新世紀エヴァンゲリオン 外伝 超少女アスカ

第16話

ああ、シンジったら、これから体験する地獄の特訓を知らないから笑えるのよね。もし、 知っていたら、恐怖に顔が引きつるものね。そんなことを思いながら、朝食の時間は、楽 しく過ぎていったわ。 *** 「シンジ、いきなり走ったら、筋肉がおかしくなるから、最初は準備体操をするわよ。」 「うん。」 「じゃあ、アタシの動きを見て、同じように体を動かしてね。」 アタシはそう言うと、準備体操を始めた。シンジもアタシも、短パンにTシャツっていう 格好よ。もちろん、アタシは女の子用のだけどね。レオタードにしようかとも思ったけど、 街中を走ることを考えたら、却下ね。ランニングも、同じ理由で駄目よ。  アタシは5分ほど準備体操をしたら、体が少しあったまってきたわ。 「じゃあ、シンジ、行くわよ。」 アタシが先頭になって、マンションを出たわ。こうして、記念すべき第1回目の訓練が始 まったの。やっぱり、エヴァのパイロットに必要なのは、一に体力、二に体力、三四が無 くて、五に体力だもの。 えっ、だあれ。エヴァは思考コントロールで動くから、体力は必要無いなんて言う人は。 そりゃあ、ただ動かすだけなら体力は必要ないけど、その後が問題なのよ。 何故かって言うと、みんなも歩く時に、ちょっと重心が左右に動くでしょ。それに、頭も 上下すると思うのよ。エヴァに乗っていると、同じようなことがあのサイズで起きる訳よ。 いくらLCLの中にいて、衝撃を吸収していると言っても、もんの凄い衝撃が襲って来る のよ。パイロットは、死なない程度には大丈夫って言っても良い位、大変な目に遭うのよ。 そうねえ、エヴァが歩く度に、パイロットは、上下左右にトランポリンをしているのと同 じような動きになるのかしら、もの凄く揺らされる訳よ。それが、戦闘時には、さらに凄 い動きになるのよ。 ここまで聞いたら分かるでしょ。アタシの計算だと、ジェットコースターに乗るのと同じ 位かそれ以上の体力を使うのよ、動いている限りは。だから、体力の消耗も、半端じゃ無 い訳なのよ。エヴァに乗って5分も走ったら、もうへとへとになるのよ。 えっ、テレビじゃあ、そんなことは無い?当たり前でしょ。テレビの中の世界では、太陽 を西から昇らせるのも簡単だもの。実際には不可能なことでも、簡単に出来たように見せ られる訳よ。 でも、実際のパイロットっていうのは、そんなもんじゃないのよ。体力があって困ること は無いし、どんなにあっても足りない位なのよ。そういう訳だから、生き残るためには、 体力が必要なの。基礎体力がね。 それがあって、初めて応用、例えば作戦行動が可能になるのよ。だから、体力は重要よ。 同じパイロット、例えば飛行機乗りだって、椅子に座って動かないのに、物凄くトレーニ ングをするでしょ。それと同じと考えてもらってもいいわ。 えっと、話は随分それたけど、要はこれから基礎体力を付けるためのランニングをするの よ。今日は、最初から飛ばすわ。スピードを上げるんじゃなくて、シンジの攻略のことよ。 もう、シンジはアタシのものになったも同然だけど、念には念を入れないとね。 えっ、何故かって。何となく、嫌な感じがするのよ。アタシが一番恐れているのが、マナ っていう戦自のスパイなの。あんなのが来たら、シンジもよろめいちゃうんじゃないかっ て心配なの。 一応、まだ日は十分あるはずだけど、アタシが未来を変えてしまったことによって、どん な変化が起こるのか、分からないのよ。もしかしたら、戦自の兵器の開発が早まって、マ ナが来るのが早まったりする可能性が無いとはいえないのよ。 えっ、レイはどうなのかって。あの娘は多分大丈夫よ。少し位会う予定が変わっても影響 無いわね。だって、あの無表情、無感情ですもの。端から気にしていないわ。ライバルは マナとヒカリにミサト、そして大穴でリツコっていう感じかしら。 こうやって考えると、シンジの周りって、美女や可愛い女の子が多いのよね。本当に気が 抜けないわ。あら、アタシったら、何考えていたのかしら。早く特訓を始めなといけない わね。 「シンジ、じゃあ、始めるわよ。その前に、ちょっとしゃがんで。」 「うん。」 シンジは、素直にしゃがんだわ。そこに、アタシは後ろから回り込んで、シンジの背中に 抱きついて、おぶさったの。 「ア、アスカ。一体どうしたの。」 「だから言ったでしょ。特訓だって。ただ走るだけじゃあ、特訓にならないでしょ。だか ら、アタシを背負って走るのよ。分かった、シンジ?」 「うん、分かったよ。」 シンジは、ちょっと弾んだような声で応えたわ。 ふふふっ。きっと、シンジの心臓は、激しくドキドキしているわね。だって、シンジの年 で、女の子を背負うことなんて、滅多に無いはずだもの。それに、アタシの豊満な胸がシ ンジの背中に当たって、シンジったら、今頃大喜びよね。 「じゃあ、シンジ、真っ直ぐ走って。最初はゆっくりでいいから。」 「う、うん、じゃあ走るね。アスカ、落ちないようにしっかり掴まっていてね。」 「分かったわ。シンジが喜ぶように、もっと胸を押しつけてあげるわよ。」 アタシはそう言うと、シンジの背中にさらに強く胸を押しつけたわ。 「あ、あの、そういうつもりじゃないんだけど。」 「あら、じゃあ、嫌なの?」 「い、嫌じゃないけど。」 「じゃあ、いいじゃないの。じゃあ、走ってね。」 「うん。」 シンジは、返事をすると、走り出したわ。最初は、シンジにとっては、天国みたいだった けど、これからがキツイのよね。こうして、地獄の特訓が始まったの。 *** 「はあ、はあ、はあ…。」 シンジったら、最初から飛ばしたもんだから、直ぐに息が上がっちゃったわ。アタシは、 5分経つと、シンジに声をかけたの。 「はい、シンジ、止まって。」 「う、うん。はあ、はあ、はあ…。」 あら、シンジったら、やっぱり運動はからっきしなのね。ちょっとからかってみようかし ら。少し位だったら、良いわよね。 「あら、シンジったら、興奮しちゃって。エッチねえ。」 「そ、そんなんじゃ、はあ、はあ、ないよっ、はあ、はあ…。」 「まあ、いいわ、シンジだったら。少し位エッチなことを考えても。さあて、次は交代よ。 今度は、シンジがアタシの背中に乗って。」 「えっ、そ、そんなの恥ずかしいよ。」 「これは、特訓なのよ。恥ずかしいなんて言って、その間に敵に倒されたらどうするのよ。 もっと真面目にやってよ。アタシは真面目にやってるのに、シンジったら、エッチなこと しか考えないなんて。」 アタシは、ちょっとだけ頬を膨らませたわ。 「そんなんじゃないよ。分かったよ、乗るよ。」 シンジは、諦めてアタシの背中に乗ったわ。 「じゃあ、行くわよっ。」 アタシは、そう言うなり走り出したわ。 「えっ、アスカ、速いよっ。」 「アタシは、まだ7分の力よ。それよりも、これはシンジにとっても訓練なんだからね。 エヴァに乗っている時の揺れに、少しでも慣れるっていう訓練なのよ。そこのところを 理解してね。」 「あっ、そうなの。でも、どうすれば良いの?」 「なるべく、自分の体が揺れないような体勢にするのよ。そして、可能な限り力を使わ ないようにね。小さな力で、自分の揺れを少なくする、それを体で覚えるのよ。」 「うん、分かったよ。でも、アスカはさっきまで、僕に胸を押しつけてきたよね。あれ は、何でなの。」 「そんなこと、聞かないでよ。誰かさんを喜ばすために、最初だけサービスしたのよ。 分かった?」 「う、うん。ありがとう。」 そう言ってからは、シンジは訓練に集中したようで、話さなくなったわ。そして、少し ずつだけど、背中のシンジの揺れが、小さくなっていくのが分かったわ。よしよし、シ ンジは真面目にやっているわね。 もちろん、これは真面目な訓練だけど、パートナー同士が親密になるという側面もある のよ。 やっぱり、肌と肌が密着するなんて状況は、普通は起こらないじゃない。それなのに、 この特訓は、走る方の手と乗る方の足がぴったりとくっつくのよ。それ以外の部分も、 くっついたりするわ。 そんな状態が長く続くと、嫌でもお互いの壁が無くなるわよね。アタシ達の年頃って、 変に色気付いて、男と女で触れ合うのが恥ずかしいし、それがいろんな心の壁を作るけ ど、この特訓をしていれば、そんなのへいちゃらになるのよ。 もう、触れ合っているのが当たり前の感覚になる訳よ。当然、お互いの距離はかなり近 付くわ。そうなると、二人はどんどん親密になっていくって訳なのよ。 もちろん、天才少女である、このアタシが考えついた、画期的な訓練方法なんだけどね。 二人は親密になって、なおかつエヴァの操縦に役立つ最良の方法ね。 こうして、訓練は始まったけど、まだまだこれからなのよ、シンジが地獄を味わうのは。 ちょっと可哀相かもしれないけど、人類を滅亡から救う為には、シンジに頑張ってもら わないとね。 アタシは心を鬼にして、訓練をする決意をしたわ。 つづく(第17話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき  今日からアスカの特訓が始まります。シンジはあまり特訓をしていなかったようですが、 アスカはそれではまずいと判断して、シンジを鍛えることにしたのです。なおかつ、二人 の仲が親密になるように、メニューも考えたのです。 2002.4.16  written by red-x



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