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Link Magicians
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作者注:この小説は、CM用フリーSSです。転載は自由です。
        誰も転載しないか・・・。
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<The Epistles王国>

ここは世界の辺境にある弱小王国The Epistles。平和だったこの王国に、今だかつて無
い大事件が勃発していた。

「王。立て札を見た勇者が、3人訪ねて参りました。」

「そうか、そうか。早速、丁重にお通ししなさい。」

「はっ!」

先日この国の姫がさらわれるという事件が勃発した。碌な軍事力を持たないこの国の王
は途方にくれてしまい、姫を助けてくれる勇者を立て札を立てて募集したのだ。

「この者達です。」

「おおっ、そち達が勇者の諸君か。」

「はい。ぼくは、リンクマジシャンのシンジです。」
「一緒にパーティーを組んでるアスカよ。」
「私、レイ。」

「そうかそうか。マジシャンか。頼もしいのぉ。で、頼みなんじゃが・・・」

先日、隣の国との境にあるポンポン山の”大玉狸(おおだまだぬき)”という妖怪に、
姫がさらわれたと、王が説明する。

「わかりました。ぼく達に任せて下さい。」

「おおっ! そうか。もし、姫を助けてくれたら、そちの嫁につかわすぞ。」

「ほ、本当ですかっ!?」

ゲシッ! ドガッ! グシャッ!

次の瞬間だった。ボコボコに殴られ屍と化したシンジは、アスカとレイにズルズルと引
きずられ、王宮を出て行ったのだった。

<1stステージ 荒野>

シンジ達は、早速姫を助ける為にポンポン山へと向かった。人里離れいつしか荒野を歩
いていると、辺りに怪しい妖気が漂い始める。

「近くに、何かいるわよっ!」

「どこ? どこ?」

警戒し始めるアスカ。それにつられてシンジも辺りを見回すが、特に何も見えない。そ
の時、周りに生えていた草がザザと動いた。

「碇君・・・あそこ。」

「なにか・・・音、したね。」

「ファーストっ! 先制攻撃よっ!」

「まだ、敵だとは限らないわ。」

「敵だって、わかってからじゃ遅いじゃないっ!」

ザザザザ。

徐々に音が近付いて来る。間合いを詰めて来る様な動きからして、まず敵には間違い無
さそうだ。

「アスカ、綾波っ! 注意してっ!」

「わかってるわよっ!」

「ええ。」

3人は、手にそれぞれ聖なるハリセンを持って戦闘態勢に入った。もし敵なら、そろそ
ろ攻撃してくるはずだ。

「フフフ、なかなかやるようだな。」

声が聞こえてきた。

「アンタ、何者っ!」

「わしは、赤玉狸だっ! いくぞっ!」

やはり敵だった。赤玉狸は先制攻撃とばかりに、赤玉ビームをシンジ達に発射してきた。

「ぐっ!」

聖なるハリセンで、それをかわすシンジ。その威力からしてなかなか手強いことがわか
る。

「次は私のターン・・・。」

赤玉狸のターンも不発に終わり、シンジ達へターンが移動する。最初に動いたのはレイ。
マジックを発動する為に、呪文を唱え始める。

”あまり私登場してないのね・・・でも、主役の1人なの・・・
  リンクマジックっ! FACE −シンジ着物を買わされる編−っ!”

レイの得意な魔法だ。簪が何本も天空から降り注ぎ、赤玉狸を攻撃する。赤玉狸は、1
0ポイントのダメージを食らった。

「次は、ぼくだっ!」

シンジも呪文を唱え始めた。

”なんだか、このぼくって変なんだけどなぁ。まぁいいや・・・
  リンクマジックっ! それ行けシンちゃん!”

マジックは自分が主役か準主役のSSしか出すことができない。今回シンジが出したの
はレイと同じく自分が主役のSSのマジックなので、準主役より威力がある。

マジックを唱えた途端、シンジの分身がわけのわからないことを言いながら、赤玉狸に
突進して行く。

「ぐはっ! ・・・だが、こんな攻撃ではまだまだじゃ。」

10ポイントのダメージ。だが、まだ赤玉狸のヒットポイントは、かなり残っている様
だ。

「そんな口を聞くのは、アタシのマジックを受けてからにするのねっ! とどめよっ!」

最後の攻撃ターンで前面に出たのは、主役および準主役数で最多を誇るアスカ。しかも
連載SSが多い彼女のマジックの威力は伊達ではない。

”ラブリーアスカちゃんっ! ラブラブパワー全開よーーーーーーーっ!!!!!
  奥義っ! あまえんぼうアスカちゃんよぉっ!”

でたっ! 現状10話の長期連載、アスカの奥義だ。1話完結の短編読み切りは、10
ポイントだが、10話もある長期連載では、威力が桁違い。

ドババババババっ!

「ぐはっ!」

ピンク色のハートマークが、大量に赤玉狸を攻撃する。これにはたまらない。100ポ
イントのダメージを受けた赤玉狸は、その場で倒れた。

「わしなど序の口じゃ。この先もっと強い化け狸が、お前達を待ち受けているぞっ!」

ガクっ。

ここでリンクマジックについて解説する。威力は、自分が主役の場合、2000年9月
3日現在で公開されているSSの話数x10の破壊力がある魔法技だ。準主役の場合、
話数x5の破壊力となる。

「大した敵じゃなかったわね。」

「でも、もっと凄い敵がいるって言ってたよ?」

「まぁいいわ。狸鍋でもして、今日はここに泊まりましょ。」

「私・・・肉嫌い・・・。」

日も暮れ掛けてきたので、3人はここでキャンプをすることにした。なにはともあれ、
初戦は大勝利であった。

<2ndステージ ゴーストタウン>

翌日シンジ達は、ゴーストタウンへ差し掛かっていた。人の気配も無く不気味な街だが、
丁度雨が降っていたので廃墟で雨宿りをしている。

「なーんか、ほこりっぽいわねぇ。」

「お腹減った・・・。」

「さっきからうっさいわねぇっ! こんなとこに何も無いっつてるでしょっ!」

「お腹減った。」

「もっ!」

お腹を押さえてレイが拗ね出している。アスカはやれやれと言った感じで食べ物を探す
が、所詮は廃墟。ネズミの死骸くらいしか見付からない。

「ねぇ、アスカ? 地下に倉庫か何か無いかな?」

レイがブチブチ言い出したので、シンジが1案を提示する。

「しゃーないわね。行くだけ行ってみましょ。」

食料を求め地下へ続く階段を降りて行く。蝋燭も何も無い為、階段を降りれば降りる程
日の光が遠ざかり暗くなってくる。

「碇君・・・何も見えない。」

「そうだねぇ。」

真っ暗な地下室には、黒い目と赤い目と蒼い目だけが、僅かな光に輝きふらふらとさ迷
よっている様な状況で何も見えない。

「アスカぁ。暗いんだけど・・・。」

「もうっ! わかったわよ。MPこんなとこで使いたくなかったのに・・・。」

しぶしぶ呪文を唱える。

”短編読みきり処女作だけあって、純粋なLASなのよーーーっ!
  リンクマジックっ! 青空そして星空ぁっ!”

光の魔法を唱えるアスカ。呪文を唱えた途端、辺りが明るくなり視界が開ける。

「ぎゃーーーーーーーーーーっ!!!」

周りが見えた途端、シンジが叫んだ。

「イヤァーーーーーーーーーッ!!!!」

アスカが悲鳴を上げた。

「・・・・・・。」

レイが絶句した。

3人の顔が引き攣る。そこは、ヤスデやゲジゲジの巣窟だったようで、ウジャウジャと
足下で蠢いている。

咄嗟にリンクマジックを唱えるレイ。

”1人目の私はこんな感じだったの? わからない私は3人目だから・・・
  リンクマジックっ! クスクスレイちゃんの訪問!”

虫達が皆クスクスレイちゃんへと変化し、足元でクスクスと笑い始める。ちなみにレイ
は、主役SSが少ないのでマジックのレパートリーが限られている。

「た、助かったわ・・・だけど・・・。」

「「「「「クスクスクス」」」」」
「「「「「クスクスクス」」」」」
「「「「「クスクスクス」」」」」
「「「「「クスクスクス」」」」」

全ての虫が小さなクスクスレイちゃんになってしまった為、辺り一面から不気味な笑い
声が聞こえてくる。なんとなく不愉快。

「あの先に扉があるよ?」

「あ、ほんとっ! 倉庫かもしれないわっ。」

「あそこに、ご飯があるのね・・・。」

3人は足下にまとわりつく小さなクスクスレイちゃんを避けながら、地下道を進んで行
く。

「大きな扉ねぇ。」

「開かないよ? これ。」

「アンタ、男でしょうがっ!」

「だって、うーーーーん。」

いくら頑張っても取っ手が錆付いておりビクともしない。聖なるハリセンでも叩いてみ
たが、うんともすんとも言わなかった。

「もう、MP勿体振ってないで、アンタもマジック使いなさいよ。」

「うーん・・・。わかったよ。」

シンジが呪文を唱える。

”このシリーズって、恥ずかしいんだよなぁ・・・
  リンクマジックっ! 大喧嘩っ!”

短編読み切りだが、続編のある話なので20ポイントの攻撃力がある。シンジはそれを
大きな扉に叩き付けた。

ドガーン。砕け散る扉。するとその先から、金塊がびっしりと詰まった部屋が露になっ
た。

「わっ! 金よっ! 金っ!」

「食べれない物・・・。」

目を輝かして持てるだけの金をポケットに入れるアスカと、がっかりしてうなだれるレ
イ。

「ぼく、雨の様子見てくるよ。」

「そう? じゃ、アタシ達は食べ物もうちょっと探してみるわ。」

「お腹減った・・・。」

「わかってるわよ。さっさと来なさいよ。」

「じゃ、見てくるよ。」

シンジはアスカ達と別れ、途中の小さなクスクスレイちゃんの大群のいる部屋を通り抜
け、地上へと上がって行く。

「あれ、扉なんじゃない?」

「そう?」

「ノブ無いけどきっとそうよ。えーいっ!」

”いきなり来るから恥ずかしい思いしちゃったじゃないっ!
  リンクマジックっ! サンデーハプニングっ!”

アスカのリンクマジックにより砕け飛ぶ扉。その向こうには、ホッカホカのにんにくラ
ーメンチャーシュー抜きが保存されていた。

「ラーメンがあるのね。」

嬉しそうな顔をするレイ。

「なんだ、探せばあるじゃん。シンジーーーっ! 食べ物見つけたわよーーっ!」

ズルズル。

早くもレイはラーメンをすすり出した様だ。

「シンジーーーーっ! 聞こえないのーーーーっ!? シンジーーーーっ!!」

「うわーーーーーーーーっ!!!」

その時、地上からシンジの悲鳴が聞こえてくる。ただごとではないその様子に、ぎょっ
とするアスカとレイ。

「ファーストっ! 行くわよっ!」

「ラーメン・・・。」

「後で食べればいいでしょうがっ!」

「・・・・・。」

いまいち不満な様だったが、アスカに連れられレイは地下室を駆け出して行く。すると、
そこには5人のシンジが待ち構えていた。

「え? シンジ?」

突然シンジが5人になり、一瞬何が起こったのかわからなくなったアスカは、目を丸く
してその光景を見つめる。

「ぼくが、本物のシンジだぽん。」
「違うよっ! ぼくが本物だぽん。」
「アスカぁ、ぼくが本物だよっ!」
「騙されてはいけないぽん。ぼくが本物だぽん。」
「ぼくが本物だぽん。ぼくを信じるんだぽん。」

口々に自分が本物だと言い張るシンジ達。

「アンタバカぁぁぁっ!?」

聖なるハリセンで1番左のシンジを叩くアスカ。

「うぎゃっ! どうして、わかったんだぽんっ!」

1番左シンジが姿を狸に戻した。

「アンタっ! しっぽ生えてたじゃないっ!」

「し、しまったぁぁぁっ!」

狸は、一目散に逃げて行った。

”優しい心・・・聖夜が齎す奇蹟・・・。
  リンクマジックっ! 聖夜、心重ねてっ!”

今度は、レイが右2人のシンジに魔法をかけた。吹き飛んだシンジは、ごろごろと転が
り2匹まとめて狸の姿に戻る。

「ばれてしまっただぽんっ!」
「なぜ、わかったんだぽんっ!」

「目の周りが黒かったわ。」

「「しまっただぽんっ!」」

2匹の狸もばれてしまったので一目散に逃げて行った。残るは2人。アスカは、ジロリ
と見つめる。

「ぼくが本物だぽん。」
「ぼくが本物だよーーっ!」

「ふーん・・・わかんないわねぇ。そうだわっ!」

アスカはニヤリとしてシンジを見つめた。

「本物のシンジだったら、こないだアタシがいない時、レイと何してたか知ってるはず
  よっ!」

「綾波がシャワールームから急に裸で出て来たんだよっ! これでぼくが本物ってわか
  ってくれただろっ!?」

「ぬわんですってーーーーーーーっ!!!!」

一気に髪の毛が逆立つアスカ。ようやく自分の発言に気付き、慌てて口を押さえたが、
時既に遅し。

”ペンペンのおかげで、大変だったらないわよーーーーっ!
  リンクマジックっ! ペンペンの気持ちっ!”

ドガーーーーーーン。

何匹ものペンペンが、シンジに向かって突進していく。お尻や頭を突付かれ悲鳴を上げ
てのた打ち回るシンジ。そんな様子を見ていた、もう1人のシンジが笑顔でアスカの前
に歩みでた。

「どうやら、ぼくが本物だってわかってくれたみたいだぽんっ?」

「アンタは偽物よっ!」

「ど、どうして?」

”平たくなっても、ラブラブパワー全開よぉっ!!!
  リンクマジックっ! 平面アスカぁっ!”

ドゲシっ!

アスカが呪文を唱える。最後のシンジはマジックをまともに受け、ゴロゴロと転がって
狸の姿に戻った。

「どうしてわかったんだぽんっ!」

「頭に葉っぱが乗っかってたわよっ!」

「しまっただぽーーんっ!」

全て見破られた青玉狸4兄弟は、そそくさと逃げて行き万事解決・・・したはずだった
が、その後アスカとレイがラーメンを食べている間。シンジはアスカが出したペンペン
に苛められ続けていたのだった。

<3rdステージ ポンポン山の麓>

いよいよ3人は、敵の本拠地であるポンポン山へと差し掛かった。異様な妖気に辺りは
支配され、背筋が氷る様な不気味さを感じる。

「アスカ、綾波。気をつけて。」

「わかってるわよ。」

「ええ。」

ズシン。ズシン。

その時、地響きが響き渡り、辺りの木々がガサガサと揺れ始めた。互いに背を合わせ、
守りを固める3人。その妖気から、かなりの強い敵の様だ。

「フハハハッハ。わしは白玉狸じゃっ!」

「うわっ!」

大木の茂みから、シンジの倍くらいの大きさの白い凶悪な目つきをした狸が姿を現す。

「先制攻撃あるのみよっ!」

”こんなことに目覚めちゃっていいのかしらぁぁぁっ!
  リンクマジックっ! ああ、無敵のシンジ様ぁっ!”

ズバーーーーーーンっ!

「フハハハハハ。きかんきかん。」

間髪入れずアスカが攻撃を仕掛けたが、全くダメージを受けた様子が無い。

「なんですってっ! ちきしょーっ!」

”放送聞かれた時は、顔から火が出そうだったわぁぁぁっ!!!!
  リンクマジックっ! アスカとヒカリの初デートぉぉっ!”

「きかんと言っておろうがっ!」

”喧嘩に負けても、シンジは最高よぉぉぉっ!!!!!
  リンクマジックっ! 2月16日のバレンタインデーっ!”

「ふははははははっ!」

いくつもリンクマジックを出すが、一向に効いた様子は無い。アスカは唖然として、じ
りじいりと後ずさり始める。

「私に任せて。」

アスカの攻撃が全く効かないことがわかり、今度はレイが攻撃態勢に入った。

”私・・・可愛そうなのね・・・。
  リンクマジックっ! ATフィールドっ!”

「馬鹿め。効かんと言っておろうが。」

「なっ!」

アスカと同様、レイのマジックも効かなかった。愕然として膝を折るレイ。

「よしっ! ぼくが相手だっ! うぉーーーーーっ!」

”小さくなったらアスカが優しくなったんだーーーーっ!
  リンクマジックっ! チビシンちゃんっ!”

最後の攻撃ターンは、シンジの番。力の限りマジックを撃ち放つ。

「ぐははははっ! 痛くも痒くもないわっ! ようやくわしのターンじゃな。」

シンジのリンクマジックまでもが不発に終わった。いくらなんでもおかしい。よくよく
見ると相手はなにやら魔法の鎧の様な物を纏っている。

「いくぞっ! でやーーーーーーーーーーーーっ!!!」

白玉狸が、ヘソからビームを発射した。シンジ,アスカ,レイ全てにヒットし、HPが
急激に低下する。

「きゃーーーーーーーーーーーーーっ! ぐっ・・・ちきしょーっ! 今度はアタシの番
  よっ!」

「ちょっと待って・・・アスカ。あの鎧・・・見て。」

シンジの言葉を聞き、レイが視線を鎧に移す。

「はっ。デッドリンクの鎧・・・。」

この世界には、リンクマジックの効果を無効にするデッドリンクの鎧というマジックア
イテムが存在する。更に強力な物には、ノーキャリアの盾やサーバダウンのソードなど
様々なマジックアイテムがあるのだ。

「今頃気付いたか、お前らの攻撃はこの鎧がある限り効かんのだっ! ふはははははっ!」

マジックが効かないとなると、マジシャンには圧倒的に不利な戦いとなる。シンジ達は
大慌てで聖なるハリセンを構え、攻撃方法を試行錯誤する。

「ファーストっ! なんとかしなさいよっ!」

「マジックが効かないもの。どうしようもないわ。」

「落ち着いてる場合じゃないでしょうがっ!」

白玉狸が怖い顔をしてどんどん迫ってくる。なんとかしなければもう後が無い。

「そうだっ! アスカっ! 綾波っ! 目を閉じてっ!」

その時シンジが叫んだ。

「なにっ!?」

「いいからっ。」

どうやら何か妙案が浮かんだ様だ。アスカもレイも、ここはシンジに任せるしかないと
目を閉じる。

「これでどうだっ!」

「マジックは効かんと言っておろうがっ!」

”父さんの気持ちがわかったんだ・・・
  リンクマジックっ! 父の背っ!”

ドーーーーーン。

シンジが魔法を唱えた瞬間、白玉狸の眼前に諸肌を出したゲンドウが、けむくじゃらの
背中を色気ムンムンで表す。

「うぎゃーーーーーーっ!」

思わず吐き気を催す白玉狸。

「今だっ! 振り向いてっ! スマイルだーーーーーーーーーっ!」

シンジの掛け声と共に、ゲンドウは背中を見せたままうなじを強調して振り向くと、流
し目を送りつつニコリとスマイル0円のサービスをした。

「ぎゃーーーーーーーーーっ!!!」

とうとう目が潰れる白玉狸。勝敗は決した。

<ファイナルステージ 山頂>

いよいよ敵の本拠地。大玉狸の巨城が目の前に聳えている。気合いが入る3人の勇者。

「行くよっ! アスカ、綾波っ!」

「いいわ。」

「ええ。」

バーーーン。

意を決して巨城の門を聖なるハリセンで破ると、中には巨大な狸がこれまた巨大な椅子
に座ってシンジ達を見下ろしていた。

「フハハハハハハハっ! よくぞ、ここまで来れたなっ!」

「今すぐ姫を返したら許してあげるわっ! そうでなかったら、酷い目に合うわよっ!」

「お前らごときで、このわしを倒せると思っておるのかっ! ワハハハハハハハっ!」

「やるってのねっ!」

「フッ。イニシヤチブは貰ったっ! 行けっ! 子狸共っ!」

ポンポンポンっ!

大玉狸の命令で、何匹もの狸の妖怪が土の中から湧き上がって来る。

「しゃーないわねぇっっ! 一気に片付けるわよっ!!」

「わかったわ・・・。あまりこのマジックは使いたくなかったけど・・・。私、手持ち
  がもう少ないから・・・。」

呪文を唱え出すレイ。

”どうして私のイメージを壊すの・・・
  リンクマジックっ! 悪役人生っ!”

レイが魔法を唱えると自転車をこいだレイが出現し、子狸達の真ん中まで走って行く。

「ぽちっとな。」

出現したレイの分身が、変な言葉を発しながら自転車に取り付けられたのボタンを押した。

ズドーーーーーーーーンっ!!

飛び散る妖怪子狸達。それを見ながらレイは涙していた。

「私のイメージが・・・。」

続いてアスカのターン。こちらは、いきなりの奥義を展開しようとしている。

「いくわよーーーーっ!」

”武士の魂、NEON GENESIS迄っ!
  リンクマジックっ! ジェネレーションっ!”

5話からなる短期連載マジックを大玉狸に叩き付ける。一気に50ポイントのダメージ
を与えるが、大玉狸のHPが異様に多く致命傷にはならない。

最後の攻撃ターン。シンジが、呪文を唱える。

”ぼくが主役の初連載だーーーっ!
  リンクマジックっ! ポケ使徒っ!”

いきなりの長期連載奥義を叩き付け、120ポイントのダメージ。それでも、大玉狸は
まだまだ余裕がある。

「フフフ。そんなもんでは、わしは倒せんわ。いくぞっ!」

ターンが移り、大玉狸はその巨体を丸くして3人に体当たりをしてきた。

「キャッ!」
「ぐわっ!」

ぎりぎりのところでアスカとレイは回避したが、シンジが吹き飛んでしまった。HPが
一気に低下する。

「シンジっ! ちくしょーーーーっ!」

ターンが再び移る。今度はレイが真っ先に呪文を唱え始めた。

「碇君の仇・・・奥義よっ。」

”なんて私って純粋な娘の役なの・・・
  奥義っ! The Last Warっ!”

唯一持つレイ主役の短期連載SSマジック。しかも、全7話と強力で70ポイントのダ
メージを与える。

「続いて、アタシよっ!」

シンジをやられアスカの髪が逆立った。

”アタシの成長物語っ! ファーストを尊敬してるのが気に入らないけどっ!!
  奥義っ! リンクマジックっ! マイ ライフっ!”

長期連載をも凌ぐ話数の短期連載。本編と外伝を合わせて、14話にも及ぶ大作だ。一
気に、140ポイントのダメージを叩き出す。

「ちくしょっ! ぼくの攻撃を受けてみろっ!」

なんとか、体勢を整え直してシンジが呪文を唱えた。

”なんとしても、アスカと国を守るんだっ!
  奥義っ! 星の煌きっ!”

まだ完結してない為、話数は少ないものの既に6話を公開している短期連載。60ポイ
ントのダメージを与えて、ターンチェンジ。

「ぐぅぅぅ、やりおるな。だがまだそんなものではっ! おりゃーーーーっ!」

大玉狸のターン。今度は、胸から赤い羽を生やしたかと思うと、ブレストファイヤーを
放ってきた。

「キャーーーーーーーっ!」
「うっ。」
「わーーーーーーーーっ!」

さすがに、吹き飛ぶシンジ達3人。これだけの攻撃を何度も受けるわけにはいかない。
そろそろ決着をつける必要がありそうだ。

「ぐぐぐ・・・アスカ、綾波・・・。いくよ?」

「ええ。しゃーないわね。」

「わかったわ。碇君。」

今迄ばらばらに攻撃していた3人だったが、傷ついた体を引き摺り一点に終結し、同時
に声を揃えて呪文を唱え始めた。

”本編と学園のアスカとレイが一挙出演っ! 今はちょっと停止中だけどっ!
  合体奥義っ! TwoPairっ!”

ここにきて、大技が出た。21話からなる長期連載SSの3人合体技である。しかも3
人全てが主役ときている為、21x3x10がポイントとなり、630ポイントのダメ
ージを大玉狸に与えた。

「ぐわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」

椅子ごと吹き飛ぶ大玉狸だったが、まだHPが700ポイント以上残っている。まさに
化け物だ。

「やりおったなーーーーーっ!」

怒りも露に立ち上がる大玉狸。

「これでもくらえーーーーーーーっ!」

毛を全て逆立て、目からビームを発射してきた。巨城の外壁まで吹き飛ばされるシンジ
達。なんとかHPが全員残っているが、もう皆10と残っていない。

「ぐはっ・・・アスカ、綾波。大丈夫っ?」

「ええ・・・。なんとか。」

「シンジっ! 最後のとどめ・・・行くわよ。」

「よしっ!」

もう次の攻撃は持ちこたえられない。ここでとどめをささなければならないのだ。3人
は再び1点に終結し、声を揃えて呪文を唱える。

”噛み合わない三角関係・・・届かない一途な想い・・・。
  最長編合体奥義っ! ΔLoveForceっ!!!”

シンジ達が持つ最強の技である。これもまた3人全員が主役であり、しかも25話から
なる長期連載SSマジック。

ドカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!

衝撃派が大玉狸に襲い掛かった。そのダメージは、750ポイントに迄及ぶ。

「ぐわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」

巨城を壊し吹き飛ぶ大玉狸。

ガラガラガラ。

崩れ落ちる巨城。

その後に、姫が捕らえられている部屋が露になった。

「やったよ。アスカっ! 綾波っ!」

「あったり前じゃん。アタシ達に狸ごときが勝てるわけないでしょ。」

ガッツポーズを取るアスカ。

「助けに来たわ。」

レイは、捕らえられていた姫を助けに行く・・・が。

「いやぁぁぁ、大玉さんっ!」

姫は泣きながら、傷つき倒れる大玉狸を助けに行った。

「「「え?」」」

目が点になるシンジ達。

「どうして、こんな酷いことをするんですか?」

「ど、どうしてって・・・王様がアンタを助けてくれって。」

「いやーーーーっ! わたしは、大玉さんと結婚するのっ!」

姫は泣き叫びながら、大玉狸に肩を貸し起こしている。

「ねぇ、シンジ?」

「う、うん。」

「もしかして・・・これって駆け落ち?」

「そ、そうみたいだね・・・ははは。」

「どうするの?」

「無理矢理連れて帰ったりできない・・・だろうなぁ。はぁ。」

「そ、そうよね。はぁ。」

今迄の苦労が水の泡となりがっかりするシンジとアスカ。

「謝礼は貰えないのね・・・。」

謝礼がなくなり、目を点にして悲しむレイ。

結局、3人は姫と大玉狸の幸せを願いつつ、ポンポン山を去って行くこととなってしま
った。

「はぁ・・・お腹減ったわ。」

「また、次の冒険で稼いだらいいじゃないっ!」

「そうね・・・。はぁ・・・どうして狸なんかがいいの? 私にはわからない。3人目
  だから。」

「本当だよ・・・。お姫さん可愛いかったのに、勿体無いなぁ。」

「ムッ!」
「キッ!」

その1言が、アスカとレイの目を一気に吊り上がらせた。

ゲシッ! ドガッ! グシャッ!

次の瞬間だった。ボコボコに殴られ屍と化したシンジは、アスカとレイにズルズルと引
きずられ、ポンポン山を去って行ったのだった。

SSが掲載される度に、マジックの量や威力が増すリンクマジシャン3人のパーティー。
彼らの冒険は、ここThe Epistles王国でまだまだ続く。

fin.
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