新世紀エヴァンゲリオン 外伝 超少女アスカ
第128話
「みなさーん、注目してくださーい!これから、シンジくんの恋人、惣流アスカさんから、
シンジくんに熱いキッスが送られまーす!」
***
ヒカリは、大声でとんでもないことを言ったのよ。おかげで、シンジは満面の駅を浮かべ
ちゃって、今更やめることなんて出来そうにないわ。もしもアタシが断ったら、気の弱い
シンジのことだから、無茶苦茶落ち込んでしまいそうだわ。
ヒカリ……。あなたのことは親友だと思っていたのに、許せないわ。一体、アタシが何を
したっていうのよ。ヒカリに感謝されこそすれ、恨まれる筋合いなんか全くないもの。だ
からアタシは、反撃することにしたわ。
「ねえ、シンジ。みんなの前で二人だけでキスするなんて、恥ずかしいでしょ?」
アタシは、にっこり笑ってシンジに問いかけたの。するとシンジは、アタシがキスを断る
と思ったらしく。途端に暗い顔になって、俯いてしまったの。げっ、シンジ。人の話を最
後まで聞きなさいよね。
「でもね、お友達が一緒なら恥ずかしくないと思わない?」
アタシが優しく言うと、シンジは急に顔を上げて、にこにこしたわ。あのねえ、アンタ、
表情がころころ変わりすぎよ。
「うん、そうだね。その通りだよ。」
シンジは、激しく首を縦に振ったわ。アタシはそれを見てにやりと笑い、鈴原と相田の方
を向いたわ。
「鈴原!相田!シンジのご指名よ、彼女を連れて、こっちに来なさいよ。」
アタシは、にやっと笑ったわ。ヒカリとユキの顔が強張るのが、はっきりと見えたから。
***
「キース、キース、キース、キース……。」
部屋の中は、異常な熱気に包まれていたわ。それもそのはず。これから、キスをどれだけ
長く続けられるのか、競争を始めることになったからよ。
「ごめん、アスカ。許してちょうだい。」
ヒカリは、真っ青な顔になってぺこぺこ謝ったけど、今更遅いわよ。みんなの前でキスな
んてしたら、シンジが明日からアタシのファンにいじめられちゃうじゃない。そうなった
ら、ヒカリのせいなんだから。当然、罰を受けてもらわないとね。
「惣流さん、なんで私まで……。お願いします、許してください。」
ユキも、真っ青になっていたわ。ごめん、ユキ。確かにユキは悪くないけど、仲良しグル
ープで仲間外れにするなんて悪いでしょ。アタシ、こう見えても友達思いなのよ。だから、
もう諦めちゃいなさいよ。
「そうは言ってもねえ。ヒカリがキスしろって言ったのが原因なんだし。それにねえ、ユ
キはアタシ達の友達でしょ。アタシやヒカリを見捨てたりしないわよね。」
ヒカリに対しては、ちょっと怒ったような顔を向けて、ユキには申し訳なさそうな顔を向
けて、なんとか二人をなだめすかしたの。
「はあっ、口は災いの元ね。あんなこと、言わなければ良かったわ。」
ヒカリは、とうとう観念したみたい。がっくりと肩を落としていたけどね。
「とっても嫌ですけど、惣流さんや洞木さんにはいつもお世話になってますから。しょう
がないですかねえ。」
ユキもようやく諦めたみたい。盛大にため息をついていたけど。二人は、のろのろとペア
の前に向かったわ。これで、準備は整ったわ。
「じゃあ、始めるわよ。」
アタシが開始の合図を送ると、『ぶっちゅう〜』って音が聞こえたような気がしたわ。
***
どのペアが、一番長くキスを続けられるか。それを3ペアで競ったんだけど、普通にやっ
たらなかなか勝負がつかないわよね。だから、男の子が女の子を抱き上げる格好でキスを
することにしたのよ。で、女の子の足が床に着いたペアの負けにしたの。
これは、体力のあるペアに有利なルールなの。だから、アタシ達が最後まで残ったのは当
然なのよ。結果は、アタシ達が1位、ヒカリ達が15分で2位、ユキ達が10分で3位だ
ったわ。
最初に、相田がユキを支えきれずにリタイヤ。次に、ヒカリの腕が限界に達してリタイヤ。
アタシはかなり余裕があったし、シンジも、最近は随分体力が付いてきたから、まだまだ
平気だったみたい。
こう言うと、簡単に聞こえるかもしれないけど、実はそうでもなかったのよ。最近のシン
ジは、キスに慣れてきているから、人前だっていうのにかなりディープなキスをしてきた
のよ。アタシの口の中を、シンジの舌が好き勝手に暴れ回ったっていうわけなのよ。
そればかりか、シンジの右手がアタシのお尻を何度も撫で撫でしたわ。時には指が前の方
にまで来たりしたのよ。もちろん、アタシはシンジにしがみつくしかなかったから、抵抗
なんて出来やしない。目も合わせられないから、シンジに抗議も出来なかったわ。
これは、流石にアタシが迂闊だったとしか言えないわ。勝利を優先した結果、落とし穴に
気付かなかったのよね。でもね、なんだかもやもやしたこの気持を、どうにかしたいわね。
シンジをぶっ飛ばせばすっきりするんだけど、今日はそんなことは出来やしない。しょう
がない。持つべきものは、友達よね。えっと、なんだかこじつけのような気もするけど、
ユキにこの気持ちをぶつけるしかないようね。
「それじゃあ、罰ゲームにいきますか。」
アタシがニヤリと笑うと、ユキは怯えた顔でこっちを見るのよ。嫌だわ。そんな顔をされ
ると、罰ゲームのことを言いにくいじゃない。みんな、息を潜めて楽しみに聞いているっ
ていうのに。
「あの、アスカ。罰ゲームはやめにしない?」
アタシが口を開こうとした瞬間、シンジは罰ゲームをやめようって提案したの。がーん。
それじゃあ、頑張ったアタシが報われないじゃない。
「いいよね、アスカ?」
「うん、シンジがそう言うのならいいわ。」
でもね、シンジに見つめられると、断ることが出来なかったのよ。ユキ。あなた、命拾い
したわね。アタシは、ついつい舌打ちしそうになったわ。
つづく(第129話へ)
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あとがき
シンジにとって、最高のプレゼントはアスカとのキスでしょう。それも、みんなの前です
から、シンジは大喜びだったことでしょう。
2008.6.6 written by red-x