新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセ



どうしようか。アタシのぼせちゃって、体を拭けそうにないの。でも、シンジはアタシ
の体を拭くなんていやだろうし。せっかく体が暖まったのに。はあっ、参ったわね。どう
しようかしら。


第3話 アタシをお風呂に連れてって


 トウジと別れてから、やっとの思いで、住まいに辿り着いたシンジとアスカだったが、 既にアスカのお腹は空っぽになっていた。 「お腹空いた、お腹空いた。シンジ、早くご飯作ってよ〜。」 「はいはい。これから作るから、ちょっと待ってて。」 そう言うとシンジは晩ご飯の準備を始める。 「シンジ〜。その前にお風呂お願いね〜。」 「はいはい。アスカ、ちょっと待ってて。」 そう言って、シンジは風呂の準備をすると、直ぐに料理を始める。今日は、アスカの好き なハンバ−グだ。既にご飯はタイマ−で炊いておいたので、味噌汁とサラダを作れば、後 はハンバ−グだけだ。シンジは冷蔵庫から挽き肉を出すと、上手にこね始めた。 「シンジ〜。お風呂まだ〜。」 いい所でアスカの邪魔が入る。だが、シンジは嫌な顔一つせずに風呂の湯加減を見る。 「アスカ〜、ちょうどいいよ〜。もう。入ってもいいよ〜。」 それを聞いて、アスカは風呂に入ろうとしたが、一瞬、動きが止まった。 「アタシ、どうやって入ればいいの?」 アスカは、自分の体が思うように動かないことをうっかり忘れていたのだ。 (しょうがないから風呂に入らず、タオルで体を拭こうかしら。う〜ん、でも、せっかく 風呂が沸いているのに、もったいないわね。これは却下ね。でも、シンジに入れてもらう のも恥ずかしいし。でも、そんなこと言ってられないか。要は、シンジに裸を見られずに 風呂に入れればいいのよね。そっか、タオルで大事なところだけ隠せばいいのよね。水着 だと思えばいいのよ。そうすれば、シンジも意識しなくて済むし。ウン、そうしよう。) アスカは、さんざん迷ったが、結局、シンジに手伝ってもらうことにした。この時、ア スカは、自分が病院で寝ていた時にシンジが自分に何をしたのか、知らなかった。このた め、シンジのことを人畜無害な男の子と思っていたのである。もし、病院でのシンジの所 業を知っていたら、アスカは決してこんなことを頼まなかっただろうし、この後の展開も かなり変わっていたことであろう。だが、アスカは頼んでしまったのである。 「シンジ〜。こっちにきて〜。」 (まったく、アスカは人使いが荒いや。) そう思いつつも、シンジは『は〜い』などと返事をしてしまう。シンジがリビングのソフ ァで横になっているアスカの所へ行くと、アスカはさも当然というように言い放った。 「シンジ、小さいタオルを2枚持ってきて。」 ところが、急に言われても、シンジはアスカの部屋に何があるのかわからない。 「え、どこにあるのかわからないよ。」 「じゃあ、アンタのでもいいわ。とにかく、直ぐに持ってきて。」 「わかった。ちょっと待ってて。」 アスカに反論しても怒らせるだけだと経験則からわかっていたため、シンジは自分の部屋 に行き、タオルを2枚持ってきた。下手にアスカの部屋をいじろうものなら、どんなとば っちりに会うかわかったものではないからだ。 「これでいいかい。」 「ありがと。ちょっとあっち向いて待ってて。」 シンジは、頭を捻りながらも、言う通りにした。しばらくごそごそという音がしていたが、 まもなくすると止んだ。 「いいわよ、こっち向いて。」 その声に振り向くと、なんと、アスカが裸になっていた。シンジが渡したタオルは胸と腰 に巻いてあるが、それ以外は、肌が丸見えである。しかも、アスカの胸が大きいのと、シ ンジが持ってきたタオルが小さいことから、アスカの胸が今にも見えそうな感じである。 シンジは思わず真っ赤になってしまった。 「ア、 ア、アスカ、なんて格好してるんだよ。」 シンジの声は見事に裏返っていた。 「だって、しょうがないでしょう。アンタに運んでもらわなきゃ、アタシは風呂に入れな いんだから。それとも、アタシに服を着たまま風呂に入れって言うの。四の五の言わずに さっさとアタシをお風呂に運ぶの!い・い・わ・ね!」 アスカは相変わらず命令口調である。本当はアスカも恥ずかしいのだが、アスカが恥ずか しがっていると、シンジが余計に意識してしまうことが分かりきっているため、アスカは あえて強がって見せているのだ。 「う、うん、わかったよ。その代わり、目を閉じているよ。」 「ア、 アンタ、バカァ?アンタが目を閉じたら、アタシを運ぶ時に転ぶかもしれないじゃ ない。アタシが落ちてけがでもしたらどうするの。ハハァ〜ン。さては、わざと転んで、 その隙に私のタオルをうまくはぎ取ろうって魂胆ね。シンジったら、本当にドスケベね。」 「ご、誤解だよ。そ、そんなことないよ。」 「だったら、さっさと運ぶ。風邪ひいちゃうでしょ。」 「わ、わかったよ。」 シンジはこれ以上抵抗しても無駄だと悟ると、ようやく観念し、アスカを持ち上げて風呂 に運んだ。 「シンジ、ありがとね。また呼んだらすぐ来てね。」 「う、うん、わかったよ。」 アスカがにっこり笑って礼を言ったが、シンジはアスカを直視できずに、さっさとキッチ ンに戻って料理の続きをした。 (う〜ん、アスカは僕をからかっているのかなあ。でも、アスカは風呂好きだし、アスカ の言う通り、僕が運ばないと、アスカが風呂に入れないのも事実だし。そうだよな、から かうなら、とっくに笑いだしているよな。でも、笑ったアスカってやっぱりかわいいな。) シンジは、アスカがからかっているわけではないと判断し、冷静になるように自分に言い 聞かせた。 (でも、僕の前であんな姿になるなんて、僕のことを信じているのか、それとも男だと思 っていないのか、どっちなんだろう。どっちにしても、あまりいいことじゃあないかな。 でも、こんなこと、ケンスケには絶対言えないな。うらやましいって言われるだろうな。 でも、普通に考えると、いいことだよね。女の子のあんな姿を見られるなんて。しかも、 アスカは性格を抜きにすればかわいいし、普通なら、あんな姿をお目にかかるなんて、滅 多にないしね。ぜいたく言ったら罰が当たるか。) そんなことを考えていると、アスカからお呼びがかかった。 「シンジ〜。こっちにきて〜。」 シンジはお風呂に入ると、絶句した。アスカの体は洗ったばかりのため、体中が濡れて おり、体に巻いた白いタオルが透けて見えていたのだ。一瞬、目をそらそうとも考えたが、 悲しい男の性か、いったん目に入ってしまったため、目を離すことが出来なくなってしま ったのだ。しかも、アスカは気付いていないらしい。 「シンジ〜。アタシを湯船に入れてよ〜。」 「う、うん、わかったよ。」 シンジは、アスカが風邪をひいてはまずいので、素早くアスカを持ち上げ、湯船に入れた。 「シンジ、ありがとね。また呼んだらすぐ来てね。」 またアスカはにっこり笑う。 「う、うん、わかったよ。」 そう言うと、シンジはそそくさとお風呂から出た。 (う〜ん、怒らないアスカはアスカらしくないけど、笑顔のアスカはかわいいな。どっち のアスカが本当のアスカなんだろう。どっちも捨て難いかな。) そうこうしているうちに料理は出来上がった。すると、見計らったようにアスカの声が した。 「シンジ〜。バスタオル持って、こっちにきて〜。」 シンジは言われた通り、バスタオルを持って行った。すると、アスカはちょっと困った 顔をしていた。そして、さも申し訳なさそうな顔をして言った。 「シンジ〜、どうしようか。アタシのぼせちゃって、体を拭けそうにないの。でも、シン ジはアタシの体を拭くなんていやだよね。どうしようかな。」 アスカは、久々のお風呂に喜んでしまい、ついついのぼせてしまったらしい。 (え、ア、アスカは何言っているの。アスカの体を拭く。え〜っ!) シンジは、固まってしまった。 (第4話簡易バージョンへ) (第4話正式バージョンへ) (目次へ)

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 2001.9.23  written by red-x



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