新世紀エヴァンゲリオン 外伝 超少女アスカ

第18話

こうして、朝は軽く走って体をあっためたから、これからが本当の特訓の始まりなの。 ふふふっ、シンジ、覚悟しなさいよね。あなたは、これから何度も悲鳴をあげる破目に なるのよ。 アタシはそう思いながらも、シンジに向かって笑顔を向けていたわ。何も知らないシン ジは、ちょっと幸せそうな顔をしているわ。もうすぐ、その顔が歪むなんて、本人は、 想像すらしていないでしょうね。 *** 「さあ、次の特訓よ、シンジ。頑張ろうね。」 ミサトを送り出してから、アタシ達は次の特訓に移ることにしたわ。場所は、同じマン ションの同じフロアーで、部屋を全部ぶち抜きにしてあって、畳が敷いてあるの。何を するかって?そう、柔道の受け身をするのよ。 アタシはスポ−ツブラの上にTシャツを着て、その上に柔道着を着たわ。もちろんシン ジは普通に柔道着を着ているけどね。あら、こうやって見ると、シンジって線が細いっ て良く分かるわね。もっとお肉を食べさせないとね。 「さあ、シンジ。これから、受け身をするわよ。やり方は分かるかしら。」 「うん、前の中学校の授業でやっていたから、大体分かるよ。」 「そう。じゃあ、後ろ受け身を100回ね。その後、前回り受け身を100回やって頂 戴。その後は乱取りにしようかしら。」 「うん、分かったよ。」 シンジは返事をすると、黙々と受け身をやり出したわ。それを見ながら、アタシは自分 のためのメニューをこなしたの。ホログラム相手に、模擬格闘戦をしたのよ。 今回の仮想敵は、空手のヨーロッパのジュニア選手権の優勝者よ。その敵を、さらに3 割増しの強さに設定したの。はっきり言って、強いわね。でも、アタシの敵じゃなかっ たわ。大体、平均3分に1回の割合で倒すことが出来たもの。 そうこうしているうちに、シンジの受け身が終わったみたいね。シンジから声をかけて きたわ。 「アスカ、受け身は終わったよ。」 「じゃあ、乱取りね、と言いたいところだけど、気が変わったわ。シンジ、技をかける のと、かけられるのと、どちらが良い。」 「どっちでも良いよ。」 「そう、じゃあシンジから技をかけて。最初は手技から行くわよ。背負い投げ、一本背 負い、それぞれ50本よ。」 「えっ、そんなに投げるの?」 「そうよ、最初は感覚を掴むのよ。遠慮は無用よ。もし、いい加減にやったら、金的蹴 りを食らわすからね。」 「そ、そんな、嫌だよ。」 シンジは嫌そうな顔をしたわ。あら、金的蹴りって、そんなに嫌なものかしら。今度、 誰かで試してみようっと。 「真面目にやれば大丈夫よ。心配しないで。」 「うん、分かったよ。じゃあ、行くよ。えいやあっ!」 シンジが気合をかけて技をかけてきたわ。アタシは、シンジが投げやすいような体勢を とってあげたの。そうしたら、シンジは割合うまく技をかけてきて、アタシは宙を舞っ たわ。 「バシンッ!」 アタシは投げられると、華麗に受け身を取って立ち上がったの。 「わあ、アスカったら、受け身がうまいね。」 「お世辞はいいから、あと49本よ。休まず続けてやるのよ。」 「うん、分かったよ。えいっ!」 こうして、アタシは30分で100回投げられることししたたの。シンジは、最初は元 気だったけど、最後の方はへたってきていたわ。 「なによっ、もっと頑張んなさいよっ!」 「う、うん、頑張るよ。」 こうして、シンジはなんとか100本やり切ったの。 「さあて、お次はアタシの番ね。」 「うん、お手柔らかに頼むね。」 「まあ、任しておきなさい。アタシの華麗な投げ技を披露するわ。やあっ!」 アタシは、シンジを掴むと、5分の力で投げたわ。 「いってえっ!アスカ、痛いよっ!」 「うまく受け身を取れば、痛くないのよ。痛くならないように、自分で工夫しなさいよ。 良いわねっ。」 「ええっ、そんなあ。」 「問答無用っ!とりゃあっ!」 「うわあああっ!」 こうして、哀れシンジは、25本ずつ、50回投げられたの。最後の方は、もうくたく たになって、肩で息をするようになったわ。 「アスカ。もう、疲れたよ〜。」 そう言いながら、シンジの顔は、苦悶の表情を浮かべていたわ。まあ、まだ午前中なの に、もう顔が歪んできたわ。思ったよりも早いわね。アタシは、シンジをからかって、 和ませることにしたわ。 「んもう、シンジったらスケベね。」 「えっ、何で?」 アタシは不思議がるシンジに、『エナジー・チャージ』を使ったわ。あら、シンジった ら可愛いわね。真っ赤になっちゃって。あっ、そうか。シンジからすると、急にキスを したようにしか思えないものね。 「シンジは、こうして欲しいんでしょ。だからスケベって言ったのよ。」 「えっ、僕はそんなことは言ってないよ。」 「あら、じゃあ、こんなことはお嫌かしら。」 「ううん、そんなことないよっ!」 シンジは激しく首を振ったわ。やっぱりスケベじゃない。 「そう。じゃあ、やって欲しいのね。」 「う、うん…。」 「あら、何でなの。やっぱり、スケベだからでしょ。」 「ううん、アスカのことが好きだから…。」 シンジはまたもや真っ赤になったわ。そう、ここがポイントね。以前のアタシなら、こ こで『何、馬鹿なこと言ってんのよ。』なんて言っていたところだけど、それじゃあ逆 効果になる恐れがあるわ。だから、アタシはこう答えたの。 「えっ、ホント?嬉しいわあ。アタシもシンジがす、す、好きっ。」 そう言って、アタシは顔を真っ赤にして、俯いたの。う〜ん、何だかこれって演技なの か、本当にシンジのことを好きになっちゃったのか、分からなくなったわね。でもいい わ。シンジがアタシのことを好きになるなら、どっちでも。 何て言っても、シンジは優しいし、人を裏切るような性格じゃないもの。それに、アタ シは面食いじゃないから、本当にこのまま恋人になって、結婚して、子供を作ってもい いかなあなんて思ったりして。でも、そのためには、使徒とゼーレを倒さなくてはなら ないのよねえ。そんなことを思っていると…。 「ア、アスカ…。」 シンジは、いきなりアタシに抱きついてきたわ。 「ア、アスカ。大好きだよ。アスカ…。」 「アタシも…。」 こうして二人はしばらく抱き合っていたの。でも、アタシの方が先に我に返ったわ。 「ちょ、ちょっと、シンジ。今は特訓の途中でしょ。休んじゃ駄目よ。」 「あっ、そうか。ごめんね。」 「まあ、良いわ。これからもっと頑張りましょう。」 こうして、特訓はまだまだ続くのよ。 つづく(第19話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき  シンジを恋の虜にするつもりが、いつの間にかシンジのことを好きになりかけているア スカです。揺れ動くアスカの心は、一体どうなるのでしょうか。 2002.4.30  written by red-x



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