな感じのよね。喜ぶとは
思ったけど、まさかここまでとは思わなかったわ。アタシは、シンジの邪気の無い笑顔を
見て、なんとなく満足していたの。
でもね、ちょっとぼーっとしていたみたい。それがいけなかったのかしら。いきなりアタ
シに話が振られたのよ。
「みなさーん、注目してくださーい!これから、シンジくんの恋人、惣流アスカさんから、
シンジくんに熱いキッスが送られまーす!」
アタシは、唖然としたわ。裏切ったわね、ヒカリ!アタシはこの時、復讐を誓ったわ。
つづく(第128話へ)
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あとがき
シンジの誕生日には1日早いですが、シンジ生誕記念ということで、久々の復活です。
ヒカリに嵌められて、シンジへのキスを嬌声されそうなアスカですが、果たして反撃はな
るでしょうか?
2008.6.5 written by red-x