新世紀エヴァンゲリオン 外伝 超少女アスカ


第8話

「でも、せっかく運んだビールをもう一度運ぶのも大変でしょう。ええいっ、分かったわ。 アスカはここに住んでもいいわ。」 こうして、アタシはミサトの家に住むことになったわ。シンジと一緒にね。これから、面 白くなりそうね。 *** 「ミサト、明日はお仕事なんでしょ?先にお風呂に入りなさいよ。」 アタシは、ミサトにお風呂を勧めたの。 「あらん、いいのかしらん。」 なんて言いながら、ミサトは喜々としてお風呂に入ったの。当然ながら、アタシとシンジ の二人きりになったわ。 「やっと二人きりになれたね、シンジ君。」 アタシは、にこやかにシンジに微笑んだわ。でも、シンジは、何故か浮かない顔をしてい たの。 「どうしたの、シンジ君。」 アタシは、ちょっと心配になって、シンジに聞いたわ。そうしたら、シンジったら、変な ことを言い出したの。 「アスカさんは、何で僕のことをからかうの?僕が何かしたって言うの?」 シンジはそう言って、泣きそうな顔をしたわ。嫌だ。シンジったら、何か勘違いしてるわ ね。でも、当たらずとも遠からじっていう奴かしら。でも、今はそんなことを言っている 場合じゃないわね。何とかしなくちゃ。 アタシは、シンジの方を向くと、シンジの目を見据えたわ。シンジの目は、怯えたような 目をしていたわ。 「ねえ、答えてよ。何で、僕に構うのさ。」 「シンジ君、何を言っているのかしら?」 「とぼけないでよ。いくら何でも、話が出来すぎているよ。僕と一緒に住むなんて、そん なこと、ある訳ないじゃないか。僕を喜ばせて、実は騙していたっていうパターンなんで しょ。幾ら僕が鈍くても、騙されないよ。」 シンジの目は、怒るというよりも、何か怖がっているような感じね。ここは、変にからか うとまずいわね。アタシは、超能力を使うことに決めたわ。 「シンジ君、アタシのことが、嫌いになったのね。」 アタシは、思いっきり暗い声で言ったわ。そして、少し俯いて、涙をポロポロと流したの。 そう、これが『ラブリー・ティアー』よ。この愛らしい涙には、人の心を動揺させる効果 があるの。特に男の心をね。シンジは驚いたように、目を白黒させているわ。 「嫌いになったなら、そんな回りくどいことを言わなくてもいいわよ。アタシったら、図 々しいし、我がままなうえに、ちょっと変わっているから、人に嫌われることにも慣れて いるわ。だから、はっきり言っていいのよ。」 「ちょっと、アスカさん、何を言っているんだよ。」 あら。シンジったら、慌てだしたわ。 「シンジ君は、アタシのこと、変な女って思ったんでしょ。だから、嫌いになったのね。 だから、そんな酷いことを言うのね。いいの。アタシ、嫌われるのには慣れているから。 シンジ君は、優しそうだったから、ついついアタシったら、調子に乗っちゃって。シンジ 君に嫌われるのも、無理ないわよね。」 アタシは、そう言いながら、顔を手のひらで隠して、思いっきりすすり泣いたの。シンジ は、ますます慌てだしたわ。 「あ、あの、ちょっと、何で泣くのさ。」 「シンジ君に嫌われたからよ。だって、アタシのことが好きなら、あんなことは言わない はずだもの。いいの。みんな、アタシが悪いのよね。」 アタシは、そう言うと立ち上がったわ。頬からは、涙がポロポロこぼれているわ。 「どうしたの、アスカさん。」 「アタシ、やっぱり、この家を出るわ。どこにも行くあては無いけど、野宿でも何でもす るわ。じゃあね、シンジ君。短い間だったけど、楽しかったわ。夢を見させてくれて、あ りがとう。」 アタシは、玄関に向かったわ。でも、やっぱりシンジが引き止めてきたわ。 「ま、待ってよアスカさん。誤解だよ。僕は、アスカさんのことが嫌いになったわけじゃ あないんだよ。ただ、信じられなくて、からかわれているのかなって。」 「何よっ。それが、アタシのことが嫌いになったっていうことなのよっ。アタシがからか っているですって。からかうために、ファーストキスを捧げるなんて思っているの?そん なこと、ある訳ないでしょ。言いがかりはよしてよっ。酷いわ、あんまりよっ。」 アタシは、シンジの方を見てまくし立てると、うずくまって、泣き崩れたわ。シンジの顔 は、おそらく蒼白になっているわね。 「ご、ごめんね。僕ったら、良く考えれば分かることなのに、疑っちゃって。そうだよね、 ごめん。良く考えたら、僕の考えすぎだったんだね。アスカさん、僕は、君のことを嫌い になったんじゃないんだ。ただ、自分にこんな良いことが起きるなんて、信じられなかっ たんだ。」 「アタシだって、優しい彼が出来たと思って嬉しかったのよ。それなのに、嘘だったなん て、騙されたなんて…。アタシがどれだけ辛い想いをしているか、分からないでしょ。」 「だから、ごめんよ。どうしたら許してくれるの。」 「アタシのこと、騙したの?」 「違うよ。」 「本当?」 「本当だよ。」 「本当に、本当?」 「うん、本当に本当だよ。」 「だったら、行動で示してよ。」 アタシがそう言って、目を閉じると、シンジがアタシのことを優しく抱きしめて、キスを してきたわ。しめしめ、これでもう大丈夫ね。シンジったら、やっぱり女の涙には弱かっ たのね。えっと、そうじゃないわね。アタシの超能力の威力は抜群なのね。シンジったら、 いつの間にか、騙しているのがシンジの方になったことに、気付いていないようね。 「シンジ君、アタシのこと、本当に好きなの?」 「うん、そうだよ。」 「だったら、アタシを不安にさせるようなことは、もう言わないで欲しいの。お願い。」 「うん、分かったよ。もう言わない。僕は、アスカさんのことが好きだ、大好きだ。だか ら、もう二度とあんなことは言わないよ。」 シンジは、ギュッとアタシのことを抱きしめたわ。 *** 「は〜い、お待たせ〜。」 ミサトが元気良く、お風呂から出てきた頃には、アタシとシンジは、元通り、いや、前以 上に仲良くなっていたわ。 「じゃあ、次は、アタシが入るわね。」 そう言って、アタシはお風呂に入ったわ。 つづく(第9話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき  さすがの鈍感シンジも、アスカの涙には、なすすべもありません。 2002.2.19  written by red-x



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