新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセ
第65.5話 怪しい動き
「おい、今のを見たか?」
「ああ、見たとも。あの、マナっていう女の子は、碇のことが好きらしいな。」
「アスカちゃんのライバル登場、っていう訳か。」
「しかしよお、俺達研修生の中でも、碇のことが好きな女の子が多いよな。全く、ムカ
つくよ、何が英雄だ。司令の息子だからって、たまたまエヴァンゲリオンに乗れただけ
なのによ。それが、アスカちゃんと婚約なんかしやがって。」
「そうさ、あんな奴、俺達と比べたら、クズみたいなもんさ。あいつったら、ろくな訓
練もしないでエヴァに乗れたっていうけどよ、きっと何かインチキしてるんだぜ。そう
に違いないさ。」
「あんな奴、ボコボコにしちまおうぜ。」
「おいおい、それは、やめた方が良いぞ。」
「何だよ、怖じ気づいたのかよ。」
「いや、そうじゃねえよ。奴の側にはアスカちゃんがいつもいるしよ、隣に住んでて、
食事はいつも一緒なんだろう?ボコボコにしちまったら、一発でアスカちゃんに分かっ
ちまうじゃねえか。」
「構わねえさ。アスカちゃんも、奴が情けねえ奴だって知ったら、愛想を尽かすに違い
ないさ。」
「それがよお、そうでもねえらしいんだ。奴は、以前はもっと情けなかったらしいんだ。
俺の情報だと、奴は相田よりも弱かったらしい。むろん、アスカちゃんよりも数段な。
それによ、ドイツ支部の連中からの情報なんだが、奴は以前、不良高校生にボコボコに
されたことがあったらしいんだが、やった奴らがどうなったと思う?」
「さあ、どうなったんだ?」
「全員、半年以上入院するほどの重傷だとよ。そのうえ、高校生に脅されて手引きした
女の子も、1カ月入院したらしい。」
「おいおい、どういうことだよ。」
「どうやら、ネルフの諜報部かワイルドウルフが動いたらしい。」
「おいおい、マジかよ?」
「ああ、だから碇には下手に手出ししない方が良いぜ。奴は、葛城さん夫妻と物凄く仲
がいいんだと。それもよ、葛城作戦部長はつい最近まで一緒に住んでいて、奴のことを
『シンちゃん』とか呼んで、可愛がっているらしい。奴がボコられた後、しばらくの間
怒りまくっていたらしいしな。」
「そうか、それで怒った葛城作戦部長が、諜報部長に言って、諜報部かワイルドウルフ
を動かした、きっとそうに違いない。」
「作戦部長と諜報部長が味方じゃあ、ネルフの中では怖いもの無しだな。もっとも、奴
は司令の息子だったか。」
「だが、あの司令はあまりみんなに好かれていないからいいが、葛城作戦部長は凄く人
気があるぞ。美人で、明るいし、親切だし。気分が変わり易いのが欠点だが、根は優し
いってみんな言うしな。あの人を敵に回したら、本部にはいられなくなるぞ。」
「ちきしょう、アスカちゃんは奴にとられちゃうのかよ。」
「悔しいよな。いや、まてよ、良い考えがあるぞ。」
「何だよ?」
「あの、マナっていう娘を利用するんだよ。碇とあの子をくっつけちゃおうぜ。碇に危
害を加えるのは絶対にヤバイけどよ、女の子をけしかけるくらいだったら、構わねえだ
ろう。」
「そうだな。駄目で元々だしな。」
「そうと決まったら、他の連中にも声を掛けようぜ。但し、女子に知られたら大変なこ
とになるから、絶対に秘密だぜ。」
こうして、アスカやシンジの知らないところで、怪しい動きが始まったのだった。
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2003.1.7 written by red-x