新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセ


第62.5話 正パイロット争奪戦

「あんた、馬鹿ねえ。シンジ様を敵に回してどうすんのよ。」 イライザと同じイギリス支部のアニーは、イライザのことを責めたてた。 「だって、しょうがないでしょう。あんなに怒るなんて、思わなかったんですもの。」 イライザは、僅かに顔をゆがめた。エヴァンゲリオンの正パイロットになりたくて、シン ジとお近づきになろうと思ったのだが、逆効果になってしまったからだ。 「でも、このままではまずいわね。私が調べたところによると、シンジ様と仲が良いのは、 幹部では、作戦部長の葛城ミサトさんと、諜報部長の葛城リョウジさんなんだけど、二人 ともドイツ支部出身だったわ。」 「ええっ、何ですって。」 イライザは驚く。 「それに、シンジ様といつもお昼を食べているメンバーの中に、ドイツ支部のマリアが入 っているらしいのよ。」 「マリアが…。それって、本当なの?」 「ええ。お昼をいつも一緒に食べているのが、シンジ様に、トウジさん、カヲルさん、ケ ンスケ君、アスカ、マリアに、トウジさんの恋人でアスカの親友のヒカリって子、それに ケンスケ君の恋人でアスカの友人のユキっていう子の8人らしいわ。」 「なによ、パイロットとその恋人が固まっている訳?その中に、うまくマリアが入り込ん でいるのね。」 「ええ、残念ながらそうみたいよ。」 「そう、ドイツ支部の連中が有利って言う訳ね。」 「何とかしないと、ドイツ支部に正副パイロットを持っていかれるかもしれないわ。」 「それは、非常にまずいわね。何か良い方法はないかしら。」 「でも、アスカの悪口を言っては駄目。シンジ様に、本当に嫌われてしまうわ。」 アニーは釘を刺す。 「しょうがないわ。仲間を集めて、作戦会議よ。」 こうして、反ドイツ派の作戦会議が開かれたのである。 ***  反ドイツ派の作戦会議には、イギリス支部全員とフランス支部、ロシア支部、アメリカ 支部、アメリカ第3支部、インド支部の各支部から1〜3人、合計で十数人が集まった。 もちろん、ハウレーン、アリオス、アールコート、キャシーらにも声をかけたが、あっさ りと断られていた。 その会議に各自が持ち寄った情報によって、研修生達にとって予想外の事実が明らかにな っていった。 第一に、シンジがアスカ一筋であるにもかかわらず、アスカにはそのような気配が見えな いことだ。学校の生徒やネルフの職員から得られた情報によると、シンジがアスカにまと わりついていることが分かったが、アスカにはそのような気配は無いのだ。 第二に、アスカはシンジに対して、世界を救った英雄だとか、エヴァンゲリオンのエース パイロットとして尊敬するとか、憧れているとかいう感情があまり無いらしいという事実 が判明したことだ。それどころか、アスカはシンジのことをこき使っているらしい。 第三に、アスカはネルフの幹部と仲が良いことだ。技術部長と同居し、作戦部長とはつい この間まで同居していたし、諜報部長ともドイツ支部時代からの知り合いで仲が良いらし い。特に衝撃を受けたのは、技術部長と作戦部長を呼び捨てに出来るのは、アスカだけと いうことだった。 第四に、アスカはトウジの恋人のヒカリと親友で、トウジもアスカに頭が上がらないとい うことだった。カヲルもシンジ経由でアスカの言うことは何でも聞くと言うし、ケンスケ に至っては、アスカの下僕であることを本人も認めているらしい。 第五に、アスカは先輩の研修生達とも仲が良いということだ。ドイツ支部のマリアは当然 としても、ミンメイ、ハウレーン、アリオス、アールコート、キャシーらとも仲が良く、 イスラエル人のサーシャとも信じがたいが仲が良いらしいのだ。 結局、アスカはネルフの幹部と親しく、本部のパイロット達と仲が良いというか、従えて いるような感じらしい。先輩の研修生達もアスカと仲が良いらしい。 そうなると、絶対に敵に回してはならないし、アスカを味方に付ければ、シンジも味方に なったも同然になるだろう。 反ドイツ派としては、エヴァンゲリオン5体のうち、確実に正パイロットを取れそうなの が、アメリカ支部のエヴァしかなく、何とかドイツ支部のエヴァの正パイロットをイギリ ス支部、フランス支部、ロシア支部で得たいし、中国支部のエヴァの正パイロットをイン ド支部かロシア支部で得たいのだ。 そのためには、どんな手段を用いることも辞さないのだ。もっとも、非合法な手段を用い て、身の破滅をもたらすのは当然避けたい。そうなると、選択の幅は狭まって来る。 そこで、色々と議論を重ねた結果、次のことが決まった。 ・アスカを何とか味方に付けるようにするか、少なくとも敵対しないようにすること。 ・シンジの機嫌を損ねないように、男達はアスカにアタックしないこと。 ・イライザはアスカに非礼を詫びること。 ・マリアをアスカから遠ざけるように画策すること。 ・シンジの目を、少しでもアスカから遠ざけるように画策すること。 こうして、反ドイツ派による正パイロット争奪戦が始動したのである。 (第63話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ○研修生対立の構図 ド イ ツ派:ドイツ2支部、エジプト支部、インドネシア支部、中国支部 反ドイツ派:イギリス支部、フランス支部、ロシア支部、アメリカ2支部、インド支部 中 立 派:ブラジル支部、オーストラリア支部  2002.11.17  written by red-x



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