新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセ


第95.5話 登場!ゼウスのエヴァ!!

アスカの恐れていた通り、既にトルコ軍の侵攻は開始されていた。 バグダッド、テヘラン、カブールには数万人規模の兵力が投入されていた。それ以外の主 要都市にも数千人規模の兵力が投入されていた。さらには、イラク各地で反乱軍が一斉に 蜂起したのである。 「独裁者を倒すんだっ!」 「自由を我が手にっ!」 長年にわたって虐げられてきた人々の力は凄まじかった。各地に点在していたイラク軍の 基地を、反乱軍の兵士達はトルコ軍の協力を得て次々に制圧していったのだ。 無論、十年以上も前から周到な準備がなされていたこと、多数の工作員によって基地の機 能が低下していたことも手伝って、数千とあったイラク軍基地はその殆どがトルコ軍と反 乱軍の手に落ちた。 それだけのことが、驚くべきことに数時間のうちに行われたのである。そして、制圧され た基地を中心として、新たな統治が始められていった。奇しくも反乱軍の指導者達の多く は、特定の地域出身だった。そう、かつてアレクサンドロスが植民した都市、アレキサン ドリアがある地域の出身者が多数を占めていた。 トルコ軍はイラクに対して降伏を勧告したが、それに素直に応じる者は少なく、大規模な 基地を中心にイラク軍は抵抗する素振りを見せた。トルコ軍や反乱軍も、数多くの基地を 制圧したといっても小規模な基地だけであり、大規模な基地はそもそも攻撃すらしていな かった。 なぜなら、兵員輸送にネックがあったからだ。小規模な基地ならば、輸送機数機分の兵士 と反乱軍で制圧出来たのだが、大規模な基地はそうはいかない。とはいえ、輸送機の数は 限られている。 このため、トルコ軍は反乱軍の手引きで基地の近辺に潜伏して一斉に蜂起する手段をとっ た。数万のトルコ軍兵士が各地で一斉に蜂起したが、それでも最低限の兵士は輸送機で運 ばなければならず、それとても手持ちの輸送機では不足気味であったのだ。 このため、作戦開始から数時間経っても大規模な基地は無傷であった。 *** 一方、ゼウスのランブロとアリは、作戦の成功に気を良くしていた。無論、今回の作戦は ゼウスが裏で糸を引いていたのだ。 「アリよ。戦況はどうだ。」 「はっ、予定通りに進んでいます。あと数時間で殆どの基地が制圧出来る見込みです。」 「そうか、順調だな。」 「あとは、大規模な基地だけです。」 「で、例の作戦はどうなっている?」 「はっ、着々と準備は進んでいます。」 「ふふふっ、いいぞ。で、ネルフの動きはどうだ?今頃は、いい夢を見ているだろう。」 「そ、それが、どういうわけか、パイロット全員に非常招集がかかっています。」 「何だと!我々の計画が漏れたのか!」 「はい、おそらく。ただ、具体的な動きはありませんから、我々の計画の全貌は掴んでい ないはずです。」 「だが、油断するなよ。相手はあの、智将カツラギミサトなんだ。どんな方法で我らの計 画の邪魔をしてくるのか分からん。くれぐれも油断するなよ。」 「では、予定を少し繰り上げます。」 「ああ、そうだな。私の方でも打てる手は打っておこう。」 こうして、二人の会話は終わった。 *** その頃、マケドニアの首都スコピエから少し離れた山の中腹で、3人の少年少女達が出番 を待っていた。 「みんな、アリ様から指令よ!やっと出撃出来るわよ!」 そこに隊長のニコリーナが笑顔で走ってきた。 「本当かよ。待ちわびたぜ。」 副隊長のケヴィンも、顔がほころんでいる。だが、ニコリーナはみんなの前で立ち止まる と、急に厳めしい顔つきになった。 「いい、アリ様からの指令よ。良く聞いて。イリスはガンマでサウジアラビアに向かって ちょうだい。」 「はい。」 「ラビナはデルタで旧アフガニスタンよ。」 「ええ、任せておいて。」 「ケヴィンはベータで旧イランに行って。」 「おお、よっしゃあ!」 「で、私はアルファでイラクを攻めるわ。いいわね、この戦いが世界を救う戦いになるの よ。心して戦ってね。」 「ああ、世界の平和は俺達が守るんだ。国連やネルフなんぞに任せられるかってんだ。」 「そうよ。イカリシンジ以外のパイロットになら、絶対に負けないわ。ねえ、そうでしょ。 イリス?」 「ええ、ラビナ。でも、油断は禁物です。」 「それから、アリ様からの指令はもう一つあるわ。万一、ネルフのエヴァンゲリオンが我 々の邪魔をするなら、力ずくで排除するようにって。ん、なあにイリス。不服そうね。」 「いいえ、そうではありませんが。ただ、半年間一緒にいたもので。出来れば戦いたくな いと思います。」 「ふん、何を言ってるんだ。奴ら、内輪もめばかりしてただろ。あんな奴ら、構うことは ねえよ。まあ、お前は優しいからそう言ってるんだろうけどな。」 「イリス、これは隊長としての命令よ。我ら、ゼウスに敵対する者は、誰であろうと排除 するのよ。まあ、悪い奴はやっつけて、そうじゃない奴は追い払えばいいじゃない。アリ 様だって、殺せとは言ってなかったんだし。説得してどっかに行ってもらえれば、それが 一番いいんだしさ。イリス、あなたは深く考えすぎよ。」 「そうですね。そうかもしれません。」 「まあいいわ。さあ、行きましょう。我らゼウスのエヴァンゲリオン、アルファ、ベータ、 ガンマ、デルタに乗ってね。」 ニコリーナは、4体のダークグリーンの色彩を凝らしたエヴァンゲリオンを見上げながら、 不敵な笑みを浮かべた。 <太線はトルコ軍侵攻ルート、細線はエヴァの侵攻予定ルート> (第96話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき    やはり、ニコリーナ達はエヴァンゲリオンのパイロットでした。ゼウスのエヴァンゲリ オン、その性能はいかほどか。 2004.9.2 written by red-x



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