新世紀エヴァンゲリオン 外伝 超少女アスカ

第118話

大会の翌日、学校ではテニス部の話で持ちきりだったわ。男子、女子、混合のいずれも地 区大会優勝なんて大活躍は、近年まれに見る快挙だったようね。 もちろん、勝ったのはアタシが入部したからだから、アタシがスポーツ万能だっていう話 もかなり広まったらしいわ。アタシがとびっきりの美少女だっていうのは誰もが知ってい た−見ればすぐ分かるわよね−みたいだけど、スポーツ万能だっていうのは知らない人の 方が多かったみたい。 その余波で、朝からアタシの周りには人だかりが出来てしまったの。その殆どが他のクラ スの女の子だったから、アタシも無下に出来なくて困ったんだけどね。 「惣流さん、凄かったですねえ。」 「ドイツでもテニス部に入っていたんですか。」 「私、惣流さんに憧れちゃいます。」 「私もテニス部に入りたいです。」 「とっても格好良かったですう。」 「お姉様と呼んでいいですか。」 なんて調子で、皆が勝手なことを言っていたわ。一部、聞き流すとまずいセリフがあった ようだけど、そんなのは無視したわ。アタシは怒ることも出来なくて、愛想笑いを浮かべ ていたの。 「あの、アスカ。ちょっといいかな。」 そこにシンジが話しかけてきたの。あら、シンジったら気が利くじゃない。アタシがシン ジの方へ行こうとしたら、周りの連中がシンジを睨みだしたの。 「なによ、あなた。惣流さんは今忙しいのよ。」 「そうよ、そうよ。後にしてよ。」 「ふん、いけすかない奴ね。」 「バン!」 そこでアタシは机を軽く叩いたわ。そうしたら、結構大きな音が出て皆びっくりしてアタ シの方を振り向いたの。そこでアタシは言ってやったわ。 「シンジはね、アタシのフィアンセなのよ。一応言っておくけど、アタシからシンジを取 ろうとしたりシンジに危害を加えたり悪口を言う人は、アタシに死ぬほど嫌われるから。 アタシ、そんな人は間違えてラケットで思いっきり殴って頭をカチ割るかもしれないから、 良く覚えておいて。シンジのことになると、アタシは人が変わるから。」 そしたら、周りの人は青ざめて引いちゃったの。 「シンジの敵はアタシの敵、シンジの味方はアタシの味方だから。それさえ分かってもら えればいいわ。皆さん、分かっていただけたかしら。」 アタシがにっこり笑って言うと、みんな首をカクカクしながら頷いたわ。 *** お昼休みになって、アタシ達はいつものメンバーでお昼を食べたわ。 「はーっ、ユキ。今日は参ったわ。なんか知らないけど、女の子が一杯群がってきちゃっ て大変だったのよ。ねえ、シンジ。」 「うん、凄かったね。アスカの側にはなかなか近寄れなくて、大変だったよ。」 シンジが何度も頷く。 「そうですか、惣流さんも大変だったんですね。私の方も入部希望者が大勢押しかけてき たんですよ。断るのに苦労しました。」 ユキも、なんだか疲れた様な顔をしていたわ。 「でもさあ、なんだか凄いわよね。男女共に県大会に出るなんて。アスカのおかげよね。」 ヒカリが位雰囲気を打ち破るべく明るく言うと、鈴原も頷く。 「うん、そうかもしれん。少なくとも惣流のおかげで女子と混合が県大会に出れたんや。」 相田もウンウン頷いた。 「そうだよ、惣流は本当に凄いよな。県大会でもどんどん勝ち進んでくれよ。皆で応援す るからさ。」 そして、シンジも。 「そうだよ、アスカ。頑張ろうよ。」 ふふふっ、みんなアタシを気遣ってくれるのね。とっても嬉しいわ。 「ええ、分かったわ。アタシ、精一杯頑張るから。」 おそらく、シンジ以外はアタシが言った意味が分かっていない。もちろんテニスでも頑張 るけど、皆の命を守るために戦うことを改めて誓ったの。そう、アタシ達が戦って負ける と、少なくともこの第3新東京市の皆の命は失われる。もちろん、この場の全員の命も。 こののどかな一時も、何気ない日常も、皆の笑顔も、サードインパクトが起きれば全て失 われてしまうのよ。そんなこと、絶対に認めない。アタシの命に代えても、絶対に守り抜 いてみせるわ。 「うん、アスカ。一緒に頑張ろうよ。」 シンジが微笑む。こいつ、分かってくれたみたい。最初に会った時よりも、なんだか大き く見えるわ。バカで、スケベで、意気地無しで、優柔不断で、騙されやすくて、根性無し で、流されやすくて、力も弱いし、すぐ泣くし、優しいだけが取り柄のようなどうしよう もないバカ野郎だったけど、それも既に過去のことになりつつあるわ。 地獄の特訓に耐えているし、ヤクザに果敢に立ち向かったし。海で飛び込んで死のうとし たり、バカ男ズに一撃で倒されたりした時には見捨てようかと思ったけど、クズ男ズに立 ち向かった時のシンジは頼もしかったわ。 このままシンジが頑張ったら、結構戦力になるんじゃないかしら。アタシの予知夢の中の サイテー男のシンジでさえ最強の戦力だったんだから、凄まじいほどの力を発揮するかも ね。 なんてことを考えていたからかしら。携帯電話で呼び出しがかかったわ。 「シンジ、行くわよ。」 アタシはすっくと立ち上がった。 「うん、行こうアスカ。みんなには悪いけど、急用が出来たから僕とアスカはこれで失礼 するよ。お昼はこれでおしまいにしたい。もうすぐ非常事態宣言が発令されるから、みん なは早くシェルターに避難してよ。」 それを聞いて、皆は目が点になったわ。 「碇、惣流、お前達はもしかして…。」 相田は何か気付いたみたい。おっと、釘を刺しておかないとね。 「ヒカリ、ユキ。鈴原君と相田君がシェルターから出ない様にしっかり見張っておいてね。 下手に出ると死ぬから、絶対に目を離さないでね。」 「ええ。」 「はい。」 「じゃあね。」 「また後で。」 アタシとシンジは、一目散に駆けだしたわ。 つづく(第119話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき  やっと第4使徒シャムシェルが出現します。でも私は戦闘シーンの描写が出来ないので、 戦闘はさくっと終わるでしょう。   2005.1.17  written by red-x



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