新世紀エヴァンゲリオン 外伝 超少女アスカ

第101話

「シンジ!起きなさいよっ!」 旅行の翌日で結構辛かったけど、アタシはなんとか朝早く起きることができたの。それで、 旅行に行っている間休んでいた特訓をすることにしたのよ。当然シンジはぐっすり眠って いるから、叩き起こすしかないっていう訳なのよ。 「えっ、もう朝なの…。もうちょっと寝させてよ。」 シンジは目をこすっているわ。まだ半分寝ているみたい。もうっ!しょうがないわねえ。 「駄目よっ!特訓は一日たりとも休んじゃいけないのよっ!」 当然よね。何でこんなことが分からないのかしら。 「でもさ、昨日も一昨日もしなかったじゃないか。」 むっ。シンジの奴、屁理屈こねてしょうがないわねえ。 「そういうことを言うなら、休んだ分を上乗せするわよ。いいの?」 「い、いえっ!結構ですっ!」 ちょっと脅したら、シンジは飛び起きたわ。なんだ、やれば出来るんじゃない。 「シンジ、行くわよっ!」 アタシ達は簡単に腹ごしらえをしてから特訓を開始したわ。 *** 「やあっ、おはよう。」 公園の側を通り掛かったら、ユキのお父さんが声をかけてきたわ。 「あっ、おはようございます。」 「おはようございます。」 ふうっ、元気そうで良かったわ。ユキのお父さん、どうやらうまくいっているみたいね。 でも、一体こんなところで何の用かしら。まさか、まだ借金取りに追われているんじゃな いでしょうね。アタシはちょっとだけ心配になったけど、考えすぎだったようね。ユキの お父さんがこう言ったもの。 「今日は、お礼を言おうと思って待ってたんだ。君たちと出会ったからというもの、良い こと続きでね。ヤクザ達からの借金の取り立ては無くなったし、何とか会社に融資してく れる人が見つかったし、新しい仕事の発注も回ってきたし。君たちと出会ってから運が向 いてきたようなんだ。」 「そんな、お礼だなんて。あまり気にしないで下さい。」 シンジが頭を掻きながら言うと、おじさんは少し真面目な顔をしたわ。 「実は、聞いておきたいことがあるんだが。君たちは、そのお、恋人同士なのかな。それ ともきょうだいなのかな。」 「えっ、どうしてそんなことを聞くんですか。」 シンジは少し戸惑っているようね。少し声がうわずっているもの。それに気付いたユキの お父さんは、にっこり笑ったの。 「私の娘は結構綺麗なんだが、君みたいにしっかりした少年と付き合ってくれたらって、 そう思ってね。」 な、なんですって!冗談じゃないわ。そんなことしたら、相田はユキに振られちゃうじゃ ない。じゃなくって、アタシの計画が丸潰れじゃない。 「あの、僕達は…。」 シンジがおずおずと言おうとしたんだけど、アタシが遮ったわ。 「恋人ですっ!将来結婚する約束もしてますっ!だから、誰にもあげませんっ!」 アタシが大声で言ったもんだから、おじさんは少々面食らったみたい。むろん、シンジも ね。でも、おじさんは割合直ぐに立ち直ったわ。 「あっはっはっ。こりゃあ、一本取られたよ。ごめんよ、助けてもらったのに恩をアダで 返すようなことを言ってしまって。言われてみれば、お似合いのカップルだよ、君たちは。 でもね、もしやと思って聞いてみただけなんだ。気を悪くしないで欲しい。」 「ええ、いいですよ。アタシもちょっと大声を出してごめんなさい。でも、娘さんには、 他に好きな人や付き合っている人がいるかもしれないじゃないですか。それは聞いたんで すか。」 「面目無い。聞いていないんだ。」 「そういうことは、本人にそれ位のことは確かめてからにすべきですよ。娘さんが良い男 の子を探しているっていうならともかく、そうじゃなければ余計なお節介になりますから。 そんなことは止めた方がいいですよ。」 「ああ、分かったよ。悪かったね。」 「いえ、いいんです。では、アタシ達はこれで失礼します。またアタシ達に会いたくなっ たら、毎朝この辺を走っていますから声をかけてください。」 「ああ、分かった。それじゃあ、本当にありがとう。」 アタシ達がおじさんに別れを告げると、走ってその場を去ったわ。で、しばらく走った後、 シンジがニヤニヤしているのに気付いたのよ。アタシが問い質すとシンジはこう言ったわ。 「あの、アスカが僕のこと『誰にもあげませんっ!』って言ったじゃないか。その時のこ とを思い出すと、なんか嬉しくって。」 げっ。アタシったらなんて恥ずかしいことを言っちゃったのかしら。 「う、うっさいわねえ。そんなこと、今すぐ忘れなさいよね。」 「ううん、忘れないよ。だって、凄く嬉しかったんだもん。」 そうしてシンジははち切れんばかりの笑顔を浮かべたわ。 *** 「アスカにシンちゃん。ちょっと話がるんだけど。」 家に帰ったら、ミサトに呼び止められたわ。ちょっと、冗談じゃないわ。早く朝食を済ま せないと、学校に遅れるじゃないのよ。アタシの頬は盛大に膨らんだわ。 「ア、アスカ。怒らないでよ。すぐに済むから。それに、食べながらでいいからさあ。」 「あっそ。ならいいわ。ちょっと待ってて。」 アタシはちゃちゃっと朝食の準備をして、シンジと一緒に食べ始めたの。そしたらミサト が口を開いたわ。 「あのね、エヴァのパイロットがもう一人いるっていう話を覚えているかしら。」 「いえ、覚えていません。」 シンジは申し訳なさそうに言ったわ。 「ううん、いいのよ。そのパイロット、綾波レイっていう子がね、今日から登校するのよ。 だから、出来れば仲良くしてあげてほしいの。」 「はい、分かりました。」 「アタシもOKよ。」 「良かったわ。ちょっと変わった子だから、最初は戸惑うと思うけど。いい子だから仲良 くしてあげてね。」 「はい。」 「任せておきなさいよ。」 とは言ったものの、どうしようかしら。でも、悩んでもしょうがないから、当たって砕け 散れよね。 とはいえ、アタシは一抹の不安を感じていたわ。 つづく(第102話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき  さて、ようやくレイが登場します。果たして、レイとの出会いはどうなるのでしょうか。   2004.2.13  written by red-x



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