新世紀エヴァンゲリオン 外伝 超少女アスカ

第19話

「ちょ、ちょっと、シンジ。今は特訓の途中でしょ。休んじゃ駄目よ。」 「あっ、そうか。ごめんね。」 「まあ、良いわ。これからもっと頑張りましょう。」 こうして、特訓はまだまだ続くのよ。 *** 「さあて、ちょっと休んだから、シンジの体力は回復したわよね。次は、本番に近い形で やるわよ。」 「えっ、どうするの。」 「良く考えて。エヴァに乗って敵と戦うとするでしょ。仮に柔道の技をかけるとすると、 今とどの条件が違うかしら。」 シンジはちょっと考えると、こう言ったわ。 「えっと、使徒っていうのは、柔道着なんか着ていないよね。」 「そうよ、大当たり。流石はシンジね。最初は投げる感覚を掴む為に、柔道着を着たけれ ど、本番とは条件が違い過ぎるわ。相手が柔道着を着ていないと技が使えない、なんてこ とになったら一大事だから、柔道着は脱いでね。」 「えっ、でも、上半身裸でやるの?」 「そうよ。Tシャツを着てもまずいのよ。何か文句ある?」 「ううん、無いけど。でも、ちょっと恥ずかしいかな、なんて。」 「じゃあ、アタシも上半身裸になろうか。アタシなら良いわよ。どうする、シンジ。」 アタシはそう言いながら、シンジの顔を覗き込んだ。するとシンジの顔は、真っ赤になっ ていた。 「ううん、いいよ。恥ずかしくて、練習出来そうに無いから。」 「あら、良い心がけね。じゃあ早く脱いでね。アタシも着替えるから。」 アタシは、柔道着を脱いで、さらに上半身に身につけているものを一旦全部取り外した。 そして、代わりに上半身には、特注のスポーツブラを着た。えっ、何でさっきは着なかっ たのかって。もちろん着ていたけど、さっきまで着ていたのは、柔道用のもので、上に柔 道着を着るのを前提にしていたものなのよ。だから交換するのよ。 スポーツブラというのは、胸の靱帯損傷を防ぐ役割と運動性を向上させる役割とがあるの。 これはどちらかというと、機能性を第一に考えたもので、見たことが無い人のために簡単 に説明すると、ビキニの水着の上の部分と考えてもらえばいいわ。 どんなものか知りたい人は、『レーサーバック スポーツブラ』で検索をかけると良いわ。 これは、肌にぴったりとくっついているため、柔道着と違って掴むところがあまり無いの。 これがTシャツだと、首の辺りを掴めるんだけど、そういうことがあまり無いため、より 実戦向きなのよ。 ちなみに、色はアタシの好きな赤ではなく、白なの。だから、今のアタシは、上下とも白 いものを身に付けているってわけよ。 「さあて、じゃあ、一本背負い、50本よ。」 「うん、分かったよ。」 シンジは、今度は掴むところが無いため、最初はちょっと手間取っていたけれど、直ぐに 慣れて、さきほどと同じように技をかけることが出来るようになったわ。 「いくよっ、アスカっ!」 「さあ来い、シンジ!」 こうして、アタシはシンジの一本背負いを受け続けた。もちろん、全て華麗な受け身をと ったのは、言うまでもないわ。 シンジの技を受けながら思ったのは、やはりアタシの目論見通り、体が密着するというこ とよ。シンジがアタシの手を掴む時、アタシを背中に背負う時、投げた後、いずれも体の 一部が密着するの。 おそらく、シンジの顔が赤いのは、疲れて体が熱くなっているせいばかりではないわよね。 美少女である、このアタシと肌を接するのが恥ずかしくて、そして嬉しくって、顔が赤く なっているのよ。 「えひっ、これで50本目だ。」 そう言いながら、シンジはアタシを投げたわ。アタシはまたもや華麗な受け身によって、 ノーダメージだったけれど、シンジは疲れ切ったのか、肩で息をしていたわ。 「さあて、シンジ。次はアタシが技をかける番よっ。」 「えっ、ちょっと待ってよ。疲れたから、ちょっと休ませてよ。」 「何言ってんのよ。戦っている最中は、休めないのよ。敵が待ってくれると思うの?分か ったら、休まずにやるわよ。」 「ひいいいいっ、お助け〜っ。」 「甘〜いっ。誰も助けになんか来ないわよ。良いわねっ。」 アタシは目を輝かせて、シンジに迫った。 ** 「アスカったら、酷いよ。もう、疲れて動けないよっ。体中、痛くてたまらないよ。」 12時頃になると、シンジはぐったりして、動けなくなっていたわ。良く見ると、上半身 の所々に青痣が出来たり、赤くなっていたりしたの。 「ごめんね、シンジ。アタシ、シンジがアタシのために頑張るって言ってくれたのが嬉し くって、つい…。」 アタシはそう言いながら、俯き、今にも泣きそうな雰囲気を漂わせた。すると…。 「あっ、そ、そんなつもりじゃないんだ。別にアスカのことを責めているんじゃないんだ。 そ、そうだよね。アスカは僕のためになるだろうから、特訓してくれるんだよね。本当は、 アスカも辛いはずなのに。ついつい疲れちゃったから、変なこと言って、ごめんね。」 あら、シンジの方から謝ってくるなんて。しめしめ、これはアタシに惚れたな。 「ううん、いいのよ。分かってくれれば。それに、もうお昼だから、ご飯にしましょう。 シンジ、食欲はある?」 「うん、お腹が空いちゃった。背中とお腹がくっつきそうだよ。朝にあんなに食べたのに、 嘘みたいだ。」 「そりゃそうよ。これだけ運動したんだもの。見て、シンジ。畳が汗で濡れているでしょ。 あの汗は、みんなアタシとシンジが流したものなのよ。」 そう言って、アタシは畳みの上に幾つか出来ている、小さな水たまりを指したわ。 「へえっ、すごいね。こんなに汗をかいたんだ。あっ。」 シンジはいきなり動きが止まったわ。 「ん、どうしたのよ、シンジ。」 「う、うん、なんでもないよ。それよりも、お腹が空いちゃった。早く食べられるものは ないの?」 あれ、何かシンジの挙動がおかしいわね。でも、アタシも少し疲れていたのか、直ぐにそ の疑問は頭から消え去った。 「そうねえ、焼きそばなら直ぐに食べられるわよ。作り置きを暖めるだけでいいわ。」 「じゃあ、それでいいや。」 「でも、それじゃあ栄養が偏るから、ポテトサラダも食べるのよ。それに、もう一品位は 作ろうかしら。」 「いいよ。それより早く二人で食べようよ。」 あら、シンジったら、嬉しいことを言うじゃない。アタシは反対する理由も無かったから、 冷蔵庫に入れておいた焼きそばをレンジに入れて、チンしたわ。それから、ポテトサラダ と牛乳を冷蔵庫から出して、シンジと一緒に食べたの。 「わあ、一杯あるね。」 そう、焼きそばは、念のため、3食入りのを3袋分作っておいたの。それを3皿に分けて おいたのよ。とりあえずは、1皿だけ出したけど、アタシの作る焼きそばは、肉や野菜が てんこ盛りだから、3食分と言っても、結構量は多いのよ。アタシ一人だと、6食分って とこかしら。 「あと2皿あるから、一杯食べても大丈夫よ。」 「うん、いただきます。」 「いただきます。」 こうして、アタシとシンジは、向かい合わせになって、ダイニングのテーブルで食事を摂 ったわ。シンジったら、特訓から解放されたからか、それとも、アタシと一緒にいるのが 嬉しいのか、本当に嬉しそうにニコニコしながら食べているわ。 「シンジ、何がそんなに嬉しいの?特訓は午後もあるのよ。」 「えっ、も、もちろん、ほっと一息付けたからだよ。け、決してアスカが可愛いからじゃ ないよ、っていうのは違うね。アスカは可愛いから。う〜ん、何て言ったらいいんだろう。 良く分からないや。」 「何言ってるのよ。変なシンジ。」 アタシは、そう言って、プッと吹き出したわ。そうしたら、シンジったら、頭を掻いちゃ って、何か変だったけど、さわやかな笑顔だったわ。 そんな感じで、お昼の和やかで楽しいひとときは、過ぎていったの。 つづく(第20話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき  苦しい特訓も一休み。ほっとしたシンジの笑顔ですが、それがいつかは崩れるでしょう。 2002.5.5  written by red-x