新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセ


第39.5話 マヤの怒り

「も〜っ,何でこんなに忙しくなるのよっ!」 マヤは機嫌が悪かった。最近リツコがアスカにべったりとくっついていることも機嫌が悪 い理由の一つだ。なにしろ,最近のリツコはマヤの相手をしてくれないことが多く,しか もアスカにべったりなのだ。 一緒に暮らしているのはもちろんのこと,学校からネルフにはアスカと来ることが多く, 帰りも一緒なのである。特にアスカが婚約解消してからは,リツコとアスカが一緒に行動 することが非常に多くなったのだ。 しかもリツコの技術部長室とアスカの技術部副部長室は,隣にあるうえ繋がっており,同 じ部屋にいると言っても良い。その中で二人きりで何かをしているのだ。マヤからすれば 面白くないことこのうえない。 アスカが婚約する前は,アスカの体調が本調子でなかったこともあり,アスカは自分の部 屋から動かなかったため,リツコが部屋を出たところを捕まえて話す機会も多かった。婚 約してからは,アスカはシンジと一緒にいることが多く,これまたリツコと話す機会が多 かった。 だが,アスカが婚約解消してからは,シンジと共にいた時間は,全てリツコと一緒の時間 になっている。マヤとしては,一刻も早く二人の仲が戻るのを願っていた。しかも,アス カはリツコとおそろいの白衣を着ることが多く,それを見ると何だか無性に悔しくなるの だ。 「も〜っ,何で婚約解消なんてするのよっ!」 そう,全てはそれが原因なのだ。マヤは本当に困ってリツコの力を借りたい時や,どうし てもリツコの顔を見たくなった時には,シンジにお願いして助けてもらっていたのだ。 アスカとは,キスシーン大公開事件以来冷たい関係が続いているのだが,シンジは人が良 いのか,謝ったらあっさりと許してくれたのだ。それ以来,アスカ絡みで困った事がある と,全てシンジにお願いしていたのである。 だから,二人が婚約を解消し,口もきかなくなったと聞いた時は,物凄いショックだった。 成功率が100%近い頼みの綱が切れたのだから,無理もない。 だが,細いながらも,最後に残った綱がシゲルだった。シンジの頼みは滅多に断らないア スカだが,他の人間の頼みは割合あっさりと断ることが多い。その中で,シゲルはかなり 高い確率−と言っても半分を少し超える位だが−で,アスカに頼みを聞いてもらっている。 思ったよりも頼りになるのだ。 もっとも,アスカの友人のユキちゃん経由で聞いた話では,シゲルはアスカのかなり無理 な注文を引き受けているらしいが,シゲルはそんなことは一切言わない。マヤはそんなシ ゲルに対して,申し訳ないという気持ちが徐々に大きくなっていた。 そのため,いつしかシゲルに誘われたら必ず一緒に飲みに行くようになったのだが,最近 ではそれが逆転して,マヤの方から誘うこともあったのだ。 「もう,くやし〜いっ!青葉さんっ!今日はトコトン飲みましょうねっ!」 「あ,ああ。」 一見,シゲルはマヤの剣幕に押されたように見えるが,実はそうではなかった。アスカに 頭を下げて,マヤとリツコを引き離すように頼んでいたのだ。その効果が目に見える形で 現れたので,シゲルは内心では飛び上がらんばかりに喜んでいた。 *** 「碇君に話があるの。」 シンジは,訓練の合間の休憩時間に,マリアに話しかけられた。 「僕のことは気にしないで。大丈夫だから。」 シンジはマリアが自分のことを心配して話しかけたと勘違いしたようだ。無理も無い。パ イロット達は何らかの形でシンジのことを励ましていたからだ。 「違うの。アスカのことをお願いしたいの。アスカは泣きたいのを我慢して頑張っている わ。でも,可哀相で見ていられないの。だからお願い。たった一言でいいの。『アスカが 僕よりも辛い思いをしているのは分かっているよ。』って言って欲しいの。それだけで, アスカの心は救われるの。」 それを聞いたシンジは,真っ青になって呟いた。 「そうか。僕はまだまだニブチンなんだね。」 (第40話へ)

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―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき  最近出番の少ないマヤです。シゲルがアスカと組んで,リツコをマヤから遠ざけている のを知らず,イライラしています。シゲルはマヤとの仲の進展が目当てで,アスカはリツ コに女の幸せを掴んでもらうのが目的なのですが,二人の利害は一致しているようです。 2002.5.31  written by red-x



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