新世紀エヴァンゲリオン 外伝 超少女アスカ

第117話

「よおっ、アスカ。」 シンジが落ち着いた頃、加持さんがアタシ達に近付いて来たわ。そしたらシンジが加持さ んのところに駆け寄ったの。 「あっ、加持さん。あのっ、僕、大変なことをしちゃったんです。」 「ん、どうしたんだい、シンジ君。血相を変えちゃって。」 「あの、僕、さっき5人の男の子に大怪我をさせちゃったんです。早く病院に連れて行っ てください。」 シンジは真剣な表情だったけど、加持さんは笑っていたわ。 「ああ、それなら心配ないぞ。もう、彼らは病院に連れて行かれたよ。」 「そうですか。良かった…。それじゃあ、警察に連絡をお願いしたいんですが。」 「何をだい。」 加持さんは怪訝そうな顔をしたわ。 「だって僕、あんなことをしちゃったんですから、傷害罪とかで捕まりますよね。自首し ておけば、少しは罪が軽くなるんじゃないかと思って。」 なっ、シンジのバカ。でも、加持さんなら任せても大丈夫よね。 「あはははっ、シンジ君。君は一体何を言ってるんだ。」 「えっ、だって…。」 「じゃあ、聞くが。君は何か悪いことをしたのかい。」 「ええ。人を5人も殴ったり蹴ったりして、大怪我をさせてしまいました。」 「それは、何も罪のない人だったのかな。」 「ええ、そうかもしれません。」 「何もしていない人を、君の方からいきなり襲いかかって怪我をさせたと。」 「いえ、それは違います。あいつらは、アスカに酷いことをしようとしたんです。だから、 カッとなって…。」 「それじゃあ、君はいいことをしたんだよ。」 「えっ、そんなことないです。」 「アスカを守ることは、いいことではないと言うのかな。」 加持さんは、声を低くしてシンジを睨み付けたの。そしたらシンジは、ちょっとびびった みたい。 「…ひえ、違います。」 「じゃあ、シンジ君はいいことをしたんだよ。だって、そうだろう。アスカは世界を守る ために戦っているんだよ。そのアスカに危害を加えようとするのは、世界を滅ぼそうとす るくらい悪いことじゃないか。逆に、アスカを守ろうとすることは、世界を救おうとする 良いことなんじゃないかな。」 「そ、そうなんでしょうか。何か、釈然としません。」 「だが、おっとちょっと待ってくれ。」 加持さんは、携帯電話を取り出したわ。 「うん、どうした?えっ、なんだって!そうか、危なかったな。ああ、女の子は無事だ。 女の子の恋人が、体を張って守ってくれたからな。うん、そうだな。後で詳細な報告を頼 むよ。」 加持さんが電話を終えると、シンジは恐る恐る言ったわ。 「あの、危なかったってどういうことなんですか。あの男の子達の怪我が酷かったんです か。」 でも、加持さんは首を振ったの。 「いや、そうじゃない。危なかったのは、アスカだったんだ。」 「え…。どういうことなんですか。」 「実は、怪しいワゴンが止まっていたんで、運転手に銃を突きつけて調べてみたのさ。そ うしたら、ワゴンの中から手足を縛られて猿ぐつわをされた女の子が二人発見されてね。 これから警察で保護するところなんだ。」 「なっ、なにがあったんですか。」 「運転手の素性を調べたら、人身売買組織の者だって分かったんだ。その組織は、女の子 をさらって散々おもちゃにしたあげく麻薬中毒にさせて海外に売り払う、そんな外道な組 織なんだ。」 「…ひ、ひどい。」 「それで、どうやらシンジ君が倒した5人組が、女の子をかっさらう実行部隊だったよう だ。」 「それじゃあ…。」 「ああ。シンジ君がアスカを守らなければ、アスカはさらわれて、変態どもに好き放題さ れていたかもしれない。」 「はははっ、それは大丈夫ですよ。アスカは強いですから。」 「いや、分からないぞ。揮発性の催眠ガスで眠らされてしまった可能性は、十分にある。 いやあ、シンジ君はお手柄だったよ。傷害罪どころか、表彰ものだよ。」 「じゃ、じゃあ…。」 「もちろん、シンジ君が罪を問われることはない。エヴァのパイロットではなかったとし てもだ。」 「ふうっ、良かった…。」 シンジは、肩の力を抜いたわ。 「シンジ君、君は人に誉められる良いことをしたんだ。もっと自信を持つんだ。シンジ君 は一瞬にして相手が外道だということを見抜き、天誅をくだしたんだ。もし、シンジ君が 戦いを避けて逃げていたら、アスカは助かったかもしれないが、二人の女の子の人生は終 わっていたんだ。」 「ぼ、僕がいいことをしたなんて、信じられません。」 「だが、事実だ。君は、正しい力を行使することにより、悪い奴らを懲らしめた。そして、 守るべきか弱い者を助けたんだよ。いやあ、さすがシンジ君だ。アスカが選んだ男だけの ことはある。」 「えっ、アスカが…。」 そう言った瞬間、シンジの顔は真っ赤になったわ。 *** その後、結局アタシ達は昨日と同じように優勝したわ。シンジが絶好調になって、面白い ように勝てたからね、きっと。 でも、それは嬉しかったんだけど、困ったことが起きたわ。そう、またアタシの家で祝勝 会が開かれることになったのよ。 それもね、昨日と同じで焼き肉がいいってみんなが言うのよ。いくらなんでも3日連続っ ていうのはねえ。 「ねえ、シンジ。3日連続で焼き肉なんて嫌よね。」 「ううん、構わないよ。」 げっ。駄目か。 「ねえ、ヒカリ。ヒカリは嫌でしょ。」 「それが、鈴原がまた食べたいって何度も言ってるの…。」 うっ。女の友情も、もろいものなのね。 「ねえユキ。ユキは嫌でしょ。」 「すみませんけど、私は妹達の面倒を見ないといけないので、参加出来ないんです…。」 あっ、そうか。ユキは土日連続で家を空けるのはまずかったのよね。こりゃあ、悪かっ たわね。 「じゃあさ、妹さん達を連れて来なさいよ。」 「えっ!いいんですか!」 たちまちユキの顔が明るくなったの。はあっ、これで3日連続の焼き肉が決定ね。まあ、 アタシは昨日はステーキだったから別にいいか。アタシは、また加持さんに電話をするこ とになったわ。 つづく(第118話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき  なんと、シンジのおかげで二人の女の子の人生が救われたようです。   2004.11.18  written by red-x



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