新世紀エヴァンゲリオン 外伝 超少女アスカ
第105話
今日は水曜日。放課後にはエヴァゲームをやってからネルフへ行く日よ。でもその前に、
お昼の楽しいひとときが待っているのよ。
「アスカって、本当に凄いわよねえ。才色兼備なうえにスポーツ万能だし、格闘技の腕前
も人並み外れているし。アスカみたいな女の子が本当にいるなんて信じられないわ。」
今日もヒカリが本当のことを言って感心してるわ。ユキもそうよ。
「洞木さんはまだいいですよ。料理の腕前なら惣流さんより数段上ですから。私なんか、
料理の腕前も敵わないし、何もいいとこないんですから。」
ユキは、ふうっとため息をついたわ。
「そ、そんなことないさ。少なくとも俺は、惣流よりも森川の方が可愛いと思っている。」
そう言う相田の顔は少し赤かったわ。なんか、恥ずかしいことを平気で言うわね、こいつ。
でも、分かっちゃいないわねえ。ユキが少しムッとしてるわよ。
「あのお、気持ちは嬉しいんですけど、惣流さんよりも可愛いって言われても、真実味が
ないですよお。なんか、かえって惨めになっちゃいますよ。」
ユキの顔は少し暗くなってしまったわ。ふん、バカねえ。本人が外見のことを気にしてい
るのは見え見えじゃない。だったら、内面のことで褒めればいいのに。もうちょっと頭を
使いなさいよねえ。
「そ、そうだよ、ケンスケ。アスカの方がずっと可愛いじゃないか。森川さんの良いとこ
ろは、さらさらでつやつやした綺麗な長い髪と、おしとやかなところだろ。」
むっ。何よ、シンジったら。アタシ以外の女の子を褒めるのは禁止よ。でも、ユキの機嫌
が少し直ったみたいだからいいか。
でも、いい気分だわ。同じ年代の友達とこうやっておしゃべりすることが、こんなに心が
安らぐことだなんて、ドイツにいた頃は思わなかったわ。
このメンバーにしても、会ってからまだ2週間そこらしか経っていないのに、こんなに打
ち解けて幼なじみみたいに話せるなんて、信じがたいわよね。
何といっても、内向的な性格のシンジが、こんなに早くみんなと打ち解けることが出来る
なんて、さすがのアタシですら予想だにしなかったもの。
やっぱりアタシの作戦が良かったからよね、きっと。お料理会やお買い物、一緒の部活に
入って、一緒に海に行ったもの。知り合ってからの期間が短い割りには、一緒に過ごした
時間は結構長かったものね。
アタシは少し静かにしていたけれど、それでも会話が続くのよ。これなら、アタシはずっ
とシンジの側にいなくても平気そうね。
でも、聞きたいことがあったのよね。そろそろ会話に参加しないと。
「ねえ、ユキ。公式戦って、一体いつなのよ?」
「えっと、確か今度の土曜日だったと思います。」
「ええっ、そんなに急なの。」
ありゃっ、ちょっとまずかったかしら。次の使徒がいつ来るのか分からないから、もっと
シンジを訓練させたかったんだけどなあ。海に行った分のロスも取り返さないといけない
のよねえ。
「あのお、惣流さん。何かまずかったですか。」
ありゃ。ユキが心配しちゃったみたい。でも、聞くべきことは聞いておかないとね。うっ
かり聞き漏らしたなんて、アタシにしては珍しいミスだもの。
「その公式戦ていうのは、土曜日で終わりなの?」
「いえ、勝ち進めば続きますよ。」
「ええっ、それっていつまで続くのよ?」
「そうですねえ。8月まで続きますけど。6月中は県大会ですし、7月には関東大会で、
その次が8月の全国大会です。」
げえっ、なんてことかしら。アタシはこの第3新東京市からは出られないのに、どうした
もんかしらね。
「ちなみに、会場はどこなのよ。」
「えっと、県大会までは第3新東京市ですが、そこから先は分かりません。多分、第2新
東京市だとは思いますけど。」
ふうっ、そこなら比較的近いわね。少し安心したわ。でも、良い考えが浮かんだから、出
来れば実行しようっと。
***
学校の帰りにエヴァゲームを何回もやって、もちろんアタシとシンジが一杯勝って、今日
も良い気分でネルフへと向かったわ。ネルフの中に入ると、アタシはシンジと別れてミサ
トを探したの。
「あっ、いたっ。ね〜え、ミサト。」
アタシはミサトを見つけると、急いで側に駆け寄ったの。
「あ〜ら、アスカ。一体どうしたの?」
「あのね、ちょっとお願いがあるのよ。」
「なあに。」
どうせ、ろくでもないことを頼むんでしょ、ってミサトが言うのよ。酷いわよね。
「実はね、2つお願いがあるの。2つともテニスに関係するんだけどね。」
「ふうん、言ってみなさいよ。」
「最初のお願いは、テニスの公式戦の会場を第3新東京市にしてほしいのよ。万一のこと
があっても、アタシやシンジが早くエヴァに乗れるようにね。」
「ああ、そういうことね。それなら、十分検討の価値はあるわね。」
「次はね、公式戦の試合に混合ダブルスを加えて欲しいの。」
「へっ?どういうことよ、アスカ。」
「もちろん、アタシとシンジが一緒にテニスの試合に出るためよ。その方が、使徒との戦
いで有利になると思うからよ。」
「あのねえ、アスカ。それはちょっち難しいかもね。」
「何言ってるのよ、ミサト。たかが中学生のテニスの試合くらい自由に出来なくて、それ
で人類を救えると思ってるの?」
「はははっ、何か凄い理屈よね。それって、本気なの?」
「本気よ、本気。アタシの計算だと、そうすることによって人類が生き残る可能性が1%
近く上がるはずよ。」
「なんだ、たったの1%なの?」
「そりゃそうよ。いくらなんでも、そんな簡単なことで2割も3割も確率が変わる訳がな
いでしょ。」
「そんな簡単なことって…。言ってくれるじゃない、アスカ。」
「で、どうなの?」
「う〜ん、ちょっち難しいかも。」
「でも、一応リツコに頼んで、MAGIに確率を計算させてみたら。案外、MAGIは賛
成するかもよ。駄目モトでいいからやってみてよ。」
「まあ、そういうことならいいか。でも、アスカ。期待はしないでよね。」
「分かってるって。」
アタシはそう言いつつも、内心ではほくそえんでいたわ。最近、リツコやマヤにお弁当を
渡したりしてご機嫌をとっているから、リツコが便宜を図ってくれる可能性は高いのよ。
つづく(第106話へ)
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あとがき
さて、シンジとダブルスを組むのを諦めかけていたアスカですが、裏技を使って強引に
シンジとダブルスを組んで試合をしようとします。果たして、アスカの悪巧みは成功する
でしょうか。
2004.6.2 written by red-x