新世紀エヴァンゲリオン 外伝 超少女アスカ

第111話

「ハーッ!」 アタシは気合を入れてスマッシュを相手コートに打ち込んだわ。もちろん、相手はボール に触れられもしなかったの。で、主審がコールしたの。 「ゲーム。ウオン・バイ・ソウリュウ。」 よっし、これでアタシが勝ったていう訳よ。それと同時に、アタシ達壱中の勝ち抜きもね。 コートからもうちの学校の連中が大喜びしているのが見えたわ。とりあえず、1回戦は簡 単に勝利したわ。そう、今日はもう土曜日。今はテニス大会の真っ最中なのよ。 アタシがコートを出ようとすると、ヒカリがニコニコしながら寄ってきたわ。 「アスカ、凄いわね。ラブゲームなんて。」 もちろんユキもよ。 「惣流さん、本当に凄いですよ。今の人、春の新人戦地区大会で優勝した人なんですよ。 そんな人に一方的に勝つなんて、本当に凄いです。」 ユキは興奮していたけど、アタシにとってはこれくらいお茶の子サイサイなのよね。たか がボールを打ち合うゲームで、アタシが同年代の子に遅れをとる訳がないのよね。でもね、 思ったことをそのまま言うのはまずいのよね。 「まあ、今日は調子が良かったのかしらね。とにかく、勝って良かったわ。」 えっと、日本では謙遜っていうのが必要なのよね、確か。 「次の試合は後1時間後ですから、それまで休んでましょうよ。」 ユキの提案で、アタシ達はひとまず休むことにしたわ。芝生の上でのんびりとね。 *** 「で、男子はどうなの?」 ユキに聞いたら、ユキはケータイを取り出して何やら操作し始めたの。そして、にっこり 笑ったわ。 「良い知らせです。男子も1回戦突破です。良かったですねえっ。」 別に、シンジが出ている訳じゃないから、男子がどうなろうと知ったこっちゃないけどね。 でも、負けてればシンジがこっちに応援に来るかもと期待していたんだけど、思ったよう にはいかなかったみたい。 「どうしたのよ、アスカ。あんまり嬉しそうじゃないわね。」 ヒカリがアタシの顔を覗き込んできたわ。 「べ、別に、そんなことないわよ。勝って当たり前だと思ってたから、嬉しいってことは ないけどね。ちょっとホッとしたっていう感じかな。」 アタシが思っていることを勘づかれたかと思ったけど、そんなことはなかったみたい。そ の証拠にユキはこう言ってにっこりしたもの。 「さすがは惣流さんですね。上手い人が言うと、カッコいいです。」 でもね、ヒカリは首を傾げていたのよ。ふう、危ない。まっ、ユキのおかげで助かっちゃ ったかな。でも、アタシ達がのんびりくつろいでいたのに、それを邪魔する輩が現れたの よ。 「あなたが惣流さんね。」 見るからに体育会系っていう感じの女の子が数人現れて、厳しい目をしながらこっちを睨 み付けるように見ていたの。何か、あったまくるわね。こいつら、どうやってへこまして やろうかしら。アタシは素早く頭を回転させて答えたの。 「はい、私が惣流です。何か、ご用でしょうか。」 そうして首を傾げてにっこり笑ったの。そしたら、向こうは毒気を抜かれたみたいで少し 戸惑ったようだったけど、ほどなく立ち直ったみたい。先頭の女の子がいったんは緩んだ 顔を再び険しくしたわ。 「ええ、そうよ。私達は、次にそちらと対戦する強羅中のテニス部よ。地区大会優勝者の 加護さんがいる箱根中を打倒するために頑張ってきたのに、あなたみたいなガイジン崩れ に負けるなんて思ってもみなかったわ。どんな奇跡が起きたのかしら。」 ぬあんですって!何が言いたいのよ、こいつはっ!でも、顔はにっこりよ。 「そうなんですかあ。あの人、調子が悪かったんですか。どうりで、テニスを始めて2週 間の私に負けたはずだわ。」 「えっ、あなた、初心者なの?」 奴らの顔が、今度は驚きの顔に変わったわ。 「ええ、テニスは初心者です。でも、以前はバドミントンをやってましたから。まあ、テ ニスと似たようなものですから、慣れるのは早かったですね。」 奴らは顔を見合わせて話しだしたわ。 「どうりでサービスのミスが無かった訳ね。」 「そうよね。いくら調子が悪かったとはいえね。」 「あの加護さんが初心者に負けるなんておかしいと思っていたけど。」 「そういうことだったのね。」 そして、急にさっきの憎たらしい奴がこう言ったの。 「惣流さん。奇跡は2度続けて起きないものよ。次は覚悟しなさいね。」 でも、アタシはそれでもにっこり。 「はい、分かりました。よろしくお願いします。」 「ま、まあ。分かればいいのよ。とにかく、次は私達が勝たせてもらうわね。」 「はい、分かりました。お手柔らかにお願いしますね。」 「ええ。さあ、行きましょ。」 そいつらは、またぞろぞろと群れながら去って行ったわ。そして、かなり離れた頃合いを 見計らってユキに聞いたの。 「ねえ、ユキ。強羅中って、強いの?」 「はい、そうです。そして、春の新人戦の地区大会決勝戦で加護亜依さんと接戦の末に負 けたのが、多分今の人、和田明子さんです。」 「ふうん、そうなの。結構迫力のある人だったわね。背も高かったし。加護さんはアタシ と同じ美少女っていう感じだったのに、かなり差があるわねえ。」 「そうですね。って、何を言わせるんですか。惣流さんも人が悪い。」 ちょ、ちょっと待ってよ。アタシが言わせたって言うの?そりゃあ、あんまりよユキ。 「あっ、ユキったら酷いこと言う。そんなこと言うと、くすぐるわよ。」 アタシは、ユキの脇の下を強襲した。 「きゃあっ、止めてくださいっ!」 ユキが暴れるもんだから、テニスウエアがはだけて、胸がポロンしちゃったの。そこに運 悪くシンジが来ちゃったのよ。 「わあっ、何やってんだよ。」 まずい!ユキの胸を隠さないと。アタシは手近なものでユキの胸を覆ったの。 「わあおっ!」 声する方向を見たら、なんと相田が。しかも、アタシが相田の手を掴んでいて、それでユ キの胸を隠していたのよ。 「惣流さん、酷いですうっ!」 げっ、まずい!アタシは動転して、さらにとんでもないことをしちゃったの。 「わっ、惣流!待てよっ!」 へっ?あっ、まずい。間違えて、相田のもう片方の手で、ユキの残る胸を隠しちゃったの。 げっ、大失敗。ユキがさらに大声を出しちゃったの。こりゃあ、直ぐに黙らせないと周り の人の注目を浴びちゃうわ。 「ユキ、ごめん。」 アタシは、相田の頭を掴んで自分に引き寄せたの。えっ、アタシと相田の顔がくっつくっ て?残念ながら、その間にはユキの顔があるの。だから…。 「ブッチュウ!」 おお、なんと!もろにユキと相田の口がくっついちゃったみたい。ユキ、許して。騒ぐあ なたが悪いのよ。で、余計に暴れようとするユキを抑えるため、アタシは更に力を強くし ていったの。そしてユキは信じられないことに10分も抵抗したのよ。 *** 「ひ、酷いですようっ、惣流さんっ!」 10分後、ユキは本当に泣いていたわ。ということは、10分も相田とキスして胸を揉ま れていたわけよ。まあ、恋人同士だから全然問題はないわね。 「いいじゃない。相手は恋人の相田君なんだから。」 アタシは慰めたんだけど、ユキはカンカンに怒っていたわ。 「でも、人前なんですよっ!」 「じゃあ、人前じゃなければいいのね。」 「あっ。そ、そういう訳じゃあ。」 「そんなこと言ったら、相田君が可哀相でしょ。アタシが悪いんだから、相田君が嫌な想 いをするようなことを言ったら駄目よ。分かるわよね、ユキ。」 アタシが凄い剣幕で詰め寄ったら、ユキったら慌てて低姿勢になったわ。こういうところ にユキの人の良さが滲み出ているのよね。まあ、アタシにとっては都合が良いけど。 「はい、確かにそうですけど。」 ようし、ここで一気に押しましょ。 「じゃあ、しばらく二人きりになりなさいよ。」 アタシはユキと相田をみんなから引き離して、人気のない方へと連れて行ったの。よしよ し、上手くユキお騙せたっと。でも幸い転じて福とナスよ。これを機会に、二人の仲が深 まることを期待するわ。 つづく(第112話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき  相変わらず、ケンスケは役得が多いようです。それにしても、アスカは想像を絶するほ どのスポーツ万能少女です。テニスもプロ並の腕前ですから、中学生では歯が立たない訳 です。なお、アスカが言いたかったのは、「災い転じて福となす。」でした。   2004.7.28  written by red-x



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