新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセ
第87.5話 偽情報
ネルフ本部が襲撃された数日後、バグダットにおいて、軍幹部が集まって作戦会議を開
いていた。
「はははっ、うまくやったな。サダムフェダーインもよくやる。」
「ああ、昨日のテレビを見たか。ネルフの奴ら、情けない顔をしてたよな。」
「これで、奴らも懲りただろう。あと一押しでサウジアラビアの奴らも叩き出せるな。」
そう、彼らはネルフの偽情報によって、攻撃が『成功』したと思っているのだ。
ネルフの公式発表では、約20名のテロリストがネルフ本部内に侵入。ネルフの守備隊員
を多数殺害したうえ、爆弾によって発令所を半壊させた。さらには数体のエヴァンゲリオ
ンを大破させたというのだ。
ネルフは、監視カメラが捉えた、テロリスト達がネルフ職員を銃撃して本部内に侵入する
場面を公表し、犯人に関する情報提供をも呼びかけた。
「ふふっ、バカめ。我々の攻撃に決まっているだろう。だが、犯人は自爆したから証拠は
ない。手がかりになるようなものは、全て始末したはずだ。」
「しかし、まさかトルコまで攻撃するとはな。誰の発案なんだ?」
「誰でもいいだろう。しかし、これでやりやすくなったな。ネルフの味方をするような国
に対しては、ネルフやトルコみたいな目に遭うぞって脅せばいいしな。」
「それに、ヨーロッパやアメリカの反戦主義者が、派兵反対と言って騒ぎだしたようだな。
奴らは、サウジの連中がいくら死のうと構わないが、自分達がテロの巻き添えになるのは
嫌らしいな。」
「フン、忌ま忌ましい人種差別主義者共だ。自分達が良ければそれで良いって言う訳か。
まったく、反吐が出るぜ。だが、奴らはクズとはいえ、我々にとっては助かるな。派兵が
遅れれば遅れるほど、我が軍にとっては有利だしな。」
「だが、肝心のサウジアラビアに送った連中はどうなったんだ。何の成果も聞こえないぞ。
まさか、間違えてトルコに送り出したんじゃあるまいな。」
「いや、違う。失敗したんだ。送り込んだ奴らは、全員捕まるか自爆したようだ。」
「そうか。まあ、いいさ。もう一度送ればいい。」
「ああ、そうだな。まあ、これだけの成功を収めたんだ。後は失敗しても構わんだろう。」
こうして、会議はいつになく明るいものとなった。
***
「ランブロ様、作戦は成功ですな。そのうえ、イラク軍は戦勝ムードのようです。」
暗い部屋の中で、イラク軍幹部の会議の内容を知って、笑いが止まらない人物がいた。
「ふん、バカな奴らだ。負けるが勝ちという言葉を知らぬのか。」
そう言いながらも、ランブロの顔はにやけている。
「奴らは、早速周辺国に脅しをかけているようです。ネルフの二の舞になりたいか、トル
コの二の舞になりたいか、と。」
「で、アリよ。サダムフェダーインの動きはどうだ。」
「はっ。ネルフ本部とサウジに10部隊、トルコには20部隊ほど送り込んだようです。」
「で、お前が何をすべきか分かっているな?」
「分かっております、お任せを。ですが、イラクの連中は、碇シンジを害するつもりはな
かったようです。」
「ほう、何で分かる?」
「奴らは、碇シンジと惣流アスカの行動を把握し、二人がネルフ本部にいない時間帯を狙
ったようですから。」
「そうか。だが、次もそうとは限らん。油断は禁物だ。分かったな。」
「はい、心得ていますとも。」
アリはにやりと笑った。
彼らが果たして何をしようとしているのか、ネルフ本部にもイラク軍にも、知る者はいな
かった。
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あとがき
イラクとネルフとの戦いの中、第三勢力が暗躍します。彼らは、何故かシンジを守ろう
としているようですが、何か悪巧みもしているようです。彼らの正体や狙いが分かるのは、
まだまだ先のようです。
2004.2.17 written by red-x