新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセ
私の名前は森川雪。妹,弟と3人でマンション暮らしだ。私は憧れの惣流さんと友人に なり,ある日のこと,惣流さんの家を訪れて夕食を作ることになった。そして,これから も度々夕食を作りに行くことになったのだ。
外伝その10 家事のお手伝い
「さあてと,今日は朝から行こうかしら。」 惣流さんとの約束では,夕食を作りに行くことになっていたが,私は,忙しそうにネルフ の仕事をするのを見て,惣流さんの家の家事一切をやろうと心に決めたのだ。 「あんた達,早く朝御飯を食べなさい。」 私は,妹達を急かして,早めの朝食を摂った。そして,食べ終わったら片付けをするよう に言い含めると,惣流さんの家に向かった。 惣流さんの家に着くと,私は少しだけためらったが,思い切ってチャイムを押した。する と,すぐに碇君が現れた。 「あれ,森川さん,おはよう。」 碇君は,少し驚いた様子だった。 「ここじゃなんだから,上がってよ。直ぐにアスカも起きてくるから。」 碇君はそう言うと,私をリビングに案内してくれた。 「ちょっと待っててね。アスカを連れてくるから。」 碇君は惣流さんの部屋に入り,暫くしてから惣流さんをリビングに連れて来た。 「どうしたの,ユキ。」 私を見るなり惣流さんは驚いたようで,それでいて嬉しそうな顔をして尋ねた。私は,努 めて笑顔を作るようにした。 「おはようございます,惣流さん。朝食はまだですよね。」 「うん,これからシンジが作るとこだけど。」 まだ,朝の7時だった。 「良かった。実は,惣流さんと食べようと思って,サンドイッチを作ってきたんです。」 私はそう言って,テーブルの上にサンドイッチを広げだした。 「あれ,いい匂いがするね。」 碇君は鼻をくんくんさせた。 「ユキ,ありがとう。お言葉に甘えて,皆で食べましょう。」 嬉しいことに,惣流さんは私にお礼を言ってくれた。こうして,私達3人は,楽しくおし ゃべりしながら,サンドイッチを頬張った。 7時半を回った頃,惣流さんは私に問いかけた。 「今日はどうしちゃったの,こんなに早い時間に。」 「ええ,昨日はお二人とも,ネルフのお仕事で大変だったでしょう。ですから,私も何か お手伝いしたいと思って来たんです。食事を作ったり,お掃除したり位は出来ますから。 もっとも,お昼には,いったん家に戻りますが。」 私は,ちょっと緊張しながら,何回も練習した言葉を間違えずに言うことが出来た。 「そう。それだけでも助かるわ。ありがとう,ユキ。」 惣流さんは,最初は碇君と顔を見合わせていたが,直ぐににっこりと微笑んでくれた。正 直言って嬉しかった。もしかしたら,親切の押し売りをしてしまったんではと,少しだけ 後悔しかけていたからだ。 「そんな。私は,惣流さんのお役に立てるだけで,嬉しいですから。」 「じゃあ,後は任せたわ。シンジ!とっとと始めるわよ!」 惣流さんは,意気揚々として仕事を始めた。良かった。惣流さんは,少なくとも精神的に は何ら問題無いように見える。 惣流さんと碇君が仕事をしている間,私は掃除に洗濯,炊事,布団干しと,テキパキと片 付けていった。家事というのは,結構重労働なのだ。しかも,合理化というか,省力化と いうのがあまり出来ないのだ。 掃除は掃除機,洗濯は洗濯機,洗い物は自動食器洗い機と,手間を省ける物は,もう出尽 くしている。手間を省けないものは,結局人の力でやるしかないのだ。 だが,こういうのは慣れというものがある。慣れないと掃除も洗濯も大変だが,慣れてし まうと普通の人なら簡単に出来る。もっとも,時間の短縮は難しいが。 もう一つ,気分の問題もある。嫌々やるのと,喜んでやるのとでは,おそらく疲れ方が違 うと思う。私は,あこがれの惣流さんのためになるという理由があるから,結構楽しみな がらやっている。 それに,掃除をしながら,惣流さんの普段の生活が伺えるものが落ちていないか探してみ たり,何か秘密のものが転がっていないか,宝探しの気分でいたりもする。 早速,二人の普段の生活が伺えるようなものを見付けてしまった。何と,洗濯物が惣流さ んと碇君のものがいっしょくたになっていたのだ。こういうところから,二人の仲の良さ が伺えるのだ。 もっとも,碇君の布団から惣流さんの下着が見つかったらどうしようかとか,碇君の部屋 から惣流さんのいやらしい写真が見つかったらどうしようかとか,初日は結構スリリング な気分だった。 でも,残念ながら?そんなことは起きなくて,私は,鼻歌を歌いながら,家事をしていっ た。私の手助けで,碇君は,惣流さんの手伝いに専念することが出来た筈だ。 「惣流さん,碇君,お昼ご飯ですよ〜。」 12時を少し回った頃,私は惣流さん達を呼んだ。惣流さん達は,すぐにリビングにやっ て来た。テーブルの上には,ミートスパゲッティー,ドリア,サラダ,コーンスープを並 べておいた。 「あら,いい匂いね。おいしそう。」 「そうだね。森川さんて,料理が上手なんだね。」 「ありがとうございます。それでは,いただきましょう。」 こうして,私達3人は,またもや楽しそうにおしゃべりしながら,食事を楽しんだ。 食後の紅茶タイムが終わると,私は家に帰った。妹達の面倒を見るためだ。もちろん, 夕方には,また来るつもりだ。私は,これからも惣流さんのお手伝いが出来ることになり そうで,とても嬉しい気分になった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 2002.9.15 written by red-x