新世紀エヴァンゲリオン 外伝 超少女アスカ
第120話
「やったわね、アスカ!」
エヴァから降りたアタシを、ミサトは笑顔で出迎えたわ。
「当然でしょ。アタシとシンジが一緒に戦ったんだから。」
アタシは堂々と胸を張る。
「あっ、ミサトさん。僕、やりましたよっ!アスカの足を引っ張りませんでしたよね。」
そこに、シンジがニコニコしながらやって来たわ。ミサトも、もちろんニコニコよ。
「凄いわ、シンちゃん。奥さんの教育が良かったのかしら。」
「お、お、奥さんって…。」
シンジは、ミサトにからかわれて真っ赤になってしまった。
「ん、もうっ。あんまりシンジをからかわないでよね。」
アタシがふくれっ面をすると、ミサトはゴミンと謝った。
「そうだ、アスカにシンちゃん。今日はさあ、ぱあっと何かごちそうでも食べない?」
ミサトはアタシの方を見た。どっちに主導権があるのか分かっているわね。
「まあ、アタシはいいわよ。今日は楽勝だったから、あんまり疲れていないし。シンジは
どうなの?」
シンジは少し複雑な顔をしていたが、直ぐに承諾した。
「ええ、いいですよ。どこで何を食べるのか、僕達が着替え終わるまでに考えておいて下
さいね。さあ、アスカ。一緒に行こうよ。」
こうして、アタシ達は更衣室へと向かった。
***
更衣室に向かう途中で、シンジがおずおずと話しかけてきた。
「あのさ、アスカ。あの約束を覚えてる?」
「えっと、何の約束かしら。シンジとは色々と約束したでしょ。」
アタシは分かっていたけど、すっとぼけた。
「あのさ、敵を倒したらお祝いに一緒にお風呂に入る約束したよね。」
「ああ、そんな約束もしたわね。」
げっ。やっぱり覚えていたわけね。
「それって、今日でいい?それとも明日がいい?」
へっ。どういう意味かしら。
「アタシはどっちでもいいけど。何でそんなこと聞くのよ。」
「だってさ、ミサトさんが居るのに一緒にお風呂に入るのって、僕は平気でもアスカが嫌
がるかなあって思ったんだ。」
あのねえ。そんなこと当り前でしょ。ん、待ってよ。シンジったら、ミサトが居るのに堂
々と一緒にお風呂に入ろうって気なの。冗談でしょ。
「ちょっと待ってよ、シンジ。ミサトが居る時は嫌よ。」
「だったらさ、さっきは何で断らなかったの。約束のこと、忘れていたの?」
「うっ。そ、それは…。」
アタシは、何も言い返せなかった。
「勝ったその日に一緒にお風呂に入りたいに、決まってるよね。それにさっき、一緒にお
祝いしようねって言ったよね。それなのに、なんでいいって言ったさ。」
「ごめん、うっかりしてたわ。」
それは嘘。ミサトがいれば、シンジも一緒にお風呂に入ろうなんて言わないと思ったから。
「じゃあさ、一緒にお風呂に入るのは明日でもいいよ。だから、今日は一緒にシャワーを
浴びようよ。ねっ、いいでしょ。」
シンジはアタシをじっと見る。でも待てよ。ミサトが居ない時にシンジと一緒にお風呂に
入ったら、シンジが暴走する可能性が高いわ。でも、ミサトが居ると分かればシンジもむ
やみに暴走しないかも。これは迷うわね。でも、時間はないし。
「分かったわ。一緒にシャワーを浴びましょ。でも、いつ一緒にお風呂に入るかは保留ね。
それでいいわよね。」
「うん!」
シンジは、とっても嬉しそうな顔をしたわ。
***
結局、更衣室は女子の方を使うことにしたわ。だって、男子更衣室はいきなり男の人が入
って来る可能性が無い訳じゃないでしょ。
「えっと、シンジ。最初に髪の毛を洗いたいから、その時は別々でもいいかなあ。」
「そうだね。髪の毛を洗う時は、近いと不便だし。うん、いいよ。」
シンジの了解を得たから、アタシは最初に髪の毛を洗うことにしたわ。アタシって髪の毛
が長いから、洗うのって結構大変なのよねえ。
「アスカ、僕はもう洗ったよ。」
「アタシはもうちょっとだから、待っててよ。」
「うーん、分かった。でも、早くしてよ。」
「はーい。」
うわあ、シンジったら気が急いているのかしら。なんだか危険な感じがするわ。でもまあ、
アタシの方がまだ断然強いから、無理やりやられちゃうっていうことは無いとは思うけど。
でも、シンジをあんまり待たせるのも悪いから、アタシは急いで髪の毛を洗ったの。
「はーい、お待たせ。」
アタシは、後10数えたら入ってもいいよって言うつもりだったんだけど、間に合わなか
ったの。
「えっ、いいの。」
シンジは、アタシが言うと同時に入ってきたの。ちょっと、シンジ。急に入って来ないで
よね。おかげでアタシは、前を隠す暇が無かったじゃない。今更急に隠せないし、どうし
よう。
「うわあっ、やっぱりアスカって綺麗だなあ。」
やだあ、シンジ。あんまりジロジロ見ないでよね。恥ずかしいじゃない。でも、そんなこ
とは言えないわ。
「ふふふっ、ありがとシンジ。」
アタシはにっこり笑ったわ。でも、シンジの顔がなんだか変なのよ。
「アスカ!」
シンジはそう言うなり、アタシに抱きついてきたの。うっ、なんだかまずい展開ね。そう
思ったんだけど、アタシの考えすぎだったわ。
「アスカ、怖かったよ。本当に怖かったよ。僕、勝ったんだよね。あのバケモノに勝った
んだよね。」
なんて言いながら、シンジは泣きだしたの。あら、シンジったら泣くほど怖かったのかし
ら。だったら優しく慰めてあげないとね。
「ええ、勝ったのよシンジ。シンジが頑張ってくれたおかげよ。ありがとう、シンジ。」
アタシはシンジの背中に左手を回して、軽くさすってあげたの。で、右手はシンジの頭を
撫でてあげたわ。
「僕、アスカの役に立ったよね。」
シンジが不安そうに言うもんだから、アタシは優しく言ったわ。
「うん、そうよ。これからもお願いね。」
「これからも、あいつらに勝てるよね。」
シンジは、まだ不安そうな声だったわ。
「ええ、もちろんよ。シンジがアタシの言うことをきいてくれるなら、勝利は間違いない
わ。アタシを信じてね。」
「うん、分かったよ。アスカを信じる。」
シンジはそう言うと、アタシを強く抱きしめたの。
「どうしたの、シンジ。ちょっと苦しいよ。」
「ごめん。でも、今はアスカをこうして抱きしめていたいんだ。駄目かな?」
また、不安そうな声。
「ううん、いいわよ。それでシンジの不安が、少しでも解消されるなら。」
「ありがとうアスカ。大好きだよ。」
シンジは、顔だけを後ろに引いたわ。そして、アタシの目とシンジの目が合う。シンジの
目は、怯えた子猫の目みたいだったから、アタシはなるべく優しそうな笑顔を浮かべたの。
そうしたら、シンジの顔が近付いてきたわ。そして、アタシ達の唇が重なる。
でも、それで終わりかと思ったけど違ったわ。シンジの舌が、アタシの口の中に入ってき
たの。そして、アタシの口の中を蹂躙する。これって、ディープキスっていうやつよね。
まったく、シンジったら。成長著しいのは嬉しいけど、こっちの方面の成長はゆっくりで
良かったのに。アタシはそんなことを思いながら、シンジのなすがままにされていたわ。
つづく(第121話へ)
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あとがき
シンジは見事に使徒を倒しましたが、本当は怖かったんですね。でも、やせ我慢をして
いたと。それがアスカと二人きりになって、隠しきれなくなったようです。でも、シンジ。
ディープキスなんていつ覚えたのか。
2005.1.24 written by red-x