新世紀エヴァンゲリオン 外伝 超少女アスカ
第99話
「ねえ、アスカ。起きてよ。ねえ、アスカ…。」
う〜ん、何よシンジ。もう少し寝かせてよね。アタシはねえ、猛烈に眠いのよ。シンジっ
たら、本当に気が利かないのよねえ。
「う〜ん、もう少し待ってよ。」
「じゃあさ、いつものようにお目覚めのキスをしてもいいかな?」
なによ、シンジったらふざけちゃって。でも、まあいいか、キスくらいなら。
「うん、いいわよ。しょうがないわねえ。」
でもね、アタシがそう言ったら、悲鳴があがったの。
「キャーッ!アスカったら、いやらしいわね!毎朝、碇君とキスしてるのねっ!」
「ちょ、ちょっと、どうしたってえ〜のよ。」
アタシは、イマイチ状況が掴めなかった。昨日の夜、ミサトと色々と話し込んだから、ま
だ脳が完全には起きていないのよ。
「惣流さん、自分が今何を言ったのか、気付いていないんですか?」
えっ、なによ。アタシ、何か変なことを言ったのかしら。え〜っと、あっ、あっ、あっ、
しまったあ〜っ!
「ちょ、ちょっと待ってよ。今のは冗談だから。」
アタシは、大慌てで飛び起きたわ。が〜ん!そういや、今は海辺のホテルにいるのよね、
ヒカリやユキ達と一緒に。だから、シンジが女の子の部屋に居るわけないのよ。だから、
ヒカリかユキがシンジの声色をまねてアタシをからかって、まんまとアタシが引っかかっ
たという訳ね。アタシにしては、信じられないようなミスね。
「駄目よ、アスカ。私達はこの耳でちゃ〜んと聞いたわよ。アスカが碇君とどういう仲な
のか、はっきりと分かったわ。」
「そうですよ、惣流さん。分かっちゃっいましたよ。」
ちょ、ちょっと待ってよ、ヒカリにユキ。そんなにニヤニヤしないでよね。アタシは、目
の前が真っ暗になったような気がしたわ。でね、しばらく二人にからかわれたのよ。だけ
ど、アタシだっていつまでも黙っちゃいないわよ。
「ん、もう〜っ!それ以上言うと、アタシも反撃するわよっ!あ・の・こ・と、しゃべっ
ちゃうからね。」
あんまりヒカリとユキがからかうもんだから、アタシはちょっとほっぺたを膨らませたの。
そうしたらね、ヒカリもユキも慌て出したのよ。だって、ほら。思い当たる節がたくさん
あるからじゃない。
「あっ、そっ、それはちょっと。ごめんね、アスカ。ちょっと言いすぎたわ。」
「ごめんなさい、惣流さん。許してくださ〜い。」
なんて言いながら、ぺこぺこ謝り出すのよ。ん、もうっ、そんなことするくらいだったら、
最初っから言わなけりゃいいのに。
「まあ、いいわ。それより、朝御飯を食べましょうよ。」
「うん、そうね。」
「そうですよね、早く行きましょう。」
こうして、アタシ達は素早く身繕いをして、レストランに向かったの。
***
「うわあ〜っ、バイキングだわ。それも、和洋中揃っているわね。」
「おいしそうですねえ。好きなものが食べられるんですね。いいですねえ。」
レストランに着いたら、ヒカリとユキは目を輝かせたわ。
「えっと、シンジ達はいるかしら。」
アタシ達が辺りを見渡すと、すぐにシンジ達は見つかったわ。アタシ達は、各自2皿分の
料理を選んでからシンジ達のところに行ったの。
「なによっ、シンジ。アタシ達を置いていくなんて酷いじゃない。」
アタシが少しだけ、本当に少しだけ目を細めたら、シンジは慌てて弁解したわ。
「ごめんよ、アスカ。でもさ、お腹が空いちゃってさ。落ち着いたら呼ぼうと思ってたん
だけど。」
「まあ、いいわ。許してあげる。」
アタシは、鈴原の横に異様に積まれた皿を見て瞬時に首謀者を理解したわ。こいつが嫌が
るシンジ達を連れて来たのね。間違いないわ、きっと。
「良かった。じゃあ、こっちにおいでよ。」
アタシは迷わずシンジの前に座ったわ。アタシの横にはヒカリさらにその横にはユキよ。
もちろん、ヒカリの前には鈴原が、ユキの前には相田がいるわ。
「じゃあ、食べましょうよ。いただきます。」
「「いただきます。」」
アタシ達は速攻で食べ始めたわ。でもね、ユキが相田と同じ料理を食べているのを見て、
アタシはちょっとしたいたずらを思いついたの。
「ねえ、ユキに相田君。あっちを見て。クラスメートに似ている人がいるんだけど。」
「「えっ?」」
ユキと相田がよそ見をしている間に、二人の皿を取り替えちゃったのよ。
「あのお、あの人は違うと思いますけど。」
「ああ、あんまり似てないと思うけどな。」
そりゃそうよ。嘘だもの。
「そうかしら。まあ、いいわ。食べなましょうよ。」
そうして二人とも食べ始めたんだけど、頃合いを見て暴露しちゃったのよ。
「ユキ、ごめん。そのお皿、相田君の皿と取り替えちゃったのよ。」
「ぶ〜っ!」
言った途端、ユキは盛大に吹き出しちゃったのよ。もちろん、吹き出したものは、目の前
にいた相田の顔に見事命中したわ。ナイス、ストライク!
「ひ、酷いよ、森川さん…。」
でもね、相田は涙を流さんばかりの顔になったわ。ふん、情けない男。
「ご、ごめんなさい、相田君。それにしても、ひ、酷いですよ、惣流さん。」
ユキは少し頬を膨らませたわ。
「ごめんなさい。直ぐに気付くと思ったのよ。謝るから、許してね。」
でもね、アタシが少し神妙な顔をして謝ったら、ユキは許してくれたけどね。でもね、相
田が横から口を挟んだのよ。
「だ、誰かタオルを貸してくれよ…。」
「あっ、ごめんなさい。」
ユキは、タオルを借りにすっ飛んで行ったわ。でも、可哀相なのは相田ね。顔中ゲロまみ
れっていう感じ。おかげで、鈴原はもちろんのこと、シンジやヒカリまでもが笑っていた
わ。
「惣流、あんまりじゃないか。」
みんながあまりにも笑うもんだから、相田は恨みがましく言ったけど、冗談じゃないわ。
「相田君は、ユキのことを好きなんでしょ。だったら、喜ばなきゃ。顔に付いているのも
食べたら。間接ディープキスになるじゃない。こんなチャンスは滅多にないわよ。」
「あっ、そうか。」
馬鹿な相田は、アタシの言ったことを鵜呑みにして、本当に口の周りに付いていたユキの
ゲロを食べちゃったのよ。げ〜っ、気持ちわる〜い。そこにユキが来たもんだから、さあ
大変。
「きゃ〜っ、相田君。やめてくださいよ〜っ!」
ユキは焦っていたもんだから、けつまずいてしまったの。
「ガシャーン!」
哀れユキは、ゲロまみれの相田の顔に…。
「あっ、大丈夫?うわあ〜っ!」
さらにシンジが慌てて近寄ったもんだから、同じくつまずいてしまったのよ。そして、ユ
キの上に乗っかっちゃったの。そしたらユキと相田の口は、さらに強くくっついたの。
「シンジ、大丈夫っ!」
悪のりしたアタシは、つまずいたフリをしてシンジの上にダイブ。おかげで、たっぷり5
分の間、ユキと相田はキスをするはめになったわ。ユキ、これは今朝、アタシをからかっ
た報いよ。
つづく(第100話へ)
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あとがき
果たして、ケンスケは幸運だったのか、不運だったのか。どちらなんでしょう。
2004.1.23 written by red-x