新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセ


第77.5話 殺到

「ひええ〜っ、なんてこった!こりゃあ、大変だ〜っ!」 ケンスケは、一人頭を抱えていた。それは、『惣流アスカと碇シンジを応援する会』、略称 『LASの会』への入会希望者が予想をはるかに超えており、その処理にてんてこ舞いして いたからだった。 「どうですか、相田君。」 そこにユキがやって来た。 「おっ、森川。良いところに来てくれた。入会希望者が多くて、大変なんだよお。手伝って くれよ〜。」 ケンスケは、藁にもすがるような目でユキを見た。 「ええ、いいですよ。」 もともと手伝うつもりだったユキは快諾し、二人がかりで頑張ったのだが、なかなか処理が 追いつかない。それどころか、どんどん未処理の入会申込が増えていくありさまだった。 「ど、どうしてこんなに入会希望が殺到しているんですか。」 「う〜ん、多分ネルフのホームページにリンクを貼ったからだと思う。いわば、ネルフ公認 だからな。」 「そうですか。良く考えればその通りですよね。でも、このままだと大変なことになります よね。どうしましょうか。」 「そうだなあ。何かいい方法はないかなあ。」 「惣流さんに相談しましょうよ。」 「いや、それはまずい。」 ケンスケは、アスカに今相談するのは直感で危険だと判断したのだ。 「じゃあ、どうします?」 「最初はシンジに相談してみるよ。」 ケンスケは、すぐにシンジに連絡した。すると、シンジはその点は対策を既に講じている とのことだった。 (げっ!嘘だろ…。) 内心思いっきり疑ったケンスケだったが、シンジの言うことを黙って聞いた。 「実はね、リツコさんとマヤさんに頼んでおいたんだよ。自動で入会処理を行うソフトの 開発をね。それで、さっき出来たって連絡があったんだよ。」 「えっ、本当かよ。そりゃあ、助かるなあ。ありがとう、シンジ。」 「そんなこと言わないでよ。僕とアスカのためにやってくれてるんでしょ。これくらい、 当たり前だよ。じゃあ、今からソフトを送るね。」 「ああ、頼むよ。」 ケンスケは電話を切ると、パソコンでシンジからのメールを受信し、直ぐにソフトをイン ストールした。 「どうですか、相田君。」 ケンスケがパソコンをいじっている後ろから、ユキが覗き込んできた。 「うん、こりゃあいいや。パソコンを起動しておいてネットにつないでおけば、自動的に 入会処理をしてくれるみたいだ。」 「まあ、良かったですね。碇君もたまには気が利くんですね。」 「ああ、そうだな。」 そう答えたケンスケだったが、心の中では別のことを考えていた。 (きっと、惣流が手を回したんだろうな。リツコさんからシンジに提案させて、シンジが 自分の意思で頼んだように思わせて。そうじゃなければ、シンジがそこまで気が回る訳が ないよなあ。) むろん、ケンスケの予想は大当たりだった。 *** ともあれ、『LASの会』の入会希望者が殺到し、1日も経たないうちに会員は10万人 を超えてしまった。会費を月500円にしたことから、5千万円の収入が見込まれるので ある。 「こ、これは、大儲けのチャンスだったのにっ!」 だが、ケンスケは逆に肩を落とした。会長になってしまったからには、アスカの写真でボ ロ儲けなどというセコイ真似は出来そうに無いからだ。 「でも、しょうがないか。」 ケンスケは、もうすぐ給料日が来ることを思い出した。アスカの話では、今後給料日ごと に最低でも100万円はもらえるとのことだった。 「そういや、惣流の下僕になることの条件に、写真の販売をやめるっていうのがあったっ け。陰で写真を売って、万一惣流にばれたらただじゃ済まないか。」 ケンスケは、エヴァンゲリオンのパイロットになったことを少しだけ後悔した。だが…。 「まあ、いいや。金儲けにならなくても。俺の撮った写真を、少しでも多くの人に見ても らえるもんな。」 そう呟きながら、ケンスケは会員証に使うための写真を選ぶのだった。 一方、その頃…。 「キイーッ!悔しいっ!」 マナは『LASの会』のホームページを見て、怒り狂っていた。 (第78話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき  『LASの会』の会員は、その殆どがアスカファンです。公認アスカファンクラブが、 女性限定であるため、アスカファンの男は『LASの会』に入るしかないわけです。 2003.7.14  written by red-x



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