第１８．５話 夢の中の綾波
シンジは、夢を見た。
（碇君…碇君…。）
（僕を呼ぶのはだあれ。）
（碇君…碇君…。）
（もしかして、綾波なの？）
（私の声が聞こえる？）
（うん、聞こえるよ。今、何処にいるの？）
（とてもとても遠い所。そして、とても寒い所。）
（良かった。綾波は、生きていたんだ。こっちにおいでよ。）
（駄目。今は行けない。）
（どうして。）
（私は、アスカさんを救わなければならないの。）
（アスカを？）
（彼女は、遠い将来、たった一人で戦わなければならない運命にあるの。）
（そんな。僕がいるじゃないか。）
（駄目。碇君が死んだ後の事だもの。）
（僕は、早死にするの？）
（多分…違う。）
（他にもアスカの味方がいるでしょ。）
（駄目。皆が死んだ後の事だもの。）
（それは、何年後のことなの？）
（言えない。）
（どうして。教えてよ。）
（駄目。）
（じゃあ、誰と戦うの。）
（地球上の全ての国。）
（ええっ、そんなあ。勝ち目が無いじゃないか。）
（そうかもしれない。）
（止められないの。）
（分からない。）
（アスカは助かるの？）
（分からない。）
（何で戦うの。）
（自由と正義のため。）
（何でアスカなの。）
（彼女は誇り高い戦士だから。）
（アスカはか弱い女の子だよ。強くないよ。）
（彼女は強く気高いわ。誰よりも。）
（でも、皆が死んだ後だと、おばあさんだよ。）
（ううん、戦うのは、若さみなぎる時。）
（じゃあ、子供を産む前なの？）
（分からない。）
（アスカは誰かの子を産むの。）
（多分…碇君の子。）
（えっ。僕はアスカとは結ばれるの？）
（それは…分からない。）
（戦う時、子供はどうするの。）
（いないわ。）
（どこにいるの。）
（お墓の下。）
（そんな…。）
（孤独に戦う。それが運命。）
（じゃあ、アスカは戦った後も無事なの。）
（多分…でも、分からない。）
（僕は、どうすればいいの？）
（彼女に伝えて。弍号機は、火星にあるの。）
（ええっ、そんなところにあるの。）
（絶対に伝えて。）
（うん、分かったよ。）
（これから、渚君がそちらに行くわ。）
（カヲル君が？）
（ええ。いつ着くのか分からないけれど。）
（何で分からないの。）
（時空を超えて行くから。）
（じゃあ、綾波は、いつ帰ってくるの？）
（分からない。）
（帰ってくるの？）
（分からない。）
（どうして、教えてくれないの。）
（知らないから。）
（そんなあ…。）
（碇君。お願い。絶対に伝えて。）
（うん、分かったよ。）
（渚君は、記憶を失うかもしれない。）
（そうなの。）
（だから、渚君を探して。碇君に会えば思い出すから。）
（うん、分かったよ。でも、一つだけ教えて。）
（何。）
（えっ。僕はアスカとは結ばれないの？）
（それは…。）
そこで、僕の夢は終わった。
＊＊＊
アスカにこの事を話したら、笑い飛ばされたけど、僕は、何故か本当の事のような気が
した。でも、僕が死んだ後で、若さみなぎるときって、一体いつだろう。僕が、早死にし
ないなら、何だ、つじつまが合わないじゃないか。アスカが笑う訳だよ。
それに、結ばれるかどうか分からないのに、アスカが僕の子供を産むなんて。でも、アス
カって、母親の真似をするかもしれない。そうすると、僕と結婚しなくても、僕の子供を
産むことが有り得るんだ。
僕は、冗談で、『僕のＤＮＡはちゃんと保管してあるの？』って聞いたら、アスカは驚い
たような顔をしていた。もしかして、アスカは僕のアレをどこかに冷凍保存しているのか
もしれない。僕は、何だか嫌な感じがした。
僕は、それっきり、この夢のことを忘れることにした。
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あとがき
第２部の後半までには、カヲルが出る予定です。これは、そのための前振りです。なお、
蒼い瞳のフィアンセの中では、アスカが地球上の全ての国と戦うことはありません。もし
かしたら外伝とか何らかの形でその話を書くかもしれませんが。
2002.1.4 written by red-x
あとがきの追加
アスカが地球上の全ての国と戦う物語は、『蒼い瞳の戦士』として、FUJIWARAさんのサ
イト、FUJIWARA FUNFICTION STATION に投稿しました。
アスカの正義と、敵の正義がぶつかり合う、シリアスな展開です。一応、この話の続編
となりますが、『蒼い瞳のフィアンセ』はハッピーエンド＆ＬＡＳエンドになる予定なの
で、『蒼い瞳の戦士』は『蒼い瞳のフィアンセ』のアナザーエンドとするかもしれません。
『蒼い瞳の戦士』がハッピーエンドになる可能性も結構高いですが、まだどうなるのか
思案中というところです。
なお、タームさんのサイト、The Epistlesに投稿している『蒼い瞳のツインズ』は、
『蒼い瞳のフィアンセ』の続編で、アスカとシンジの子供達の話です。最初は、痛い系か
と思われるかもしれませんが、途中からＬＡＳ好きの人向けの話になります。
2002.12.16 written by red-x