新世紀エヴァンゲリオン 外伝 超少女アスカ

第56話

「ねえ、アスカ。まだ怒ってる?」 「なんのこと?」 なによ、シンジったら。電気を消してから10分くらい経ったから、もう寝ようって時間 なのに。 「あの、その、アスカのお腹に…。」 「ああ、オシッコを漏らしたこと?良いのよ、気にしなくて。もう、怒ってないわ。」 「ああ、良かった。アスカったら、物凄く怖い顔をしていたから、気になっちゃって。」 あら、そうかしら。それはちょっとまずかったわね。シンジがアタシを怖がるようになっ たら、これからの訓練その他がうまくいかなくなるもの。ちょっとごまかしておかないと ね。 「ええっ、そんなに怖い顔してたかしら。確かに、いきなりの出来事で驚いたけど。」 「うん、凄く怖い顔をしていたよ。」 「でもさ、シンジだっていきなりお腹にオシッコをかけられたら驚くでしょ?」 「うん、そうだね。」 「でさ、普通は驚いた顔って、笑った顔よりも怒った顔に近いわよね。」 「う〜ん、そうだろうね。」 「だから、そういうことよ。」 「そうか、安心したよ。」 おっと、ここでちょっとブリッコ(へへっ、死語かしら。)しておこうっと。 「でもね、シンジ以外の人だったら、思いっきり殴っているけどね。」 「えっ。何で?」 「だってさ。」 「だって?」 「だってなんだも〜ん。」 「なんだよ、それ?」 「いいじゃない。もう寝ましょうよ。」 アタシは、シンジの手を握りしめたわ。そうしたら、シンジも手を握り返してきたの。し めしめ、うまくごまかせたようね。 「シンジ、お休みなさい。」 「アスカ、お休み。」 こうして、ちょっと良い雰囲気でこの日は終わったの。 *** 「おっはよ〜っ、シンジ!」 やっぱり、朝は元気にあいさつするのが基本ね。アタシは、まだ目をこすっているシンジ をたたき起こしたわ。 「あっ、おはようアスカ。」 えっ、そんなに大きな声を出して大丈夫かって?ビール腹星人がそんなことで起きるわけ ないでしょうに。大きな口を開けて寝ているわよ。 「あ〜っ、朝の牛乳っておいしいわね。シンジも飲みなさいよ。」 アタシは、もう半分に減った牛乳パックをシンジに渡したの。 「えっ、これって、間接キスじゃあ。」 そしたら、シンジの顔がほんのり赤くなったの。 「なによ〜っ。アタシとシンジの仲でしょ。細かいこと言わないでよ。それとも、アタシ とキスするのは嫌なわけ?」 アタシは頬を膨らませたわ。 「ううん、全然嫌じゃないよっ!」 シンジは、少し赤くなりながらもアタシの渡した牛乳パックを受け取って、残りを全部飲 み干したの。でもね、急いで飲んだからむせちゃったみたいで、ゲホゲホしだしたの。ま ったく、シンジったらしょうがないわねえ。 「どう、おいしかった?アタシの唾液入りの牛乳は?」 アタシはニヤニヤ笑って言ったわ。 「ア、アスカ。な、なんてこというんだよ。」 シンジったら、すぐに赤くなっちゃって。 「シンジが必要以上に気にするからでしょ。もう、いい加減慣れなさいよね。間接キスを 気にするなんて、変よ。」 「う、うん。分かってはいるんだけどさ。」 「まあ、急には無理よね。それくらいは分かっているから。それよりも、早く行きましょ うよ。」 「うん、分かったよ、アスカ。」 こうして、早朝訓練が始まったわ。 ***  アタシとシンジは、恒例のランニングをしていたわ。そうしたら、 「あれっ、アスカ。何か人の声がするよ。」 訓練の最中に、シンジが何か言い出したの。 「何よ、アタシには聞こえないけど?」 「あれっ、気のせいなのかなあ。」 「どれどれ?」 アタシは立ち止まって周りを見渡したわ。そうしたら、公園の方から人の声がしたのよ。 だから、ちょっと立ち止まって耳を澄ませてみたの。 『おんどりゃあ〜っ!なめとんのかいや〜っ!』 『い、いえ。滅相もありません。』 『いっぺん、死んだろか!』 『ドカッ!バキッ!』 『ギャアッ!』 あ、あら、なんかヤバそうな雰囲気ね。 「ア、アスカ。何か、おヤクザさんみたいだよ。早く逃げようよ。」 シンジの顔は、既に真っ青になっているわ。 「何言ってるのよ。困った人を見捨てるわけ?アタシはそんなことは出来ないわよ。シン ジも来なさいよね。」 「ええっ、止めようよ。」 でも、アタシはシンジの腕を掴んで、公園の中に入って行ったのよ。そしたら案の定、黒 いサングラスをかけた人相の悪い男二人がいて、その側に40代前後のサラリーマン風の 男が倒れていたのよ。 「アンタ達、何やってんのよ!」 その声に、男二人が振り向いたの。 「なんや、ねえちゃん!威勢がいいのう。」 「あっちいっとれや。関わりにならん方が利口やで。」 男達は、へらへら笑って言うのよ。まったく、頭きちゃうわよね。 「その人が何かしたんですか?手荒な真似は良くないと思いますけど。」 「そやかてなあ、このおっちゃんは借金を返さへんのや。」 「そうや、借金返さん奴は、悪いやっちゃ。」 何言ってるのよ。こいつらは。 「でも、暴力はいけないと思います。」 「ほう、ねえちゃん。こいつの代わりに、借金はろうてくれるんか? 「そ、それは…。」 「ほな、こういうのはどうや。ねえちゃんがワイらと一緒にホテルに行くんや。まあ、2 時間もワイらに好き放題させてくれるっちゅうんなら、今日のところは大目に見るがの。」 あったまきたあっ!こいつら、天誅を下してやるわ。 「ふん、アンタ達みたいな悪党、成敗してやるわ。シンジ!いいからやっちゃいなさい!」 「えっ、そ、そんなあ。」 シンジは嫌そうな顔をしたわ。もう、シンジったらしっかりしてよね。アタシは、シンジ の耳に口をつけてこう言うったの。 「シンジ。アタシを守ってくれないの?アタシのことが好きなら、証拠を見せて。」 「ええっ。で、でも…。」 少しだけ空白の時間があったけど、結局シンジはこう言ってくれたの。 「わ、分かったよ。僕、やってみる。」 こうして、シンジとヤクザ者のケンカが始まったわ。 つづく(第57話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき  さて、シンジはアスカの前で、さっそうと戦うのか、ボコボコにされるのか。どちらで しょう? 2003.1.22  written by red-x



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