新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセ


第43話 the phoenix operation

「いい,マヤ。カウントダウンを始めて。落ち着いてね。」 「はい,先輩。ten…,nine…,eight…,seven…,six…,five…,four…,three…,two…, one…,zero…,the phoenix operation start!」 「the phoenix operation start!」 「the phoenix operation start!」 「the phoenix operation start!」 「the phoenix operation start!」 「the phoenix operation start!」 「the phoenix operation start!」 「the phoenix operation start!」 「the phoenix operation start!」 「the phoenix operation start!」 「the phoenix operation start!」 中国支部,インド支部,ドイツ支部,ドイツ第2支部,イギリス支部,フランス支部,ア メリカ支部,アメリカ第3支部,ブラジル支部,エジプト支部の各支部のオペレーターも, マヤのカウントダウンに合わせて作戦開始を宣言した。 今日,3月11日の1800をもって,S計画(ゼ−レ殲滅・掃討計画),NR計画(NERV再生 計画),ER計画(EVANGELION再生計画)の要とも言うべき,「the phoenix operation」 (フェニックス作戦)が始動したのだ。 ネルフ本部に海外の10支部を交えた本格的なゼーレ攻略作戦,それがフェニックス作戦 なのだ。ネルフが不死鳥のように甦ってゼーレを倒すようにとの,アスカの願いが込めら れているのである。 この日を選んだのは,金曜日の夜であり平日と比較してMAGIの負荷が軽いこと,日本 は夜になるがヨーロッパはこれから1日の動きが始まること,等々の理由があった。日本 が18時の時には,イギリスが9時,アメリカ東部が4時,アメリカ西部が1時となり, 金曜日の経済活動がこれから始まるのだ。 発令所では,ゲンドウや冬月はもちろんのこと,ミサト,加持,リツコ,マヤ,マコト, シゲル,といったネルフ幹部の面々が揃っていた。 今回の作戦の総指揮官は,冬月とされていたため,冬月は基本的には発令所からは動かな い。ゲンドウは,ネルフ司令として必要に応じて立ち会うこととされていた。だが,実際 の指揮はアスカが採っているため,冬月はアスカと事前に打ち合わせた通りに命令を下す だけである。ゲンドウの役目は,冬月が休憩している時の代行である。 「日向君,あとよろしくね〜ん。」 ミサトは作戦開始を見届けると,発令所を去って行った。この作戦の最初の内は,技術部 が行い,作戦部の出番は無いからである。加持も同様であるため,ミサトと共に去って行 った。 「あ〜あ,お前も可哀相だな。」 「元気出して下さいね。」 シゲルとマヤがマコトを気遣うが,マコトは笑っていた。もう,ミサトのことは吹っ切れ たようだ。そんな清々しい顔をしていた。 だが,無論ミサトは休む訳ではない。皆には秘密であるが,アスカの補助をするという, 地味だが重要な役割があるのである。 *** 「は〜い,アスカ。調子はどうよ?」 ミサトは,通称アスカルーム,即ち技術部副部長室へとやって来た。無論,加持も一緒で ある。 「今は,リツコやマヤにお任せだから,のんびりしているけど,後2〜3時間位したらこ こも忙しくなるわ。皆には,その時まで仮眠してもらっているのよ。」 アスカの視線を追うと,シンジの部屋との境目がパーテーションで区切ってあるのが分か る。そこでマリアを始めとするミラクル5の面々が仮眠しているのだ。 「あっそう。アスカも休んだら。」 「大丈夫よこの位。それよりも,加持さんのお手伝いをして欲しいのよ。」 「まっかせなさ〜い。という訳で,加持,始めるわよ。」 「ああ,頼む。」 加持は,市内各所に散らばる傭兵部隊との連絡が主な役目だ。この作戦を妨害しようとし てゼーレが動くかもしれないし,予想外の戦力が急に攻めて来る可能性も捨てきれないか らだ。その場合,可能な限りここで支援して,発令所には計画遂行に全力を注いでもらう つもりなのだ。 加持はミサトの助けを借りながら,傭兵の各部隊と連絡を取り,作戦が1800をもって開始 されたことと,ゼーレの攻撃がいつあってもおかしくない状況であることを説明していっ た。そして,30分毎の定時連絡も義務づけた。 「アスカ,今の所は異状は無い。どんな小さな異状でも報告するようにと伝えてある。」 「加持さん,ありがと。さあてと,お次は敵戦力の状況ね。悪いけど,手伝ってね。」 アスカはMAGIを駆使して,正面に据えつけられた100インチのプラズマディスプレ イに世界地図と敵戦力の配置を映す。 「あ〜あ。何か,前よりも戦力が増えているじゃない。」 画面の下の方に,敵戦力の合計が表示されている。原子力潜水艦が20艦,通常型潜水艦 が50艦,空母が20隻,各種艦艇が300隻,以上が敵の海上,海中兵力だ。航空兵力 は,戦闘機1000機以上,爆撃機50機以上だった。 3週間近く前の予想では,原子力潜水艦が10艦,通常型潜水艦が30艦,空母が10隻, 各種艦艇が100隻,戦闘機500機以上,爆撃機50機以上だったのだから,概ね敵の 予想戦力は倍増していた。 さすがにミサトや加持の顔面も蒼白になる。以前の敵予想戦力でも,かなり厳しいのに, それが倍増したとなると,はっきり言って勝ち目はさらに薄くなる。だが,それを察した アスカが二人を励ました。 「大丈夫よ。アタシが付いているもの。その代わり,アタシが手を貸すんだから,二人の 結婚式には必ず呼んでよね。」 「ああ,そうするよ。」 加持は知っていた。アスカはここで戦う義務は無いのだ。大人と違ってしがらみも無く,金 銭的にも困ることが無いアスカは,友人達を引き連れてどこかに雲隠れするという選択肢も あるのだ。アスカの母親の魂が眠る弍号機はここになく,もうアスカを縛るようなものは何 もないからだ。 そのアスカが何故ここで戦うのか。その原因はミサトとシンジに他ならない。幼い頃,母親 に見捨てられたアスカは,家族の絆を心の底から欲していた。だから,ミサトが家族ゲーム と言ったような仮初めの家族でも,アスカは失いたくなかったのだろうと加持は考えていた。 おそらく,シンジだけならば,アスカは首根っこを捕まえて連れ去って行っただろう。だが, ミサトにはそんなことは出来ない。ミサトが加持を見捨てて逃げる訳は無いからだ。そうな ると,結果的に加持がアスカを危険な目に遭わせていることになる。 加持は,アスカに対して,すまないという気持ちと,感謝の念で一杯だった。 ***  作戦が開始された頃,シンジ達エヴァのパイロット達は,ケージに集合していた。 「…というわけで,これから少なくとも48時間は,我々パイロットは交代で即時出撃体制 のまま待機ということになります。何か質問はありますか。」 シンジはそう言いながら周りを見渡した。すると,マックスが手を挙げた。 「はい,質問をどうぞ。」 シンジに促され,マックスはおずおずと聞いた。 「他のパイロットはどうしたんですか。」 マックスが不思議に思うのも,止むを得ないだろう。今この場には,シンジ,マックス,ト ウジ,アリオス,カヲル,ケンスケの6人,つまり半分しかいなかったからだ。この質問は 予想の範囲内であったため,シンジはすらすらと答えることが出来た。 「ミリアさん,マリアさん,ミンメイさん,サーシャさんは,別の極秘任務に就いています。 状況によってはこちらの方に合流することも有り得ますが,可能性はかなり低いでしょう。 キャシーさんとアールコートさんは,惣流指揮官が戦力外と判断したため,別の任務に就い ています。」 「分かりました。では,続きをどうぞ。」 マックスは,納得した訳では無かったが,これ以上シンジに聞いても無駄だと判断したよう だ。実際は,シンジはアスカに次いでこの作戦のことを知っていたのだが。 「交代は,3時間毎とします。第1班の渚三尉とアリオス一曹は,これから3時間の待機を お願いします。第2班の鈴原三尉と相田一曹はその後3時間,第3班の私とマックス一曹は その後3時間。以後はその順番で待機します。但し,私と相田一曹以外の者は,この場から 離れることを禁じます。仮設の休憩室と仮眠室をあつらえましたので,その場からは離れな いで下さい。以上です。」 要は,最低2日間はこの場で待機しなければならないということだ。シンジは皆を見渡した が,特に質問もなさそうだ。 「では,解散!渚三尉とアリオス一曹は,直ちに任務に就いてください。」 シンジの言葉が終わると同時に,カヲルとアリオスはエントリープラグへと乗り込んだ。 ***  二人が乗り込むと同時にLCLがプラグ内を満たしていく。 「アリオス君,僕は映画でも見ているよ。君もそうしたらどうかい。」 カヲルはアリオスに声をかけたが,アリオスは驚いた。 「そんなことをしちゃあ,まずいんじゃないか。」 戦闘待機中に映画を見るなんて,彼には考えられなかったのだ。 「大丈夫さ。惣流指揮官の許可は取ってあるよ。それに,彼女も今回はあまり固くならない ようにと言っていたしね。逆に積極的に映画を見るようにと勧められたよ。」 「そ,そうかい。」 「但し,条件があったよ。『救世主アスカ』を見ていないなら,必ず最初に見ること,って ね。君はもう見ているかい。」 「ああ,DISKをもらったその日に見たよ。」 「じゃあ,映画の見方を教えるよ。ネルフには最新の映画もストックされているからね。じ ゃあ,いいかい。」 こうして,カヲルとアリオスは映画を見ながら,のんびりとした時間を過ごすのだった。    ***  一方,トウジとマックスは休憩室へと向かった。そこには液晶テレビが24台あり,うち 12台がテレビ・映画等の娯楽用,残り12台が連絡・通信用だった。そこでトウジはテレ ビを,マックスは映画を見ることにした。 ケンスケは,仮設の通信室へと向かった。そこにはMAGIと繋がる端末が何台か設置して あった。ここでのケンスケの役目は,ゼーレの軍事力の動向を探ることだった。もちろん, MAGIも様々な手段を講じて,ゼーレの動向を探っているが,ケンスケの軍事マニア間の ネットワークも重要である。 この人的なネットワークを使いこなせるのは,ケンスケしかいないため,ケンスケの重要性 はかなり高いものになっていた。ケンスケは,MAGIの助けも借りながら,世界中の軍事 施設の監視も行っていた。1発のNN爆弾が全てを決する可能性があるのだ。ケンスケの目 は真剣だった。 ケンスケが得た情報は,瞬時にしてアスカの元へ伝わる手筈になっていた。仮にゼーレが一 発で勝負を決めようとして,ICBMを撃ち込んできたとしても,エヴァが即時出撃し,こ の第3新東京市を守ることが出来る筈だった。 いくらゼーレでも,30万市民が暮らしているこの都市にそんな無謀な攻撃を仕掛けること は,常識的に考えても有り得ないが,可能性は零ではない。その万一の時のためにエヴァの パイロット達は交代でいつでも出撃出来るように待機しているのだ。 「シンジにばっかり負担をかけられない。俺も頑張らなくちゃ。それに,好きな女の子位, 守れないとな。」 いつになく,ケンスケの目は真剣だった。 ***  残るシンジは,仮設分隊長室へと向かった。ここのモニタには,アスカ達の居る部屋の状 況が映し出されていた。うち,1台のモニタは,自動追尾カメラと連動したもので,常にア スカを映し出していた。もちろん,音声も聞こえるようになっている。アスカを見ると,自 然とシンジの心は落ち着いていく。 さらに,発令所のメインスクリーンに連動したモニタやアスカルームのプラズマディスプレ イに連動したモニタもあり,シンジはここにいながらにして,全体の動向を把握出来るよう になっていた。シンジが戦局を多角的に把握出来るようになることを願う,アスカの配慮で ある。 それに,アスカの頭の中では,シンジはアスカに次いで,ネルフのナンバー4である。今回 に限らず,重要な情報は全てシンジに渡るようになっていた。もっとも,シンジはアスカの 意図を100%理解しているとは言い難かったが,アスカから受け取る情報について,自分 なりの判断を加えて,エヴァの戦闘に役立てようとしていた。 「僕が出撃するような事態にならなければいいけどな。」 シンジの願望が,独り言となって現れていた。 (第43.5話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき  S計画の第3弾が開始されました。果たしてアスカの作戦は成功するのでしょうか。そ して,シンジに活躍の場があるのでしょうか。 2002.6.23  written by red-x



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