新世紀エヴァンゲリオン 外伝 超少女アスカ
第20話
「何言ってるのよ。変なシンジ。」
アタシは、そう言って、プッと吹き出したわ。そうしたら、シンジったら、頭を掻いちゃ
って、何か変だったけど、さわやかな笑顔だったわ。
そんな感じで、お昼の和やかで楽しいひとときは、過ぎていったの。
***
「さあて、午後も頑張るわよ。」
アタシはやる気満々だったわ。でも、シンジは違ったの。
「ええっ、もうちょっと休もうよ。」
「何言ってるのよ。敵はいつ攻めて来るのか分からないのよ。だから、時間を惜しんで特
訓しないといけないのよ。」
そう言いながら、アタシはシンジの目がアタシの目を見ていないことに気付いた。良く見
ると、シンジの視線は、アタシの胸の辺りに向いていたの。そこで、ちょっと気になって、
アタシは自分の胸を見てみたの。すると…。
「なっ、なにこれ〜っ!シンジったら、道理でアタシを見ていると思ったら、こういう訳
だったの〜っ!」
そう、なんとアタシの着ているものは、汗に濡れて透けていたの。
「もう〜っ、シンジのドスケベ!」
アタシは頬を思いっきり膨らませたわ。そう、アタシはすっかり忘れていたんだけれど、
アタシが身に着けているスポーツブラは、シンジを悩殺するために、汗に濡れると透け易
い素材を使っていたのよ。
だから、シンジからは丸見えになっていたって訳。それでシンジはアタシの方を見ながら
ニコニコしていたって訳ね。やっぱりシンジも年頃の男の子。きっとドキドキしながらも
喜んで見ていたのね。アタシはそこで良いことを思いついたわ。
「酷いわ、シンジ。アタシ、お嫁に行けない体になっちゃったわ。」
そう言って、両手で顔を覆ってイヤイヤってしたの。ちょっと見え見えだったけど、多分
シンジには有効ね。ふふふっ。案の定、シンジの顔が真っ青になったわ。
「ア、アスカ、ごめんね。本当にごめんね。」
シンジは見るのも可哀相な位、オロオロしたわ。この時アタシは確信したわ。今なら落せ
ると。チャーンス!
「もう、イヤッ!男なんて信じられないわっ!シンジだけは信じていたのにっ!」
あっ、これはダジャレじゃないのよ。シンジてね、なんちゃって。
「ごめんね。本当にごめんね。どうしたら許してくれるの。」
シンジは本当に困った顔をして、泣きそうだったわ。
「アタシ、お嫁に行けなくなったのよっ!責任取ってよっ!」
「でも、どうしたらいいの?」
「アタシをもらってくれる人を見つけてっ!今すぐよっ!」
「そ、そんなこと急に言われたって…。む、無理だよ。」
「あっ、そうなのっ!この部屋には、女の人しかいないのっ!そういうこと言うのっ!」
「えっ、だって、ここにいる男って、僕しかいないけど。えっ、もしかして…。」
「あと5秒だけ待つわ。5秒待って、誰かがアタシをもらってくれるって言わなかったら、
絶対に許さないからっ!5・4・3・2・1・0。」
今時こんな手に引っかかるなんて、信じられないけどね。アタシが言い終わると同時だっ
たわ。シンジがこう言ったの。
「ぼ、僕で良ければ、もらいたいなあ、なんてね…。」
ムッ。もっとちゃんと言いなさいよ。ちょっと頭にきたけれど、そこは抑えて、アタシは
ハッとしたような顔をしてシンジを見たの。そして、少しずつ驚きの顔を笑顔に変えてい
ったのよ。きっとうまくいったと思うわ。だって、この時のために、何百回も練習したん
だもの。
「えっ、今何て言ったの。もし聞き違いだったら悲しいから、もう1回言って。」
その瞬間、アタシは『ラブリー・ティアー』と『エンジェル・フェイス』を同時に発動し
たの。きっと物凄い効果だったと思うわ。だって、あのシンジがこう言ったのよ。
「ア、アスカ、大好きだ。僕と結婚して欲しい。」
「嬉しいっ!シンジ、大好きっ!」
アタシはそう叫びながら、シンジに飛びついて、思いっきり…じゃなくてちょっと強めに
抱きしめたわ。えっ、何でかって。アタシが思いっきり抱きしめたら、シンジの背骨が砕
けるからよ。アタシって、結構力が強いのよ。
「ア、アスカ…。」
「嬉しいっ、嬉しいっ!」
そしてアタシはトドメに『エンジェル・キッス』を使ったの。それは、神の力を借りて、
我が身に天使を降臨させるの。そして、その天使の力を極限まで引き出して、その強大で
特殊なエネルギーを口移しで相手の体内に直接注入するのよ。その特殊なエネルギーによ
って、どんな男の心も自由に操ることが出来るの。
こうして、10分位の間、アタシとシンジはぴったりとくっついて微動だにしなかったわ。
そして、その間、天使のエネルギーがシンジに流れて行ったのよ。これで、しばらくの間、
シンジはアタシの思うがままね。
「シンジ。今言ったこと、信じてもいいのね。嘘じゃないわよね。」
「うん、本当だよ。今すぐには無理だけど、大人になった結婚したい。」
「じゃあ、証しが欲しいの。アタシって弱い女だから、シンジが目の前にいないと不安に
なると思うの。そんな時、二人の絆となるような物を身につけておきたいの。」
けっ。我ながら良くこんなクサイセリフが言えるわね。
「えっ、絆って…。」
「ほら、結婚の約束をすると、女性は何かを身に付けないかしら。」
「あっ、ああ。もしかして、婚約指輪とか。」
ほっ、良かった。もしシンジが婚約指輪のことを知らなかったら、話がぶち壊しだもの。
「えっ、婚約指輪をくれるの?嬉しいっ。」
アタシはそう言いながら、極上の笑顔を浮かべたの。これでシンジは後には引けなくなっ
たわね。
「で、でも、僕はお金なんて持っていないんだ。」
あら。じゃあ、お金があったらいいのね。
「大丈夫よ。エヴァのパイロットは給料がもらえるのよ。それにこの市内だったら、ネル
フの身分証明書がカード代わりに使えるわ。じゃあ、善は急げって言うわ。今直ぐに行き
ましょうよ。」
「えっ、訓練はいいの?」
「あっ、そう。シンジはアタシとの絆が欲しくないのね。アタシが誰か他の男のものにな
ってもいいのね。」
「イヤだっ!絶対にイヤだっ!」
まあ。シンジったらムキになって。アタシに本気で惚れたわね。良い傾向ね。
「じゃあ、早速行きましょうよ。」
こうして、アタシとシンジは訓練を中止して、宝石店へ行くことになったの。
つづく(第21話へ)
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あとがき
訓練よりも、シンジの心をゲットすることを優先するアスカ…ではありません。エヴァ
のパイロットは、多少の訓練よりも、シンクロ率の向上、即ち心の安定が必要なのです。
だから、シンジの心を安定させるのは、立派な訓練の一環なのです。多分…。
2002.5.14 written by red-x