新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセ
第34.5話 赤い死神の正体?
ネルフ内の会議室に,加持,ジャッジマン,レッドウルフが集まっていた。最初に口を
開いたのは,レッドウルフだった。
「正直言って,ラブリーエンジェルがあれほど強いとは思わなかったよ。加持さん,彼女
達のことを何か知らないかなあ?」
「さっぱり分からん。」
そう,加持は本当に知らないのだから,答えようが無かった。
「惣流アスカは,ラブリーエンジェルの一員だと思ったけど,勘が外れちゃったね。」
彼らは,アスカがMAGIを駆使して戦闘の支援を行っていたと,思わされていたのだ。
敵を騙すにはまず味方からという訳であるが,アスカを良く知る加持が騙されているのだ
から,無理も無かった。
アスカは,第壱中学校において,MAGIを駆使していたことになっており,事実を知る
のは,シンジを除けばリツコただ一人であった。リツコはマヤに対しても,アスカの支援
を行うと説明し,途中でアスカが抜けたことを言っていなかったのだ。もちろん,リツコ
の口は固かったため,秘密は漏れていない。
加持とレッドウルフの会話に,ジャッジマンが加わってきた。
「俺は,赤い死神は,惣流アスカのお姉さんか従姉妹だと思っている。そうすると,大抵
のことが説明が付く。もしかすると,パイロットリーダーと同一人物かもしれんな。」
「でも,そうなると,あの紅い瞳の説明が付かないよ。僕は,パイロットリーダーは,綾
波レイだと思っているし。そうなると,彼女が赤い死神なのかなあ。綾波レイは,過去の
記録が無いって言うし。」
「レイちゃんが赤い死神とは思えないな。パイロットリーダーは,関係ないかもしれない。
そうすると,アスカの姉か従姉妹というのが可能性としては高いかもな。」
そう言いながら,加持はタバコに火をつけ,続けて言った。
「パイロットリーダーのことは,俺も知らない。存在するかどうかも含めてだ。だが,弍
号機に乗れるということは,アスカの可能性が一番高い。次にアスカに近い者の可能性が
高いのも事実だ。」
「だが,惣流アスカは,戦自が攻め込む前日まで,意識不明の重体だったことは,複数の
筋から確認している。その時の写真も入手してある。いくら何でも,その翌日にあれだけ
の動きは出来ないだろう。」
ジャッジマンが呟く。
「そうなると,やっぱり綾波レイという可能性が高いね。だが,ラブリーエンジェルが戦
闘を行っていた日に,学校の授業を受けていたことが分かっている。だから,赤い死神で
はない。そうなると,赤い死神がパイロットリーダーだとすると,彼女は,綾波レイと惣
流アスカの両方に近いっていうことになるね。案外,3人の父親が一緒だったりね。」
レッドウルフの言葉に,加持もジャッジマンも否定する材料は無かった。
「そうか。そうなると,エヴァンゲリオンのパイロットは,鈴原トウジ以外は,碇司令の
子供だって可能性も有る訳だ。」
ジャッジマンは拳を握りしめた。
「俺は違うと思うけどな。」
加持が呟いたが,既にジャッジマンもレッドウルフも,聞いていなかった。こうして,味
方でさえも分からないほど,秘密は徹底された。
実は,戦自が攻め込んできた時にアスカが弍号機に乗っていたのを覚えているのは,シン
ジだけだったのだ。だから,シンジはレイが弍号機に乗っていたらしいと皆には説明して
いた。そこで,ゲンドウと冬月は,アスカをパイロットリーダーに仕立てようと考え付い
たのである。
アスカがパイロットリーダーに仕立てられたことを知っているのは,シンジ,ゲンドウ,
冬月,マヤ,マコト,シゲル,トウジのみであるし,加持にもその事は秘密だったのだ。
アスカが戦自と戦ったのは,いわば二重の秘密だったのだ。
そして,アスカが赤い死神であるのを知っている者はネルフ本部内にはいない。本来は,
加持が調べても良さそうなのであるが,加持はアスカにドイツ時代の女性関係を全て把握
されており,かつワイルドウルフを調べると昔の女性関係が漏れるかもしれないと釘を刺
されているため,赤い死神の正体が漏れることは無かった。
全てを知るのは,アスカだけであった。
***
「やったあ〜,完成したぞ〜。」
「ええ,やったわね。でも,ごめんね。プログラムはもう一つあるの。」
「なっ,なに〜っ。」
ネルフエジプト支部では,サーシャがザナドのぬか喜びを打ち砕いていた。
「ザナド,本当にごめんね。最初に言っていたら,引き受けてくれないと思ってさ。」
「はあ〜っ。まあ,いいけどさ。今度はなんだい。」
「ウイルスソフトよ。」
「おい,それって犯罪に使うんじゃないだろうな。」
「多分違うと思うけど。」
「え〜っ,けど嫌だなあ。」
「へへっ。いいものがあるんだけどな。」
「うん,何だよ。」
「『救世主アスカ』のスペシャル版ディスクがあるの。」
「えっ,あれって3月中に発売されるんだよな。で,今は予告編がネットで流れているっ
ていう話しだったと思うけど。」
「それが,今回の仕事を受ける謝礼として,ソルトから送られて来たのよ。どう,欲しい
かしら。」
「う,うん。是非欲しい。」
「じゃあ,これで決まりね。」
「トホホ。これでまた睡眠時間が削られるのか。」
「いいじゃないの。」
「でも,スペシャル版って,何処が違うんだよ。通常版もまだ出ていないしさあ。」
「何でも,主な出演者の写真データがあるらしいの。それに,水着の写真もね。何でも,
スペシャル版は,夏に売り出されるみたいだし。」
「ええっ。アスカの水着の写真もあるのか。」
「ええ,もちろんよ。」
それを聞いて,ザナドは俄然やる気が出るのだった。もちろん,プリントアウトして,友
人に高く売りつけようとの,セコイ根性であった。
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あとがき
ちなみに,水着の写真は,ケンスケが撮影しています。アスカの下僕となった時の約束
で,ユキとリツコの写真を撮った時に,アスカの分も撮影していたのです。これらの写真
に加えて,ヒカリや他のクラスメートの写真もあります。
2002.4.26 written by red-x