新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセ


第4部 ネルフ再生



第80話 シンジの誕生会 後編

「はい、では次のゲームで〜すっ。」 ケンスケとトウジは、その後も手を変え品を変えゲームを続けたのだが、段々お色気のあ るものになっていった。 ビンゴの次は、新聞紙を使ったゲームだった。男女がペアになって新聞紙の上に乗り、ジ ャンケンをするのだが、負けたら新聞紙を半分に折るという単純なゲームである。 当然ながら、何回か負けると足場が無くなるのだが、その場合は男が女の子を抱っこした り、おんぶしたりするのだ。そして最後は片足で立つのだが、耐えきれなくなって新聞紙 の外に足が出たら負けである。 このゲームは、勝った者がどんどん抜けていくため、ジャンケンに弱い者や重い物を持て ない男がいるペアが不利である。また、抱っこされている女の子が、恥ずかしがって体を 揺すったりすると、これまた不利になるのだ。 最初は、恋人同士ではないペアによる対戦である。くじ引きの結果、イライザ・ニールの ペア対サーシャ・ザナドのペアが対戦した。 ジャンケンはイライザの方がやや強かったが、イライザが抱っこを要求し、抱っこに慣れ ていないニールがバランスを崩して新聞紙から足を出したため、結果的にサーシャ達が勝 った。 次のマリア・カヲルのペア対アールコート・アリオスのペアは、マリアがジャンケンに異 様に弱かったため、アールコート達が勝ち抜いた。 次にハウレーンのペアとミンメイのペアが戦ったのだが、親しい男友達のいないハウレー ンが無理に連れてきた男の子と組んでいて、呼吸が合わなかったのに対し、ミンメイはそ こそこ気心の知れた男友達と組んでいたため、勝利を掴んだ。 そして、この対戦は勝った組が抜けていくため、イライザ達とマリア達が対戦することに なった。結果は、ジャンケンをカヲルがすることにしたマリア達の勝ちとなった。 最後に、ハウレーン達とイライザ達が対戦したのだが、ハウレーン達があっけなく負けて しまった。 「はい、ハウレーン・ジャンのペアの負けですね。それでは、罰ゲームです。罰として、 ハウレーンさんは、ジャン君の頬にキスをしてもらいます。」 ケンスケに促され、ハウレーンは渋々ジャンの頬にキスをした。その後、みんなにからか われて、ハウレーンの顔は真っ赤になってしまった。 「はい、次はカップル同士による対戦です。くじ引きの結果により、最初は僕と森川さん のペアと、ミリア・マックスのペアでの対戦になります。」 そして、ケンスケは司会をトウジに任せてミリア達と勝負をした。もっとも、ケンスケは 端から勝つ気が無かったため、ユキの太股をわざとまさぐって、驚いてユキが身をよじっ た時にバランスを崩したふりをして、上手く負けることに成功した。 「ひえ〜っ、惣流さん。まいりましたよ〜っ。」 ユキは、アスカの側に寄ってきて、困ったような顔をした。 「いいじゃないの。負けてもキスするだけなんでしょ。アタシだけがするなんて不公平だ から、ユキもしなさいよね。」 「そっ、そんなあ〜っ。」 「ヒカリも、自分の誕生日の時にやったしね。まあ、諦めなさいよ。」 アスカは、自分がもう済んだもんだから、気楽に言う。 「ひえ〜ん。いやですよおっ。」 それに対して、ユキは泣きそうな顔をしていた。 「いいじゃない。相田とキスくらいしたことあるんでしょ。」 「え、ええっ。そりゃあ、無いとは言いませんけど。惣流さんには遠く及びませんよ。」 「何よお。それじゃあ、アタシがしょっちゅうしてるみたいじゃない。」 「えっ、違うんですか。毎日、最低2回はしているっていうのは、嘘なんですか。」 「誰よおっ、そんなことを言う奴はっ。」 (げえっ。何で知ってるのよっ!) アスカは、内心では驚きながらも、努めて平静を装う。 「あのお、本人の前なんで、言えません。」 「何っ。」 ユキの視線の先には、シンジがいた。シンジは、アスカから体を離した。 「あっ、あのっ、アスカ。怒らないでね。」 「シンジ、みんなにそういうことを言いふらしている訳えっ。」 (まったく、こいつはっ!何てことを言うのよっ!) アスカの眉は、見事につり上がった。 「ご、誤解なんだ。前に1回だけ、トウジに言っただけなんだ。ほら、ゼーレとの戦いの 前に、アスカと婚約を一時解消したでしょ。あの頃のことなんだ。」 「本当にそうなの?」 (ちぇっ、あの時か。じゃあ、あんまり強く言えないわね。) 婚約解消の時の話を出されたら、アスカも口調がトーンダウンしてしまう。おそらく、ト ウジがシンジのことを心配してあれこれ聞いて、シンジがアスカと1日2回もキスしてい るから大丈夫だと答えたのだろう。もしそうなら、そのことを責めるのは酷であることは、 アスカにも分かっていた。 「うん、本当だよ。」 シンジの顔が少し青くなり、しきりに首を縦に振った。 「もうっ、しょうがないわねえ。あっ、見て。ヒカリ達が負けたわよっ!」 アスカが言った時、ヒカリ達は、テリーとアニーのペアに負けるところだった。 「じゃあ、次は私達ですね。頑張らないと。」 ユキは、張り切って言うと同時に立ち上がった。 「頑張って負けなさいよね、ユキ。」 「ひ〜ん、惣流さん。酷いですよお。」 真面目な顔が、一瞬にして泣きべそのような顔に変わった。 「あははっ、見てよシンジ。ユキったら面白い顔をしてるわよっ。」 「そ、そうだね。」 内心、一緒に笑いたいシンジであっただろうが、ユキに恨まれるのを恐れて、素直に笑う ことはなかった。 そして、結果は…。 「キ〜ス!キ〜ス!キ〜ス!」 「キ〜ス!キ〜ス!キ〜ス!」 「キ〜ス!キ〜ス!キ〜ス!」 「キ〜ス!キ〜ス!キ〜ス!」 「キ〜ス!キ〜ス!キ〜ス!」 「キ〜ス!キ〜ス!キ〜ス!」 みんなの声援を受けて、ユキは泣く泣くケンスケとキスをした。 だが、キスを終えたユキの顔は紅潮し、まんざら嫌な様子ではなかった。むろん、ケンス ケが極上の笑顔を浮かべていたのは、言うまでもない。 もちろん、ユキは知らなかった。ヒカリ達がわざとアニー達に負け、ケンスケがわざと負 けたことを。この企みに、ヒカリまでもが加担していることに。 「ひ〜ん、惣流さん。負けちゃいましたよお。」 ユキは、半べそをかきながら、アスカの元にやって来た。 「よしよし、ユキ。良く頑張ったわね。えらいえらい。」 アスカは、ユキの頭をよしよしと撫でた。 「やめてくださいよ〜っ。すっごく、恥ずかしかったんですよお〜っ。」 「その割りには、嫌がっていなかったじゃない。」 「だって、嫌そうな顔をすると、相田君に悪いと思ったんですよおっ。」 「まっ、その調子じゃ、あんまり仲は進んでいないけど、それなりに順調っていう感じか しらね。デートなんかもたまにはしてるんでしょ。」 「ええ、まあ。毎週、相田君に誘われてます。」 「家にも来るんでしょ。」 「ええ。妹達と遊んでくれて、結構助かってます。」 「ふふふっ、そういう惚気が言えるんじゃ、ばっちりね。」 「え〜っ、惚気なんかじゃないですよおっ。」 「本人にはその気が無くても、そういうのは惚気って言うのよ。」 「そうですかあ。」 「そうよ。」 そう言いながら、アスカはゲームはどうなっているのかと見てみたら、凄いことになって いた。 「げっ!リツコがキスしてるっ!」 そう、マヤ・シゲルのペア対リツコ・マコトのペアが勝負していたのだが、なんと、男が 女を抱っこして、女が男の頭の後ろに手を回しながらキスをしていたのだ。結果は、マヤ 達の負けであった。 だが、アスカは次のケンスケの言葉でさらに驚く。 「はい、次は碇・惣流ペア対葛城夫妻ペアです。」 「ぬあんですってっ!」 (が〜ん。またもや、はめられたあ。) アスカは、愕然とした。だが、異様に盛り上がっているこの場では、今更断れない。 「よっ、アスカ。頑張れよ。」 アスカの心の内を知ってかしらずか、リョウジが気軽に声をかけた。 「加持さ〜ん。お願いだから、さくっと負けてね。」 両手を合わせるアスカだったが、ミサトが横から口をはさんだ。 「そうはいかないわよ、アスカ。私は、負けるのが嫌いだから、本気でいくわよ。」 「げえっ。勘弁してよおっ。」 (シンジったら、ジャンケンが弱かったわよね。さいあく〜っ。ちくしょう〜っ。ミサト も一枚噛んでるわね。) むろん、ユキと同じでアスカも知らない。みんながグルであることを。リョウジとシンジ がジャンケンを長引かせるべく、事前に打合せをしていたことを。 そして、結果は…。 「げえっ!負けちゃったじゃないっ。」 そして、次はマヤ達との勝負である。アスカは、マヤを思いっきり睨み付けた。 「マヤッ!もしアンタ達が勝ったら、絶対に許さないからねっ!」 「そ、そんなあ。たかがゲームなのに。」 眉をひそめるマヤの耳元で、アスカ小声でささやいた。 「その代わり、わざと負けてくれたら、アンタのこと、許してあげるから。」 そう、アスカは罰ゲームが恐ろしかったのだ。おそらく、とんでもない罰ゲームが待って いるに違いない。だが、断ることも出来ない。そうなると、なりふり構わず勝つしかない のだ。たとえ、マヤを脅してでも。 「分かったわ…。」 マヤが頷くのを見て、シゲルがにやりと笑ったのだが、マヤは気付かなかった。 そして、結果は…。 「やったわあっ。勝ったわ、勝ったわよっ!」 アスカは、満面の笑顔を浮かべた。そう、なぜか急にバランスを崩したマヤを支えきれず に、シゲルがよろめいたため、アスカ達が勝利したのである。 そして、罰ゲームは…。 「さて、今回の罰ゲームを考えたのは、葛城ミサトさんで〜す。負けたペアは、2つの罰 ゲームのうち、1つを選ぶことが出来ます。1つは、10分間一緒にシャワーを浴びて来 ること。もう一つは、布団の中で10分間裸で抱き合うこと。さあ、どちらにしますか。」 マヤは、迷った末に一緒にシャワーを浴びてくることを選んだ。みんなの視線を感じなく てすむからだ。 マヤは恥ずかしそうに、シゲルは嬉しそうな顔をして、浴室に消えて行った。10分後に 現れた二人が、思いっきりからかわれたことは言うまでもない。 「ふ〜っ、助かった〜っ。」 ほっとしたアスカだったが、それ以後も気を抜けなかった。ゲームはそれで終わりでは無 かったからだ。その後も、男女が組んで対戦するお色気ゲームが続いたのである。 次なるゲームは、ペアビンゴゲームだった。ビンゴゲームと違うところは、大きな紙の上 で男女が交代に体の一部を数字の上に置くところだ。男女交代にというのがミソで、男女 の体の一部が接触する可能性が非常に高いのだ。 これも同じような組み合わせで行い、アールコートがアリオスの頬にキスをし、再びユキ とケンスケがキスをし、リツコとマコトが一緒にシャワーを浴びる結果となった。 その後にみんなで夕食を食べ、またもやゲームをすることになった。 その次のゲームは、くっつきゲームだった。ペアが交代であらかじめ用意してある紙をめ くっていくのだが、その紙には体の一部が書いてあるのだ。 例えば、男が「右手」を引いて、女が「胸」を引いたら、男は女の胸に右手を触れるのだ。 もちろん、パスが3回まで認められていている。物理的に触れることが出来ない場合や、 先の例の場合のように、女の子が嫌がった場合などに認められている。 パスが4回になった時点で、そのペアの負けとなる。 このゲームは結構盛り上がった。女の子が結構きわどい体勢になったり、罰ゲームが秘密 であったため、負けるのを嫌がった女の子が、パスをあまり使わなかったためである。 最初の組合せでは、アールコートだけがパスを多用したため、結果的にアリオスと10分 間キスすることになってしまった。 次の組合せでは、ユキがやや多くパスを使ったため、罰ゲームをすることになってしまっ た。罰ゲームは、再びくっつきゲームをすることだったが、ルールがかなり違っていた。 今度は、服の上から触れることは認められず、しかも、物理的に不可能な場合以外は、パ スが認められないのだ。 最後の組合せの中で、アスカはパスを使わなかった。胸にシンジの手が触れようと、お尻 にシンジの頬がくっつこうとも、物理的に触れることが可能であれば、パスをしなかった のだ。このため、再びマヤ達が負けることになってしまった。 最後に、ユキ達とマヤ達の勝負になったのだが、この勝負は苛烈を極めた。ケンスケの右 手は運良くユキの背中に触れることになったのだが、左手は胸になってしまった。しかも、 ユキの左手はケンスケのお尻に触れることになってしまった。 だが、運良くユキは勝ち残り、マヤ達の負けとなった。罰ゲームは、裸で抱き合ってキス をすることだった。もちろん、男どもは部屋から追い出され、終わった後に服を着たマヤ しか見ることが出来なかったのだが。 こうして、トウジ達の企みで、シンジの誕生会はお色気たっぷりなものになり、特に男子 が異様な盛り上がりを見せる結果となった。また、いわゆる、おいしい思いをした男子も 多かったのである。 イライザなどは内心面白くなかったが、それはむしろ例外で、女子も他のカップルを見て、 きゃあきゃあ言いながら喜んでいたのである。 そして、ゲームが終わった後も、夜遅くまで宴は続けられた。罰ゲームをした女の子が感 想を聞かれまくられたのは言うまでもない。 *** 「はあっ。疲れたわねえ。シンジ、直ぐに寝よう。」 誕生会が終わり、みんなを送り出して、アスカとシンジはベッドの上で横になった。アス カは疲れて、今にも寝たい気分だった。 「うん、いいよ。でも、お願いがあるんだけど。」 「ああ、この間のお願いのこと?他のお願いじゃ駄目なの?」 「う、うん。だって、僕はとっても不安なんだ。アスカがいつか、僕から離れてどこかに 行ってしまうんじゃないかって。だから、…。」 そう言いながら、シンジは俯いた。 「でもね、シンジ。アンタ、ケダモノにならないって約束出来るの。我慢出来るもんなの。 ちょっと信じられないんだけど。」 「そうだよね、信じてもらえないよね、僕なんか。」 シンジの顔は、暗くなっていく。 「もうっ、そんなに落ち込まないでよね。分かったわよ、信じてあげるわよ。」 「ええっ、じゃあっ。」 「でもね、今日じゃないわ。2日後よ。」 「えっ。どういうこと?」 「当日に言って驚かそうと思っていたんだけど、まあいいか。明後日はねえ、一流ホテル のディナーを予約しているの。もちろん、シンジと二人っきりで食事をするのよ。」 「ええっ、本当なの?アスカと二人っきりなの。凄く嬉しいな。」 シンジの顔が、ぱあっと明るくなった。 「そのまま、そのホテルに泊まることにするわ。お風呂でシンジの背中を洗ってあげるし、 何も着ないで一緒に寝てあげる。でもね、それ以上のエッチなことは駄目よ。それは約束 してね。」 「うん、約束するよ。エッチなことは、絶対にしないよ。」 「絶対よ。破ったら承知しないから。」 「うん、約束する。アスカが嫌がることはしないよ。アスカのことが大好きだから。」 「はいはい、信じてるわ。」 そう言って、アスカはにっこり笑った。 その夜、シンジは嬉しくて、なかなか眠れなかった。 ***  こうして、二日後に二人っきりでホテルで豪華なディナーを食べることになり、シンジ にとって最高の誕生日となった。その夜二人の間に何があったのか、それは分からない。 だが、翌日のアスカは、普段と何ら変わらぬ歩き方をしており、まだまだ少女のままであ ったようだ。シンジは約束通り、ケダモノにはならなかったようだ。 だが、何年か後に、シンジの至上の喜びと引き換えに、アスカは激痛を伴う経験をするこ とになる。もちろん、シンジの誕生日にであるが、まだ、シンジはそのことを知らない。 アスカだけが知っていた。 (第80話おまけへ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき  テニスをしたり、キャンプに出かけたり、中学生らしい生活を満喫する一方で、研修生 の暴走があったりで、波瀾万丈のアスカとシンジでした。ですが、二人の仲は、ますます 近くなっていきます。  この後、アスカとシンジは再び戦乱に巻き込まれますが、二人の絆はますます強くなっ ていくでしょう。  また、その他のメンバーの仲も、いつのまにか進んでいっています。 2003.8.15  written by red-x



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