新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセ


第5部



第84話 強襲、ダンマーム!

「も、もう駄目だよ、アスカ〜。限界だ〜、眠いよ〜。」 エヴァを出発させるための準備を徹夜でしていたシンジだったが、激しい睡魔が襲ってき ていた。目は殆ど閉じかけており、頭もふらふらしている。 「うっさいわねえ。アンタ、男の子でしょ。もちっと、頑張りなさいよねえ。」 一方、鍛え方がシンジとは違うアスカは、まだまだ元気一杯であるため、不満そうな顔で シンジを睨み付ける。 「でも、もう限界だよ〜。お願いだから、寝させてよ〜。」 だが、シンジは本当に辛そうだった。 「いいから、続けなさいよ。もう少しだから。」 「で、でも…。」 (ちっ。しょうがないわね。最後の手段を使うか。) 今にも眠りそうなシンジに対して、アスカは奥の手を使うことにした。 「シンジ〜。あと1時間頑張ったら、一緒にお風呂に入ってあげる。そしてね、シンジの 体をくまなく洗ってあげても、いいわよ。」 「ええっ!」 それを聞いた瞬間、シンジは思わず立ち上がり、その目が大きく開かれた。どうやら、ア スカの示したエサは、シンジにとって抜群の効果があったようだ。 (ふん、このドスケベ。本当にしょうがないわねえ。) アスカは呆れたが、背に腹は代えられない。何としても出発予定時刻を遅らせてはならな かった。遅れることによって、罪のないサウジアラビアの国民の犠牲者が増えるからだ。 シンジは他国民の死について現実感が無いのか、無責任なのか、そのことはあまり気にし ていない様子でやる気が見られなかった。このため、アスカはかなり頭にきたのだが、シ ンジはお子ちゃまだからしょうがないわねと、沸き上がる怒りを何とか抑えていた。 それなのに、少しエッチなエサを見せるだけで途端にやる気を見せるとは、アスカとして は複雑な心境だったのだが、今は余計なことを考えない方が良いだろうと頭を軽く振り、 シンジにハッパをかけた。 「さあ、分かったら、もう少し頑張りなさいよ。」 「う、うんっ!頑張るよっ!」 エッチなエサには素早く反応し、急に元気になってしまう現金なシンジであった。 だが、ともあれ、アスカが体を張って?頑張ったことによって、出発の準備は何とか予定 通り完了するのであった。 *** 「アニー、イライザ、エカテリーナ、用意はいいか?」 「ええ、大丈夫よ。」 「準備は万端ですわよ。」 「こっちも大丈夫。」 「サーシャ、ザナド、イリス、クリスティン、そっちはどうだ。」 「大丈夫よ。」 「こっちもだ。」 「こちらもです。」 「同じく。」 アスカが徹夜で準備した甲斐あって、1時間後に作業は完了し、シンジは速攻で家に寝に 帰った。そして、いよいよネルフの平和維持活動軍が出発出来ることになった。もっとも、 パイロット達は緊張しまくりである。 だが、さすがにアスカの選んだ指揮官である。ハウレーンは幾多の修羅場をくぐり抜けて きたせいか、殆ど緊張していないように見える。そして、淡々と出撃の準備を進めていく。 指揮官がしっかりしていると、パイロット達はそれだけで落ち着くようで、アニー達は少 し緊張しながらも、出撃準備を着々と進めることができた。 その後、出撃に当たって簡単な出陣式が行われたが、情報の漏洩を防ぐため、簡素なもの であった。冬月が出撃に当たって部下達へ檄を飛ばし、アスカから全員無事に帰ってくる ようにとの言葉を送り、その後素早く出撃態勢に移った。 その陣容は、司令官に冬月、司令官補佐にジャッジマン、パイロットがさきほどの8名、 傭兵部隊がジャッジマンの部隊1個中隊とレッドアタッカーズ1個中隊に加えてヴァンテ アン1個中隊の計3個中隊、そして支援部隊として戦自の部隊を中心に約400人。合計 で千人ほどであった。ちなみに、マヤとシゲルも同行することになっている。 一方、兵器の類はエヴァ2体、エヴァの輸送機2機、戦闘機60機、輸送機30機、空中 給油機30機という陣容である。 「みんな〜、無事に帰って来るのよ〜。」 アスカは、他のパイロット達と一緒に、戦場へと向かう彼らの姿が見えなくなるまで、声 援を送り続けた。そして、つい先日のやりとりを思い出していた。 *** 「ぬあんですってっ!何でそんな大事なことを教えてくれなかったんですかっ!!」 アスカは、大声を出してジャッジマンに詰め寄った。 「わ、悪い。つい、言いそびれて。」 「つい、じゃないですよっ!本当に怒りますよっ!もうっ!」 「悪い、本当に悪い。この通りだ。」 アスカの剣幕に、ジャッジマンはひたすら頭を下げ続けた。 「しっかしねえ。あのキャシーがレッドウルフだったとわねえ。最初に会った時からただ 者じゃないとは直ぐに分かったけど、まさにドンピシャリっていう訳ね。でも、さすがに レッドウルフだったとは思わなかったわ。」 「だろう。おれもつい最近知ったんだけど、最初は驚いたぜ。」 「でも、レッドウルフには傭兵部隊を指揮してもらおうって思っていたのに、作戦が一か ら練り直しになっちゃったわ。どうしてくれるんですか、ジャッジマンさん?」 アスカは、再び険しい顔をしてジャッジマンに迫った。 「はははっ…。悪いと思っている。」 「それは、責任を取って快くサウジアラビア行ってくださるととってもよろしいんでしょ うね?」 「はははっ…。やっぱりそうなるか。」 ジャッジマンの顔は、少し引きつっていた。 「当ったり前じゃないですか。ハウレーンがヴァンテアンを指揮して、サーシャがレッド ウルフの指揮するレッドアタッカーズと行動を共にするって考えていたんですよ。それな のに、こんな土壇場でひっくり返るなんて、冗談じゃないですよ。作戦を一から練り直す なんて、すっごく、ものすっごく、大変なんですよっ!」 「だよなあ。あ〜あ、断ろうと思っていたのになあ。」 「まあ、諦めてください。そうしないと、本当に、お・こ・り・ま・す・よ!」 「トホホホホ…。」 ジャッジマンは、我が身の不幸を嘆いたが、時既に遅しであった。 *** 「ふふふっ、あの時のジャッジマンさんて、本当に慌てていたわよね。」 アスカは、思い出し笑いをした。とまあ、こうした経過があって、ジャッジマンは渋々サ ウジ行きを了承せざるを得なかったのだ。 結果的には、上手く丸め込んでジャッジマンをサウジに派遣することが出来たし、レッド ウルフも予備兵力としていつでも戦場に投入出来る態勢が整っているため、アスカの立て た作戦の大枠には重大な影響は無かった。 「でも、計画の修正って大変なのよねえ。」 そう、おかげでアスカの仕事が膨大な量になってしまったのである。本来、アスカは徹夜 などする必要はなく、したがってシンジと一緒にお風呂に入ることもなかったのである。 「でも、あのスケベがいつになく喜んでいるからしょうがないか。」 アスカは、シンジのはちきれんばかりの笑顔を思い出した。アスカとて、暗いシンジより は明るい笑顔のシンジの方がいいに決まっている。 「でも、複雑な気分よねえ。」 だが、笑顔の原因がアスカにあることは喜ばしいのだが、スケベなことに起因していると なると、喜んでいいいのかどうか甚だ疑問である。 「まあ、いいわ。考えるのは後にしよう。今はとにかく睡眠を取らないとね。」 アスカは、あくびを堪えつつ、我が家…の隣のシンジ宅へと向かった。今頃は、シンジが 眠りこけているはずの、シンジのベッドへと。 *** 「ただ今より、『サンダーアロー作戦』を始めますっ!」 発令所に、ミサトの凛々しい声が響きわたった。冬月らの出発から、既に12時間が経っ ていた。アスカはアスカルームで今回の作戦の総指揮、シンジはケージで万が一の時のた めの待機である。 「リツコ、ハウレーンを呼び出して。」 「ええ、出たわよ。」 リツコの言葉と共に、発令所のスクリーンに、ハウレーンの顔が映し出された。 「ハウレーン、準備は出来てるかしら。」 「はい、大丈夫です。」 「それでは、作戦開始!」 「了解しました。」 ハウレーンは敬礼した。 「大変ですっ、司令官!敵襲ですっ!」 ダンマームでのんびりしていたイラク第3軍の司令官の元に、副官が慌てて駆けつけた。 「なにっ!そんな、馬鹿なっ!一体、どこのどいつだ?」 司令官は、目を剥いて驚いた。 「はっ!ネルフのエヴァンゲリオンと思われます。」 「何だとっ!お前の話しでは、2週間後ということではなかったのか?」 「は、はあっ。確かに、ネルフの正式な発表ではそうでした。」 「くそうっ!してやられたかっ!」 司令官は地団駄を踏んだが、敵襲など無いものと油断している状態で奇襲を受けたため、 反撃の態勢はすぐには整わないだろう。待っているのは敗北である。 「どうしましょうか、司令官どの。」 「う〜む。」 司令官は悩んだ。ここで踏みとどまって戦っても敗北は必至であるし、さりとておめおめ と逃げ帰ったならば、下手すると大統領の不興を買って最悪処刑されてしまう。進むも地 獄、引くも地獄である。ならば…と、司令官は戦うことを決意した。 「ここで負ける訳にはいかん。徹底抗戦せよ。」 「はっ!」 副官は、司令官の命令を伝えに急いで部屋を出た。 「いいか、サーシャ。お前が援護して、私が突っ込むという役割分担だ。いいな。」 「はい、隊長。分かりました。」 「よし、行くぞっ!」 ハウレーンの合図で、低空飛行をしていた輸送機から、2体のエヴァンゲリオンが大地に 降り立った。着地するやいなや、ミサトから指令が入る。 「いい、ハウレーン。こちらが指示するポイントに向かって欲しいんだけど。」 「了解しました。」 ハウレーンとサーシャのエヴァが指示されたポイントにたどり着くと、そこにあった建物 が崩れ落ち、電源車2台とポジトロンライフル1丁、パレットガン1丁が現れた。こんな こともあろうかと、アスカが数カ月も前に用意しておいたものだった。 「ハウレーン、サーシャ。電源プラグを繋いで。早くっ!」 「「はいっ!」」 二人は急いでプラグを装着し、それぞれ武器を携えた。 「ハウレーン、行きますっ!」 そして、掛け声と共に、ハウレーンはダンマームの町へと突進を始めた。それをサーシャ が援護するため、ポジトロンライフルを連射する。ポジトロンライフルが火を吹く度に、 敵の戦車が、装甲車が、砲台が、次々と破壊されていった。 無論、敵の攻撃はハウレーンのエヴァにも襲いかかったが、ハウレーンはATフィールド を張っているため、敵の攻撃は殆ど通じない。時折ケーブルを襲うミサイル攻撃は、サー シャが何とか全て防ぎきった。 「ハウレーン、これから攻撃目標を指示するわ。あなたのことだから大丈夫だと思うけど、 落ち着いてね。」 「了解しました。指示をお願いします。」 「分かったわ。リツコ、お願い。」 リツコが端末を操作すると、ハウレーンの目の前のスクリーンに攻撃目標が多数現れた。 「これから攻撃目標を殲滅します。」 ハウレーンは攻撃目標に近付きつつ、パレットガンの弾をほぼ正確にたたき込んだ。攻撃 目標を潰す度に、敵の反撃が弱まっていく。そして、3時間ほどで全ての攻撃目標を潰す 事に成功した。 「ナイス、ハウレーン!これからヴァンテアンの部隊がそちらに向かうから、あなたの判 断で指揮してちょうだい。」 「了解しました。」 ハウレーンは、部下達との通信回線を開いた。そして、あらかじめ打ち合わせていた通り に部隊を展開させ、重要拠点を制圧していった。 「いい、サーシャ。敵の戦闘機がこっちに向かっているわ。迎撃、お願いね。」 「分かりました。」 一方のサーシャは、敵戦闘機の排除という任務が与えられた。もちろん、ネルフの戦闘機 も迎撃するのだが、ネルフの被害を極力少なくするために、エヴァで敵戦闘機を迎撃する のだ。 「いただきっ!」 MAGIのサポートを受けて、敵戦闘機がこちらに到達する前に半分ほど撃墜することに 成功した。そのせいか、敵戦闘機の動きが鈍くなった。そこをネルフの戦闘機群が襲いか かり、次々と敵機を撃墜していく。 そして、30分もしないうちに敵機は全機撃墜、味方の被害はゼロという結果となった。 「やったわっ!」 サーシャは、飛び上がらんばかりに喜んだ。こうして、イラク軍の組織的抵抗は、ほぼ終 わった。 *** 「冬月司令官、こちらにどうぞ。」 ジャッジマンは、比較的被害が少ない建物の中で、程よい広さの建物に仮司令部を設置し、 そこに冬月を案内した。そろそろ日が暮れる時間になっていたため、窓から赤い夕陽が見 える。 「うむ、ごくろうだった。」 冬月は、少しだけ夕陽に目をやったが、すぐに用意されていた椅子に座った。 「司令官、この町はほぼ制圧しました。イラク軍の抵抗はもう殆どありません。」 「そうか。アスカ君から次の指示があるまで、交代で休みをとってくれたまえ。私は、こ れからが仕事だがな。」 「はっ。ありがとうございます。ですが、今後の作戦はどうなさるのですか。」 「うむ。おそらく当初の予定通り、最初にマナーマとドーハを攻撃し、その後アブカイク に攻め入って制圧することになるだろう。」 「そうなると、今夜にも…。」 「ああ、そうだ。今度はアニー君とザナド君の出番だな。彼らには、私の方から連絡して おくよ。」 「はっ。ありがとうございます。」 ジャッジマンは、敬礼するとその場を去って行った。 「ふうっ、まさかこんなに上手くいくとはな。」 冬月は、本部に送る報告書を見た。空中で待機している時に作り上げたものだった。そこ には、ネルフの死傷者が無しと記載されている。物的被害も無しだ。一方、対外的に発表 する報告書案には、死傷者多数と記されている。戦闘機の半数も撃墜されたことになって いる。 「これで、少しは敵が油断してくれればいいのだがな。」 だが、今後はともかく、作戦の滑り出しは大成功であった。 (第84.5話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき  ネルフの奇襲が成功し、1つの町が解放されました。さて、これからも上手くいくとい いのですが。 2003.11.28  written by red-x



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