新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセ
第42.5話 ミリアの決意
「今日は,お前達に重要な指令がある。」
そう言って,ジャッジマンは部下達を見渡した。ジャッジマンの部下は,傭兵部隊だけで
はなく,第3新東京市で各種スパイ活動をしている者,組織がアスカに与えた企業で働い
ている者,様々だったが,今ここには隊長格の者,20人が集まっていた。
「今日,盟主様からの直々の指令が下った。一度しか言わないから,良く聞くんだ。」
ジャッジマンは大きく息を吸い込み,空気を震わせて言った。
「碇シンジのために,死ね!」
その瞬間,部下達は固まった。
***
「お前ら,ちょっと来い。」
そう言われて,マックス,ミリア,アリオス,アールコート,キャシーの5人は,特訓が
終わった後にジャッジマンに呼び出された。無論,全員がジャッジマンと同じ『サグ』と
いう組織のメンバーだ。
「今回の戦いで,我々の組織はネルフに全てを賭けた。おそらく,3月中に決着するだろ
う。そこでだ。惣流アスカか碇シンジから何か頼まれたら,決して断るな。もし,このう
ちの誰か一人でも断ったら,連帯責任としてこの場の全員に罰が与えられる。良いな,こ
の命令は絶対だ。」
それを聞いたミリアの顔が歪んだ。ここにいるメンバーは,何かしら訳ありであった。例
えばミリアの場合は,自分を育ててくれた義理の親のためだった。ミリアの養親は,ミリ
アのような,親を亡くした子供達を大勢引き取って育てていたが,事業に失敗して,膨大
な借金を抱えてしまっていたのだ。
そんな時に手を差し伸べてくれたのが『サグ』という組織だった。ミリアの何処が気に入
ったのか,ミリアの体をいかようにしても良いという条件で,『サグ』はミリアの養親を
援助しており,今もそのお蔭で,ミリアのきょうだい達が生き長らえているのだ。
ミリアの予想に反して,性的な命令は皆無だったが,激しい軍事教練によって,ミリアの
肉体は酷使された。だが,体を壊すほどの度を過ぎた訓練は要求されず,無茶な命令も受
けることは無かった。
ただし,毎日のように,組織の命令には絶対に従うことを誓約させられていた。『死ね。』
と言われたら,ためらわずに死ぬようにとも。もし,命令に反したら,今まで援助を受け
てきた金を養親は組織に返さなくてはならない。それは,ミリアのきょうだい達の不幸を
意味するのだ。
『死ね。』と言われることに比べたら,今回の命令はかなり穏当なものだろう。何故なら,
惣流アスカは,付き合いの短いミリアから見ても公明正大であるし,尊大で我が儘なよう
でいて,実は面倒見の良い姐御肌であることが分かってきたからだ。それ故か,アスカの
周りには不思議と男女を問わず,アスカを慕う者が寄って来ているのだ。
一方の碇シンジは,心の底には熱いものを持っているようだが,普段はとても優しい。訓
練の時に,周りの者のミスでシンジが殴られても,シンジは決して責めない。それどころ
か,励ましてくれるほどだ。
それ故,パイロット候補生達は,例外なく二人のことを気に入っているし,その点から言
えば,誰も命令違反などしないだろう。かえって,二人の手助けをしたいと思っているく
らいだからだ。
自分の我が儘のために,周りの者に迷惑をかける訳にはいかない。ミリアはこの時,心を
決めた。ミラクル5として,アスカに協力することを。
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2002.6.21 written by red-x